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【書評】"FACTFULNESS"が伝える、実は良い方向へ向かう世界と私達の悲観的な認知

チンパンジークイズ

まずは、こちらのクイズにチャレンジしてみてほしい。
世界の真実についてどれだけ知っているか確かめるクイズだ。
チンパンジーであれば、ランダムに選択するため正答率は1/3。4問程度。

どうだろうか?チンパンジーには勝てただろうか?
「FACTFULNESS」冒頭でもこのクイズが紹介されており、さらに世界の「賢い」人々の正答率もあわせて掲載されている。

チンパンジー以下だった方、ショックを受ける必要はない。世界の「賢い」人々も、ほとんどがチンパンジー以下の正答率を叩き出しているのだ。

少し悲観的になりすぎたのかもしれない

チンパンジークイズの正答と、自分の回答を比べてみよう。おそらく、正答と比べて悲観的な回答を選んでいたのではないだろうか。

なぜ賢い人でもチンパンジー以下の正答率なのか。人類はチンパンジー以下なのか。そうではなく、「悲観的に物事を捉えてしまう」という認知のクセが原因だ。

では、なぜ我々は悲観的なのだろうか。ニュースはたいてい悲しい事件ばかり流すから?それもあるだろうが、それだけではない。そもそも人間の脳が、物事を悲観的に捉えやすくできている。

本書「FACTFULNESS」では、そういった脳のクセについて解説し、私達が世界と「正しく」向き合うための手引をしてくれる。

認知を歪める「10の本能」

こちらが、本書で紹介される10の本能だ。

分断本能
ネガティブ本能
直線本能
恐怖本能
過大視本能
パターン化本能
宿命本能
単純化本能
犯人捜し本能
焦り本能

極端な数字・話に興味を持つがゆえに、本当はつながっている集団を分断していると捉えてしまう分断本能。
物事は線形に推移すると推測してしまう直線本能。
ステレオタイプな認識をもってしまうパターン化本能。

こういった本能に抗い、ファクトを手に入れるためにはどうしたらいいのか?
俯瞰して物事を捉える姿勢だったり、偏見の眼鏡を外したり、なにより1次データにあたり客観的事実を捕まえることが重要だ、ということが本書を通して理解できる。

「悪い」けれど「よくなってきている」ことを認める

「最悪の時期は脱したかもしれないが、依然として悪い状況じゃないか」。
本書の中でも幾度か言及される、ファクトフルネスの「この世界はよくなってきている」への反論。

確かにそのとおり、疫病が「減って」も、教育を受ける人が「増えて」も、
そこに該当しない人はいる。悲劇の渦中にある人に「でも全体的にはよくなってきているよね」といってもそれは意味がないことだ。

しかし、「100%うまくいっていないから全部ダメ」という姿勢もやはり危険だ。うまくいっているところとそうでないところを冷静に分析し、「よいこと」をつづけ、「依然、よくなっていないこと」の改善にフォーカスする。
前進するためには問題を小さく切り分け、「少しずつよくなる」よう努力していくことが重要だ。そういったことも本書から汲み取ることができる。

年初に話題となった書籍なので手に取った方も多いと思うが、未読の方はぜひご一読いただき、真実を捉え良い方向に前進するヒントを手にしてほしい。

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