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解像度と鳥の目、虫の目

スクラムの段階導入

半年ほど、「スクラム」の体裁で開発するチームのスクラムマスターをやっている。
イテレーティブにやること、機能横断的にやること、ふりかえること、様々なことを身に着けていかなくてはならないため少しずつプラクティスを導入し慣らしていっている。
まずはふりかえり。反復することに慣れる。
モブの力を借りて少し専門の壁を越境。
プランニング、そしてレビューといったプロダクトに関わるところは少し緩めに進めていた。

ようやくイテレーティブな開発、ふりかえり、越境に慣れてきたのと
プロダクトオーナーがもっとベロシティを上げたいという気持ちになったので、プランニングとレビューの解像度を上げてみることにした。
具体的に何をやるかというと、今回は以下のようなことを試した。
・プランニングのときに「レビュー時にどんなデモになるか?」と問いかける
・プランニングポーカーで見積もる
・スプリント折返し地点で「プランニングでのコミットがレビューまでに実現できるか?」と問いかける

え、それってスクラムやるなら当然やることじゃないの?
と言われるとその通りかもしれないが、このチームにとっては最初からそこまでやると消化不良を起こしそうだったのでこのタイミングまで待っていたのだ。

プランニングは上々。しかし…

解像度を上げたプランニング。プロダクトオーナーとメンバーがゴールについてしっかり認識を合わせるようになり、時間はかかるがやり遂げたいこと、やるべきことがチームレベルでアラインメントされた。

これはいける。誰もがそう思った。

しかし、スプリントの折返し地点で件の問いを行った次のデイリースクラムで異変が起こる。いや、問題が表面化したというべきか。
毎朝恒例ファイブフィンガー、いつもはほとんど5本、あって4本、まれに3本くらいなのにこの日はほとんどが3-4本。
・立てた仮説が覆りピボットが必要
・割り込みがありさばけなかった
・単純に作業が多い

プロダクトオーナーの表情もいささか暗い。メンバーからも焦りを感じる。

しかし、これはよく考えてみると当然起こりうる現象ではあった。
前スプリントまではゴールがあいまいだったため、「間に合わせるつもりだったが間に合わなかったもの」は単純に次のスプリントへと流れていた。
もちろん各人は責任感をもって終わらせるつもりなのだが、粗い解像度だったためゴールがゆらぎ、なにが想定と違ったのか検出することができていなかったのだ。

そして好材料がひとつ。まだスプリントの半ばである、つまりいくらでも対策が打てるということだ。
これまでなぁなぁになっていたスプリントと異なり、高い解像度で設定したゴールをレビューまでに達成できるチャンスだ。

鳥の目、虫の目

鳥の目で見ると、むしろチームとして前進していることに気づく。
しかし個々のメンバーたちは虫の目で課題と対峙している。解像度が上がった故に気付かされた課題と向き合うことになり翻弄されている。
となると、鳥の目でチームを見ている人たち、プロダクトオーナーとスクラムマスターがこの課題との向き合い方をディレクションするのがよいだろう。

発生課題を分類してみると
・決められず悩んでる系
・思ったより作業多い系
・割り込み系
の3種類にだいたい分類される。

一番手は、いわゆるモブプロだったり有識者と壁打ちしたりでなんとかなったりする。
作業が多いのは、分割してチーム内で分担したり重要じゃないものを塩漬けしたりする。
割り込みはチームの盾、プロダクトオーナーに交通整理してもらう。(割り込みが入りづらい、入っても影響を受けない業務フローの確立がベストだが、短期的には難しいので今回は割愛)

また、些細なことだが「悩んだり困ったらすぐSlack」の号令も意外と効果的だった。情報の流通速度を上げ、公開範囲を広げると課題と戦う武器が手に入りやすくなる。

スプリント最終日

スプリント最終日の朝会。本スプリントでは成果にたどり着けなさそうだったメンバー二人が「レビューで詳しく話しますが、なんとか形になりました」と告げる。
プロダクトオーナー、安堵の表情。
レビューの時間になり各メンバーがスプリントの成果を説明する。
中間地点で苦しんでいたことが嘘のように、しっかりと成果が出ている。それもプランニング時に目論んだ解像度で。(すべてがうまくいっていたわけではなく、課題はもちろんあるが)

そしてむかえたふりかえり。
タイムラインでこのスプリントを眺めてみると、みな中間地点頃は悩んでいたということが改めて可視化される。
最終的にスプリントのゴールにたどりつきはしたが、高い解像度の世界を知ったメンバーたちはもっと先へいこうとする。
このときは課題として下記が上がった。
・ドメイン知識不足
・モブ実施時のゴール認識齟齬
・声が小さくて話が聞こえない

すぐに手が打てそうなもの、根本的なレベルアップが必要なもの。
その両方が洗い出され、アクション化された。
特にドメイン知識の増強というのは一朝一夕ではないわけだが、そこに向き合う覚悟ができたのは非常によい。

押してだめなら引いて見る

解像度が上がる、ドメインの理解度が上がる、新しいスキルを身に纏う。
このレベルアップにより、見えていなかった/感じていなかった課題に気づくだろう。
それまで気づいていなかったものが目の前にでてくるわけだから戸惑う。
しかしそれは成長した証でもある。
なにもなかったはずのところに課題を見出したら、鳥の目で見てみよう。そこに活路はあるはずだ。

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