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road rage(ロードレイジ)体験

 昨日は清々しいハイキングのあと、早くもきた脚の痛みをお土産として持って帰った。行きは夫が帰り道は私が運転した。私が見渡す限りの草原を走る高速を運転していたときにそれは起こった。
 小さい車で景色を楽しみながら法定速度で走っていた私達を後ろから追い上げるおかしい車4台がバックミラーに見えた瞬間に、サイドミラーいっぱいに迫ってきた。さながら『マッドマックス 怒りのデス・ロード』で暴走するモンスターカーに追い上げれるシャーリーズ・セロン(だったらいいな)。私達の車にtail to nose(ぴったりとリアバンパー近くにくっついてくる)してくることに恐怖をおぼえて、一旦道端に停車してやり過ごそうにも路肩がない!路肩が見えた瞬間には次のカーブに入るという状況だった。1分ほどすると後方からクラクションが聞こえてくる。草原でいったい何にクラクションを鳴らすのか。そう思っていると2度目のクラクションが聞こえてきた。私の運転に対して「遅すぎる、道を開けろ」と威嚇して鳴らしていることが推測できた。法定速度で走っている車にクラクションを鳴らしてどかそうとするほど狂気じみた運転をする輩は地球上に存在する、と思ってはいるがまさに私の後ろにいるとは。私もクラクションを鳴らされて怒りが湧いてきた。どこかもっと地方で土地を買ってそこでそんな車を乗り回せばいいのに、XXXXXが!!と心で罵る。相手は地方暮らしにはおなじみのピックアップトラック集団。わざと怒りにまかせて追突するような無法者もいるアメリカで、私が怒りに任せてこぶしや立てた中指を窓から突き出すと命が無事ではすまないことは容易に想像できる。暴力団でもないのに、銃を携帯する人々がそこらじゅうにいる国だ。日本に帰りたい。
 やっと路肩をみつけて急いで停車した。夫は私の急停車に驚いてエアブレーキ(助手席で存在しないブレーキをふむ行為、私が命名)を踏む。私たちを追い抜いた瞬間にクラクションを鳴らしていたイモータン・ジョー軍団(マッドマックスに出てくる無法者集団)の一台が長くクラクションを鳴らしていった。彼らが自分の家のガレージに突っ込んでほしい、心から思った。
 日本でもあおり運転は存在するので特別アメリカでの体験をとりあげて糾弾するつもりはないが、車が必要な人口が日本に比べると圧倒的に多いアメリカではおそらく日本の歩道ですれ違い様に肩がぶつかったりする感覚で車のトラブルになるのだろうと思った。
 アメリカの広大な自然の美しさ(綺麗なところはきれい)と土地のゆとりについては日本にいては絶対に体験できない楽しみではあるが、健康保険の複雑さと高額さ、適用できない率の高さにくわえてこのマナーなんてあったものではない車社会の野蛮さ。そして忘れてはならない「正当防衛」の名の元に人に殺傷能力の高い”武器”で加害できる自由。私は長く住みたいとはまったく思えない。道を車で走ろうが自身の足で歩こうが、他者への配慮を忘れずに。せめて自分だけは変わらずにいたい。