太田正伸

(広告をつくるひと)

太田正伸

(広告をつくるひと)

マガジン

最近の記事

オーケーとその他スーパーたち - 14店舗のフィールドワークと500人のアンケートでわかったシンプルな結論

「ショッピング・イズ・エンターテイメント」と吹聴する楽天的な人々がいるならば、私は「スーパー・イズ・エンターテイメント」とくぐもった声で叫ぶだろう。 私が住む板橋区の辺境はスーパーの激戦区だ。数年前に西友がオープンしたとき、街全体が屋外広告に染まった。 自転車で10分以内の距離に、大きなスーパーだけでも13店舗もあるからだ。オーケー、イオン、イトーヨーカドー、サミット、ヨークマート、ライフ、三徳、ドン・キホーテ、ダイエー、ベルクス、東急ストア、東武ストアに西友。これほどの

    • 「マチのほっとステーション」を体現しているのはスターバックスかもしれない

      パッケージデザインの改善に着手ローソン社長の竹増氏に、PB(プライベートブランド)商品のパッケージリニューアルの目的や結果を聞いたハフポストのライブインタビューが面白かった。 竹増社長は、想定外の批判の声の多さが全てだとし、素直に失敗を認めた。同時に、失敗はチャンスだと訴えた。 「NATTO」と大きく英語表記されている納豆などは、すでに改善に着手し、来月には変更する予定とのこと。 生活必需品のPBのみ刷新そもそも、なぜリニューアルしようとしたのか。 竹増社長によると、ロー

      • 岩渕水門が閉じた!-あの錆びた青水門が東京の下町を救った奇跡-

        2019年10月12日、台風19号の上陸により東京の多摩川が越水し、荒川も越水・決壊するのではないか、という恐怖に襲われた東京の下町住民を救ったのは、東京都北区赤羽の荒川土手にある岩渕水門だった。 普段はむしろ赤水門と呼ばれるすぐそばの旧岩渕水門のほうに風情があるからか関心が寄せられ、ほとんど見向きもされない青水門。この目立たたない水門が東京の下町を救った奇跡を知りたくて荒川治水資料館に足を運んだ。 受付で岩淵水門について尋ねると、案内員に導かれ、資料館の一角にある台風1

        • なぜ『JOKER』が売れたのか?

          映画『JOKER』をはじめて観たとき、あまりの暗い現実と残酷さに言葉を失った。世間的には売れる映画ではないだろうなと思っていたら、日本の4週目の動員数が約240万人、興行収入は約35億円ととんでもないヒット作となった。過去のバットマンシリーズの中で最も売れ、R指定映画では歴代1位を更新した。4週連続一位と長期間人気を維持している作品は珍しく、それがファミリー向けではなくR指定作品なのだから驚異的だ。リピート客が多いのかもしれない。私も気付いたら3回もリピートしていた。では、な

        オーケーとその他スーパーたち - 14店舗のフィールドワークと500人のアンケートでわかったシンプルな結論

        マガジン

        • マーケティング
          19本
        • CM批評
          6本

        記事

          鉤括弧付き「コンテンツSEO」からの脱却

          アイレップ渡辺氏とJADE辻氏のトークイベント「THE VISION OF SEO」に参加した。少なくとも辻氏は日本のSEO専門家の誰よりも膨大なデータと時間を費やし、世界一複雑なGoogleの検索エンジンのアルゴリズムと格闘し、インターネットの世界をより良く浄化しようという高い志を持つ、まさにSEOの神様と呼ばれるに相応しい日本の宝であることは間違いない。同時に、聴衆の前に降臨するときは、正しさだけを良しとしない、むしろ面白きことを良しとするエンターテイナーの顔も併せもつと

          鉤括弧付き「コンテンツSEO」からの脱却

          「格好つけたがり」という病

           馴染みのある薄汚い町中華がカフェ風のオシャレな外観にリニューアルした途端に違和感を感じて遠ざけてしまうことがある。町中華は何かに秀でて特別に旨いわけでもなく、ちょうどよい旨さ、飽きのこない長続きする旨さが舌の記憶に吸着し、あの薄汚い外観、匂い、鍋をたたく音が聞こえるとなぜかまた通いたくなる効能があったのに、カフェ風にリニューアルしてしまったが故に、蓄積された心に描く町中華とちょうどよい旨さが結び付かずにその店には自然と足が向かなくなる。  最近ランサーズのCM「採用やめよう

          「格好つけたがり」という病

          運用型広告が上手くいっている時こそ気をつけたいこと

           運用型広告は、その名の通り「運用」がわざわざ頭に付くことから終わりない改善の連続に違いないと思われている節がある。予算がある限りは運用は続いていくので誤りはないが、今やAIによる自動入札と最適化が進化し、放っておいてもAIが運用してくれる時代になった。人が運用できる領域は減り、自動化が進み、(私が解釈するに)人間が楽しめる部分はディスカバー(発見)とクリエイティブ(創造)を残すのみとなった。車に例えれば自動運転化が進み、手動で運転することで得られるドライブフィールを喪失した

          運用型広告が上手くいっている時こそ気をつけたいこと

          #(ハッシュタグ)で共感を呼ぶ広告と嫌われる広告

          「#(ハッシュタグ)」が入った広告を見かけることがある。消費者を巻き込むことで話題化し、普段は見向きもしない消費者にもリーチすることが狙いかもしれない。 「#マクドナルド総選挙」のように、AKB総選挙を模した娯楽として楽しむキャンペーンもあれば、パンテーンの「#この髪どうしてダメですか」のように社会の閉塞状況に対する問いを投げかけ、消費者のアンサーを求めるキャンペーンもある。  いずれのタイプのキャンペーンにしても、そのまま模倣して成功することはないだろう。マクドナルドは国民

          #(ハッシュタグ)で共感を呼ぶ広告と嫌われる広告

          動画広告 「HOW」 の前に考えるヒント〜印象に残った「コイニー」「エアペイ」「PayPay」「シェフズレシピ」CM比較〜

           ブランドのロゴ、色、デザインはいわゆる象徴(シンボル)だ。そのブランドの機能的ベネフィット、情緒的ベネフィット、ペルソナとベネフィットの関係性を表したコンセプトを養分とし、消費者がそのブランドを識別できる象徴的な記号としてのロゴが存在する。  よく言われている話として、ブランディングとはCI(コーポレート・アイデンティティ)をセットにしたロゴ変更だと勘違いしていることも多い。しかし、ブランドとは消費者の心の中にあるものだから、決してロゴだけではなく商品やサービスに対する認知

          動画広告 「HOW」 の前に考えるヒント〜印象に残った「コイニー」「エアペイ」「PayPay」「シェフズレシピ」CM比較〜

          花王「アタックZERO」発売直後の雑感、P&G「アリエール」のカウンターは果たして効果的か?

          「アタックZERO」発売のおよそ2ヶ月前に『電通ハニカムモデルと「アタックZERO」』という文章を書いた。私はその商品について以下のように解釈した。 「アタックZERO」は明確な特徴をもった商品であり、「ワンハンドプッシュ」で簡単に計量して投入できる機能、それを実現するスタイリッシュな軽量ボディ、花王史上最高と謳う吸湿速乾・保温・形状記憶などの新たな化学繊維にも対応した「汚れ」「ニオイ」「洗剤残り」をゼロにする洗浄技術があり、その機能的ベネフィットの享受を通じて手を汚さ

          花王「アタックZERO」発売直後の雑感、P&G「アリエール」のカウンターは果たして効果的か?

          本当に止めませんか、「紳士協定」というリスティング広告の悪しき慣習

           リスティング広告を運用していると「紳士協定」なる悪しき慣習と遭遇することがよくある。「紳士協定」とは、自社ブランド名や自社ブランド名の掛け合わせ語で検索した時に自社以外のリスティング広告が表示されることを防ぐ企業間同士の協定である。自社ブランドや自社ブランドに関連するキーワードで他社の広告を望む人はいないだろうから、それを除外することは当然なことだと思うかもしれないが、次の場合はどうだろう? 「エンジニアワークス」というブランド名があったとしよう。そのブランド名で検索する

          本当に止めませんか、「紳士協定」というリスティング広告の悪しき慣習

          企業やブランドがSNSと向き合うときに意識したほうがよいと思うこと

           SNSにおける企業やブランドアカウントの運用について悩まれている企業も多いだろう。SNSは消費者と接触できる巨大なメディアである以上、企業がそこに介入したい下心が生じるのは無理もない。一方で、SNSは消費者にとってはプライベートな空間でもあり、個人と個人がコミュニケーションする場でもあるから、そこに企業やブランドアカウントが積極的に介入してくることを嫌う人も多い。  そもそも、企業やブランドアカウントを開設する目的は何なのか?フォロワーに対する情報伝達のみであるならばそれほ

          企業やブランドがSNSと向き合うときに意識したほうがよいと思うこと

          BtoBマーケティング、顧客プロセスと営業プロセス、どっちを管理するの?

           クライアントマーケティングの進捗会議でいつも思うことが、何のプロセスを管理するのか?である。よくありがちなのが、資料問い合わせ件数、アポイント件数、訪問件数、提案件数、見積件数、受注件数といった営業の行動プロセスをKPIの指標に設定しているケースだ。このプロセスから得られる改善策は、「訪問件数が足りていない」「アポイント件数が足りていない」といった中身のない件数の議論に陥りがちで深い議論にならない。最終的に帰結するのは各営業個人の営業プロセスを管理するかたちになる。  顧客

          BtoBマーケティング、顧客プロセスと営業プロセス、どっちを管理するの?

          美容系エステLPの観察とRIZAPWOMANの寄り添うカウンセリング力

          自分が扱う商品やサービスのユーザー理解を深めるために、女性の心理に近づく努力をすることがある。身近な女性を観察することで得られる発見もあるが、ひとつおすすめなのが美容系サービスのLP(ランディングページ)を観察することだ。今回は美容エステのLPを観察してみるとしよう。 美容系エステサービスについては門外漢ではあるが、大きく以下の4象限に分けてみる。 まず消費者がネガティブな状況を解決したいか、今よりもポジティブな状況にしたいか、のサービスに期待する効能の軸と、もう一つは、

          美容系エステLPの観察とRIZAPWOMANの寄り添うカウンセリング力

          電通ハニカムモデルと「アタックZERO」

           商品やサービスの価値を可視化したフレームワーク「電通ハニカムモデル」を検索すると、意外にも情報量が少ない。適当なページを見出すのに苦労する。何せ検索結果の1位は電通ハニカムモデルを応用した「電通ファンドレイズ・ハニカムモデル」、2位は電通の佐藤剛介氏が寄稿したPDFだ......。この何故か闇に包まれたフレームワーク「電通ハニカムモデル」を、花王が10年の開発を費やしたと言われる大型商品「アタックZERO」を用いて勝手に検証してみたいとおもう。 ↑佐藤剛介氏「強いブランド

          電通ハニカムモデルと「アタックZERO」

          セグメントとマネーフォワードのCM雑感

           マネーフォワードの広告を年末から新年を迎えて頻繁に目にする機会が増えた。このCMは藤田ニコルを筆頭に、為末やガンバレルーヤ、大阪のおばちゃん、つば九郎などの個性的なキャラクターに加え、一般人と思われるお父さんなど7つのキャラクターがお金を見える化することについて語る広告だ。  CMのコンセプトは、プレスリリースからそのまま引用すると「生きることは、お金と向き合うこと。お金を理解し、お金を味方につけることで、人生はいい方向へと動かしていくことができる。マネーフォワードは、あ

          セグメントとマネーフォワードのCM雑感