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世の中はいつも変わっているから 頑固者だけが悲しい思いをする

現状維持の強い力

先日、Code for Japan主催の「経産省と本気でアジャイルやってみた」というイベントへ参加してきた。

https://codeforjapan-govtech-20190514.peatix.com

経産省、特に若手が危機感を感じていることや
本気でアジャイルに向き合っていること、本気だからこそ見えてきた課題などを感じることができるなかなかに熱いイベントだった。
時間が圧縮されてしまったためか、パネルについては消化不良だったが。。。

イベントの中で特に印象に残ったのが、ギルドワークスの市谷さんがお話されていた、「現状維持の大モーメンタム」という言葉。

https://www.slideshare.net/mobile/papanda/ss-145501029

いまだにペーパーレス化が進まず、「デジタルトランスフォーメーション」などと掲げているのに印鑑スタンプラリーが繰り広げられるという経産省。
パネルの壇上でも「無理にデジタル化せずできるところから」と、そよ風のような頼りない鼻息。
明らかに無駄があるのにも関わらず、ペーパーレス化、デジタル化が進まないは何故なんだろうと疑問だったが、この「大モーメンタム」という言葉でずいぶんと腹に落ちた。
便利さに気づいていないのではない
そもそも変化したくないのだ。
「このままだとまずいかも…?」「いやいやこのままでも大丈夫」そういう先々のことを踏まえた判断ではなく、ただただ変化したくない。
それほどまでに現状維持の力というのは強いのだ。

「シュプレヒコールの波 通り過ぎていく
 変わらない夢を 流れに求めて
 時の流れを止めて 変わらない夢を
 見たがる者たちと 戦うため」〜世情/中島みゆき

現状維持への強い動きを感じると、いつもこの歌を思い出す。
オフィシャルなものがYoutubeで見つからなかったため動画はないが、機会があればぜひ聴いてみてほしい。
相当に壮大な曲である。
現状維持への動きと、そこを脱しようとする力はここまで壮大な歌を作り上げるほどのものなのだ。

モメンタムはそこらじゅうに潜む

キャッシュレス化が進んでいる。各社が競って還元率を上げ、使ったほうが得をするようになってきている。
それでも使わない人は少なくない(私もその1人だ)。

街からレコード屋が消えている。配信どころか定額制ストリーミングが当たり前になり、わざわざフィジカルな媒体を求める人がいないからだ。
それでもタワーレコード、ディスクユニオンに集まる人々がいる。

ITに目をやろう。

よくやり玉に上がる「EXCEL」。
EXCEL方眼といった謎文化はどうかと思うし、EXCEL形式のファイルを扱え、といわれるとげんなりするのは確かだ。
しかし、脱EXCELを目指したソリューションがどこかのタイミングで「EXCEL対応しました!」というニュースリリースを打つこともある。
これは、あまりにも強大なEXCELモメンタムのなせる業だ。

VSSからSVN、Git。
オンプレからクラウド。
JavaからKotlin、Objective-CからSwift。
まだいたのかCOBOL、Fortran。
うちにはアジャイルは合わないからやめておこう。 

モメンタムだらけだ。
技術で世の中を変えたいはずの、既存から脱却したいはずのITエンジニアでさえモメンタムからは逃れられない。
ある時点では紛れもなくスーパーエンジニアだった人が、モメンタムの濁流に巻き込まれ存在感をなくしてしまうこともある。

しかしこれもある程度仕方のないことで、変化には当然、コストが伴う。
不連続な変化である場合、変化したその時点では変化前より状況が悪化しているということもある。
論理的に変化するべきかどうかを今現在に焦点をあてて判断すると、変化しないほうを選択してしまうのだ。

モメンタム川を遡上し鮭になろう

このモメンタムを振り切るにはどうしたらいいのか。
・常に最新情報へアンテナを貼る
 ・ニュースを追う
 ・勉強会に出る
 ・情報交換する
 ごく当たり前のことだが、自分が置かれた環境の外から眺めることはやはり重要だ。
・未来志向になる
 ・過去の成果に愛着を持ちすぎない
 ・これから実現したいことを実現する最良の方法を考える
 エンジニアであれば、自分が作ったものに愛着が湧くのはしかたない。しかしソフトウェアは有機物だ。腐っていく。良しとされる設計も言語も変わる。
 執着せず新陳代謝させよう。過去の成功体験ではなく、未来に成功するための道筋をたてよう。
・適当に考える
 きっちり「意味は?」「効果は?」「置き換えにかかるコストは?」と考えることは、実はモメンタムに強く巻き込まれることになる。
 いや、重要な考えではあるのだが破壊的イノベーションや不連続な変化は初期段階では「変えないほうがマシ」なのである。なので論理的にのみ考えたら変革への動きは採用されない。
 「なんか他でうまくいってるっぽいし」「なんか名前かっこいい」「いいんでない?」それくらいのいい加減さが、時には必要ケ・セラ・セラ。

役所だからー。国だからー。
否、我々はモメンタムに巻き込まれやすいものなのだ。
一人ひとりが脱モメンタムの気概を持つことで、それこそ「変革のモメンタム」を巻き起こしていく。それくらいの勢いでありたい。

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