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良寛の月

鎌倉時代に良寛(りょうかん)という弘法大師に並び称される程の達筆と唄われた禅僧がいました。

彼はその高名さも何処吹く風、山の粗末な小屋に墨壺と筆、ボロ布団と箸くらいしかもたずに生活していました。

まさに乞食坊主です。
たまに里に下りては子供達とマリを就いて遊んだり、凧に筆文字を書いてあげたりしていたそうです。

 そんなある日、良寛が山小屋に帰ると、煎餅布団や箸やボロボロのお椀、僅かに持っていた生活道具全て泥棒に持っていかれ、小屋は空っぽになっていました。

大飢饉が続く時世、さすがの乞食坊主の自分も盗人に入られたかぁと一人夜をむかえ窓の外にふと目をやると、そこには美しい月がポッカリ浮いていたんだそうです。

そして「全部持っていかれたかと思ったが、どうしてどうして、盗人も窓の月だけは残していってくれたわい☆ありがたいことよ」と歌を読みました。

『盗人に~
  取り残されし
      窓の月~』

良寛の見た月と同じ月が見られるなんて、僕らは幸せだ。あとは良寛の境地に達するだけでいい。しかし、この「だけ」が難しくはある…。

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