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コピーライター/フリーライター/第2回(2019)「ふう太の杜文学賞」佳作受賞/取材・…

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コピーライター/フリーライター/第2回(2019)「ふう太の杜文学賞」佳作受賞/取材・企画・執筆/現在はシナリオと短編小説を中心に執筆。歌詞の執筆も始めています/まだまだ描かれていない「大人のドラマ」を描きたい。/執筆記事もアップしていきます。

最近の記事

#noteフェス 呼吸する生身のクリエイト

9月2日から始まった「noteフェス」。夜9時からの配信『僕たちに「企画」はいらない』(漫画家・羽賀翔一さん/編集者・柿内芳文さん/モデレーターはnoteディレクター志村優衣さん)を視聴した。ソーシャルディスタンスをとりつつ映った三人の画面を目にしてすぐ「おや?」と思ったのが羽賀さんのつっぷした姿勢。机を覆うようにしていて顔がまったく見えない。どうしたんだろうと思ったら、漫画を描いていたからだとわかった!朝10時締め切りの漫画原稿がまだ20コマできてないという。「だから今描い

    • モリコーネの音楽と好きな映画は切り離せない。ほんとに定番の定番だけど『ニューシネマパラダイス』は大好きな映画。大きくなったトトがスクリーンを見つめるラストでは大号泣し、映画館を出るときには目が真っ赤で困った。美しい音楽をありがとうモリコーネ。。。

      • 通りすがりの猫と目が合って、数秒、睨むでも微笑むでもなく、ただただじっと、お互いを嗅ぐように立っていた。近づくと逃げるだろうとか、声をかけたら隠れるだろうとかも思わずに。生き物同士のディスタンス。人と距離をとっていると知らずに失われてる感覚があったんだと気づいた。

        • #瀧本宿題 盗めない人生を生きろ   瀧本哲史・伝説の講義を視聴して〜

          2020年6月30日。公開された音声による講義を視聴した。 「バイブルも正解もない。自分で考え、自分で行動しろ」 東京大学伊藤謝恩ホールで瀧本哲史さんが300人の若者の前で講義している。武器となる交渉術に必要なことは何か、3勝97敗が人生なら、失敗から学んで次に挑めばいいじゃないか。鋭く熱い言葉が続く。若者を決して置いてけぼりにしない優しさに満ちている。 第一檄を聴いただけで、瀧本さんの半端ない愛情を強く感じ、一気にひき込まれた。集まった10代、20代の若者は、これ

        #noteフェス 呼吸する生身のクリエイト

        • モリコーネの音楽と好きな映画は切り離せない。ほんとに定番の定番だけど『ニューシネマパラダイス』は大好きな映画。大きくなったトトがスクリーンを見つめるラストでは大号泣し、映画館を出るときには目が真っ赤で困った。美しい音楽をありがとうモリコーネ。。。

        • 通りすがりの猫と目が合って、数秒、睨むでも微笑むでもなく、ただただじっと、お互いを嗅ぐように立っていた。近づくと逃げるだろうとか、声をかけたら隠れるだろうとかも思わずに。生き物同士のディスタンス。人と距離をとっていると知らずに失われてる感覚があったんだと気づいた。

        • #瀧本宿題 盗めない人生を生きろ   瀧本哲史・伝説の講義を視聴して〜

          堀川・さくら夢譚12

          店の後継ぎとなる婿は、これより二年前に清須越をしている大店、大野屋の二男である。ふたつの店が手を取り合って名古屋の町を盛り立てていこう、と去年の暮にめでたい話がまとまったのである。白無垢姿の名桜は、以前とは別人のような風情で、しっとりと美しい花嫁になっていた。恥ずかしそうに俯き、ときおり花婿の茂平に視線を向けると艶やかに微笑んでいる。源右衛門が「一世一代の嫁入りをご城下堀川でお見せする。大野屋と御国屋の名を知らしめる祝い舟である」と宣言したこともあって、名桜の気持ちも自ずと高

          堀川・さくら夢譚12

          堀川・さくら夢譚11

          名桜の横顔は佐平次の胸の中に清々しい印象を残し、その印象は日増しに膨らんでいった。名桜と弥助が清須に戻った後、御国屋源右衛門は早々に清須越を計るかと思われたが、塩の商いだけでなく、古着や小間物の扱いまで準備をするといいだし、計画を練りなおしていた。これからさらに人々の往来も多くなり、季節ごとの祭りで賑わうようにもなれば、普請工事で諸国から集まった役夫たちも着物を求めるだろう、と名桜の話から考えついたのだった。船頭の佐平次の話題が御国屋内で出ることもなく、名桜と弥助が下見を終え

          堀川・さくら夢譚11

          堀川・さくら夢譚10

          「いえ・・・」佐平次は嘘をついた。亡くなった母とともに一度だけ、桜の名所といわれるこの天神さまを詣ったことがある。名古屋の三大天神社の一つであり、桜通りの名称の由来となった桜天神社である。佐平次が訪れたのは萬松寺が現在の大須三丁目に移される前で、桜天神は萬松寺の鎮守として境内の東に位置していた。萬松寺が名古屋城築城にあたり移った後も、この桜天神社だけはそのまま残され、満開の桜を咲かせる大木があったという。惜しくも、その大木は万治三年(一六六〇)の大火で焼失することになるが、名

          堀川・さくら夢譚10

          堀川・さくら夢譚9

          佐平次も怪訝に思い、足を止める。佐平次の鼻先に、どこからか檜の香りが漂ってきた。木材を運ぶ牛車が激しく行き交うこのあたりは材木町と呼ばれ、堀川を使って木曽から良質の檜が運ばれてくるのだ。見廻すと、名桜はじっと橋のたもとあたりを睨みつけているようだ。佐平次はそっと近づいてみる。すると・・・土埃があがる川沿いの通りの隅に蟻の行列が、葉をくわえ、虫の羽根を抱え、黒々とした筋を作っていた。「負けるな、負けるな、達者でおやり・・・」かすれた名桜の声を佐平次は黙って聞いていた。 家屋敷か

          堀川・さくら夢譚9

          堀川・さくら夢譚8

          清須の五条川にかかった木造の橋をそのまま移したもので、名称もそのまま“五条橋”としている。上流から五条橋、中橋、伝馬橋、納屋橋、日置橋、古渡橋、尾頭橋と橋が架けられ、これらは後に“堀川七橋”とよばれた。名桜は、故郷の橋が果たしてそのまま架けられたのか、その姿を目で見て、父・源右衛門に伝えたかったのだ。名桜は佐平次を伴い、橋板まで歩いてくると、橋の擬宝珠に目を向けた。五条橋の擬宝珠は、鋳物師・二代目水野太郎左衛門によるものといわれ、擬宝珠には“慶長七年”の銘が刻まれている。昭和

          堀川・さくら夢譚8

          堀川・さくら夢譚7

          慶長十四年、家康は清洲城滞在の間に、名古屋、古渡(ふるわたり)、小牧の三候補地の中から名古屋を選んで決定した、と伝えられているが、名古屋台地が活気あふれる町へ変貌していくのは、まだまださきのこと。名古屋城の天守閣が慶長十七年、三の丸のお濠が慶長十九年と、完成までにはさらに月日を費やしている。名古屋ならではのきらびやかな文化が花開き、繁栄を極めたとされる尾張徳川家七代藩主・宗春の登場までには百年以上を待たねばならない。佐平次、名桜、弥助が目にした世界はモノクロのフィルムのような

          堀川・さくら夢譚7

          堀川・さくら夢譚6

          「足元にお気をつけて。明日のお帰りもここでお待ちしております。あ、お足元、滑りますんでゆっくり、ゆっくりお願いいたします・・・」佐平次がなんども注意を促したように、普請中の界隈は歩き慣れた人足でも戸惑うことがある。踏み慣らされた轍が続く通りがあるかと思うと、砂利を敷きつめたような狭い筋道もあり、人通りも多いので注意が必要だった。さらに、新築の町家百五十あまりが焼失した慶長十六年正月二十五日の火事以来、城下町の復興はより慎重に行われている。武家屋敷が城郭を囲み、東西をはる街道筋

          堀川・さくら夢譚6

          堀川・さくら夢譚5

          「いつもは宮宿の裏手の長屋に住んでいるのかえ」「へい、助かっております」弥助は吹き出しそうになり、あわてて口を抑えた。前評判通り、佐平次は無駄話などは一切しない男で、川の流れや深さ、行き交う舟に注視はしても、名桜に一瞥もくれることもない。名桜が佐平次の気を惹きたいと思っても、小娘の名桜など眼中にないという態度である。このころの船頭は若者が憧れる粋な仕事で、女にもモテたという。陽に灼けた肢体が溌剌と棹を握り、寸分なく船首を進めていく様は老年の弥助でさえ見惚れるほどで(二十二、三

          堀川・さくら夢譚5

          堀川・さくら夢譚4

          開削直後の堀川では個人タクシーのような貸し切り舟が商家たちに求められ、富家相手に腕のいい水夫を紹介する口入れ業も盛んだったのかもしれない。家宝や大事な帳簿は自らの手で運びたい、と商人たちも考えたのだろう。現代の私たちが、パスポートや財布はしっかり肌身につけて海外旅行をするべきだ、と考えるのと同じことだ。御国屋源右衛門は、「石切り場でも働いていただけに体力があり、働きぶりもいたって真面目、沖船頭の経験もあり舟の腕は確かな男がいる」と一年前に寄り合いで耳にしたときから、一度、舟を

          堀川・さくら夢譚4

          堀川・さくら夢譚3

          堀川は慶長十六年(一六一一)の夏、八、九月頃には完成したといわれている。おりしも秋のはじめの堀川を一陣の風が渡り、名桜の頬をやさしく撫でていく。好奇心旺盛の、闊達な十六の娘はおしゃべりになり、「佐平次は見事な体躯じゃのう。ほんとにたくましいものだねえ」などと玄人女のようなことを口にする。弥助は気がきでない。水上の旅の興奮が名桜に大人びた真似をさせるのか、素掘りの川岸に舟がとまるまで、佐平次が妙な気を起こさないかとひやひやした。しかし、行き交う舟もさすがに多く、日に日に賑わいを

          堀川・さくら夢譚3

          「鬼滅の刃」作者が女性だからなにか困るの?おかしなことですな。LGBTQの時代に未だに男性か女性か(又はそれ以外)で仕分けしたいのはなぜ?作品世界に似合う筆名は楽しい。作者の性別や年齢は関係ない。名前表記のイメージが、日本では固定概念に結びついているか研究できそう。根深そうだ。

          「鬼滅の刃」作者が女性だからなにか困るの?おかしなことですな。LGBTQの時代に未だに男性か女性か(又はそれ以外)で仕分けしたいのはなぜ?作品世界に似合う筆名は楽しい。作者の性別や年齢は関係ない。名前表記のイメージが、日本では固定概念に結びついているか研究できそう。根深そうだ。

          堀川・さくら夢譚2

          源右衛門には娘がひとりいる。十六になる名桜(なお)という娘で、味噌問屋に奉公に出ている兄よりも利発で商いに向いていると源右衛門は気づいていた。この名桜が、「名古屋の町を見てまいります。越し先の場所を調べてまいります」と、先日から源右衛門にしきりに話をする。名桜にしてみれば、後ろ髪をひかれる思いの父・源右衛門をなんとか励まし、御国屋の未来は名古屋にこそあり、と元気づけたいと願う心でいっぱいなのだった。母のお里の反対を押し切り、気心知れた番頭の弥助とともに名古屋に向かったのはそれ

          堀川・さくら夢譚2