機業戦士アジャイル すれちがい宇宙(そら)編
はじめに
※注意!! 本コンテンツは機動戦士ガンダムに関する内容を含みます。苦手な方は閲覧を控えてください。
偉い人には、それがわからない
機動戦士ガンダムの終盤に「ジオング」というモビルスーツが出てくる。
足がないジオングの機体を見て不安になるシャアに対し、整備士が
「あんなの飾りです。偉い人にはそれが分からんのですよ」と答えるシーンはあまりにも有名だ。
これをソフトウェア開発になぞらえると、ジオングはエンジニアからみて「すでにリリース可能な状態」であるが、偉い人(ギレン、キシリア)からみるとまだリリース判定できない段階になっている。すれちがいだ。
その後のシャアの活躍ぶりから、エンジニア側の言い分は正しかったであろうことがわかる。
実際の開発の現場でも、ないだろうか。ステークホルダーとエンジニアのコミュニケーション不全によりプロダクトのゴールに対する認識がずれており、リリースするしないの押し問答が起こることが。そんな議論に時間を使うことが、最終段近くでゴールについての認識齟齬が起こることが、果たしてアジャイル開発として望ましいことなのだろうか。
みんな悩んでる
ここ最近、自分が直接かかわるチーム以外の人と1on1をする取り組みをしている。
この「野良犬」作戦を通して、対象的な相談を受けたことがある。
・目標に向かってすばやく動くためにアジャイル開発を導入したいが、マネージャーを巻き込めない
・目標に向かってすばやく動くためにアジャイル開発を導入したいが、メンバーを巻き込めない
一つ目はよく聞く話だ。現場のエンジニアがどこかでアジャイル開発という概念に触れ、「これこそ自分が求めているものだ!」と確信したものの自分のチームへの導入がなかなかできない、というものだ。
二つ目については、そのようなパターンもあるのかと少々驚いたが、詳しく話を聞くことで納得した。過去にアジャイル開発での成功体験を持ったマネージャーが、新しいチームにおいてアジャイル開発を導入しようとしているが「対話よりもコーディングを」と考えるエンジニアがプランニングに参加せず(その場にはいるが内職している)、結果として手戻りを繰り返してしまっているというのだ。
この二つ、矢印の向き先こそ逆だが、共通しているのはコミュニケーション不全を起こしているということだ。
どちらも「アジャイル開発であれば、課題を解決できる」と信じている。
そしてそれをチームに持ち込もうとするが、受け入れられない。それは無理もない話だ、相手はあなたほどアジャイル開発というものを信じていない。
しかし悲しいかな、目の前の「アジャイルをチームに持ち込む」というミッションにばかり集中しているから、相手の目線からどう見えているかがわからない。逆襲のシャアでアムロに共闘を呼び掛けるも拒絶され、「なぜわからんのだ!」と激昂するシャアと一緒だ。
人はいつかわかりあえる…でも僕たちはニュータイプじゃない
機動戦士ガンダムの終盤で、ニュータイプであるアムロとララァが精神的つながりの中で対話する。人は変わり、わかりあえるようになっていくだろう、と。
そうなれば、上記のようなすれちがいもなくなり、対話をそのコンセプトの根幹に据えたアジャイル開発はより一層の飛躍を見せるだろう。
しかし僕たちはニュータイプか?そうじゃないはずだ。ピキューンっていう音が頭に響くことはないしサイコミュも動かせない。何より、距離が離れた他人と心で会話するなんてできない。相手もそうだ、ニュータイプじゃない。あなたが何を考えているかは知らない。あなたの提示する話を、相手のフレームで理解しようとするのだ。
「コミュニケーションは受け手が決める」、これはオールドタイプたる我々が心を通い合わせるために留意するべき、重要な原則だ。
なぜわからんのだ!と怒りのコロニーを落とすのではなく、相手の目から見て、どう伝えれば伝わるか、そこを考えることに腐心しよう。
そうすればいつか、刻が見えるはずだ。
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