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丸暗記しないピアノコード/“度数即読″と“12音の移動ド”で歌って弾く

ピアノコード一覧などをみて、その膨大な数に圧倒されたことはありませんか?

このnoteでは、ピアノコードを鍵盤上で自分で即座にみつける方法を説明していきます。ガチガチの丸暗記をしなくても、柔軟にラクにキーが押せるようになります。音楽の演奏方法についてはそれぞれの教材におまかせして、コードの構成音をパッとみつけることに主眼をおきます。

パッと、というのは、目と耳を使って感覚的にということで、以下の2つを柱とします。

■1本目の柱     “度数⚫︎⚫︎

コードの構成音は、コードの一番下の音からの相対的な音の高さで決まっています。音をさがすには鍵盤上で「1、2、3 …  」と数えることになるのですが、それには少し時間がかかります。

2つの音の間の鍵盤上の距離は、度数というもので表されます。白鍵と黒鍵の並びは一様でなくてちょっと複雑ですが、このnoteではパターンからひと目で度数を読み取ります。鍵盤を1個ずつ数えなくてもいいんです。これを、“度数即読”と名付けます。

ひと目で度数を読み取る

なお、「そくどく」は普通は“速読”ですが、あえて“即読”としました。両手10本の指を使ってピアノを奏でていくその一瞬一瞬に、度数をひと目で感覚的に読み取る、という意味をこめています。

■2本目の柱   移動ドで感じて歌う

そこに組み合わせたいのが移動ドです。それは、その曲の調の主音を“ド”として、音を相対的にドレミで感じて演奏するやり方です。

イメージが湧きにくい方は、例えば『かえるの歌』の冒頭をドレミで歌ってみてください。

ここで大事なのは、楽器で音をとらないということです。最初の音がわからなければ、適当に歌いやすい高さでよいですよー。「♪ カエルのー 」の歌詞でもドレミでもいいですよ。 ハイ、どうぞ!

『かえるの歌』冒頭 
   ♪ カエルの  うたが〜   きこえてくるよ〜       …
   ♪ ドレミファミレド〜   ミファソラソファミ〜   …

「最初の音は適当にとってよい」というところがポイントで、最初の音に対する相対的な音の高さをドレミで感じて歌います。このような演奏のしかたを移動ドといいます。

音と音との高さの差を感じる能力を相対音感といい、例えば、カラオケでKey(調)を変えても歌えるように、大抵の人に備わっている能力です。

このnoteでは、相対音感をフル活用してピアノコードを攻略します。すると、コードを1個覚えれば、同じタイプのコード12個が弾けるようになります。

※ちなみに、通常行われているような、ドレミの音の高さが一定に決まっているやり方は、移動ドに対する呼び方として固定ドといいます。 

■音名と階名(表記について)

移動ドをピアノの鍵盤と結びつけるために、このnoteでは、音の名前を以下のように呼びます。

1.音名  
絶対的な音の高さをC、D、E … で表します。調が変わっても、同じ音の高さならいつも同じ名前です。

黒鍵の音は ♯ あるいは ♭ を後ろにつけて、「C♯(シーシャープ)」「D♭(ディーフラット)」のようになります。1個の音について、2つの呼び方があります。

音名

2.階名  (移動ド)
曲の調の主音をとし、そこからの相対的な音の高さによりド、レ、ミ …で表します。ドの位置が、調によって変わります。

階名  調の主音が

上の左右の鍵盤図を見比べてみましょう。左のハ長調の各キーからそれぞれ半音2個分ずつ右へ動かすと、右図のニ長調ができます。

カラオケでKeyを上げ下げするのも、これと同じです。カラオケマシンも人間も、全部の音を半音何個分か一斉に動かしているのです。

ハ長調のドレミ…を半音何個分ずつ動かしていけば、任意の音をとした長調の音階 = メジャースケール を作ることができ、この「♪ドレミファソラシ 」という音の呼び方を階名といいます。

階名は、曲のKeyが変わっても(=移調しても)同じドレミ

階名なら、Keyが変わっても感覚として同じように歌えます。例えば『かえるの歌』なら、どんなKeyでも「♪ ドレミファ ミレド〜 … 」です。

上記の右のKey=D(ニ長調)の鍵盤図は、ちょっと違和感があるかもしれませんが、このnoteでは、度数即読で少しずつ慣れていくので大丈夫ですよ。

なお、臨時記号の♯や♭の音(ハ長調の場合に黒鍵になる音)にも階名があります。第2集(一部は第1集)で登場します。

注)Key(英字)は “調
キー(カタカナ)は “ピアノの鍵盤1個1個”         
を表すこととします。

■階名は耳にシンプル

調号に♯や♭がたくさんあっても、階名だとシンプルに歌えます。

例えば、『ねこふんじゃった』の曲でみてみましょう。
この曲、ふつうは、ほとんど黒鍵で弾きますよね。固定ドで読むと「♪ フラット  フラット  フラットー   フラット  フラット … 」で、口が忙しくて大変です。

♭を省略して「♪ ミレソー  ソッ ソッ … 」のように読む方法もありますが、それでは元々調号の付いていない白鍵の音との間の音程が正確に表現できません。

実は、この曲はKey=G♭(変ト長調)で、移動ド(階名)ならば以下のように表せます。

『ねこふんじゃった』  G♭の音をとして
   ♪ ラソ ドー ドッドッ   ラソ ドー ドッドッ
      ラソ ドードー  ラードー  ソーシッシッ
      ラソ ソー シッシッ   ラソ ソー シッシッ
      ラソ ソーシー  ラーシー  ドー ドッドッ
  ※太字は左手で弾く低い音。

これをこのままKey=C(ハ長調)で弾いてみてください。あの『ねこふんじゃった』が、フラットも音程の矛盾もなく全部白鍵で弾けるのが、新鮮に感じられるのではないでしょうか。

そして、最後のところは、「♪ ソーシー ラーシー   ドードッドッ 」とドで落ち着くような感覚になります。このような感覚を調性感といいます。階名は調の中での音の役割を表しているので、階名で歌うと、自然にメロディーを分析してシンプルに感じることができます。

■度数即読すれば鍵盤の見た目もシンプルに

さて、耳にはシンプルな階名ですが、鍵盤では困難に突き当たります。同じ階名でも、Keyによって白鍵黒鍵のパターンががらっと変わってしまうのです。

2本の柱を組み合わせて

そこで威力を発揮するのが、最初にお話した「1本目の柱」の度数即読です。これを、2本目の柱である移動ド(階名)と組み合わせます。

次のドミソの和音の例でみてみましょう。

目にも耳にも 両方ともドミソと感じられるように
していきます

上の図で、左はKey=C(ハ長調)、右はKey=E♭(変ホ長調)の場合のドミソを示しています。白黒の並びが違っても、移動ドで歌って度数即読すると耳にも目にも「♪ ドミソ」として感じられるのです。

ここは言葉で表現しきれないところなので、ぜひ、次の§1.で体験してください。そんなことをくり返すうちに、頭の中の音がドレミで聞こえて鍵盤上で音が見え、あそび弾きみたいに弾けますよ。

■度数を組み合わせてコードを作る

鍵盤上の度数やドレミに慣れてきたら、度数を組み合わせてコードを作ります。

長3度短3度を組み合わせてメジャーコードを作る

」のところにC、D、E … の音を当てはめていくと、Cメジャー、Dメジャー、Eメジャー … のようにコードが作れます。

相対音感なら、どちらもドミソ

■コードに移動ドを使うメリット

移動ドを使えば、Keyが変わってもコードやコード進行が同じ階名、感じ方で演奏できます。どんな複雑なKeyでもハ長調のようにシンプルになり、以下のメリットがあります。

  1. コードを1個覚えれば、ルート(コードの一番下の音)違いの12個のコードがいっぺんに覚えられる。 

  2. コードの転回(音の並べ替え)がしやすい。

  3. コード進行が分析しやすい。

この他、Keyの変更(移調)が簡単になったり、楽器なしに紙の楽譜から歌ったり、耳コピーしたり、メロディーを分析したり、アドリブで演奏したり、歌を作ったりと、コード以外にもつながって行くのではないでしょうか。

移動ドは、子供の頃からずっと思ってきたのと違うので抵抗があるかもしれませんが、ちょっとだけ頭を柔らかくしてお付き合いください。カラオケでKeyを変えても歌えるなら、すぐになじめると思います。

■移動ドを7音から12音に拡張して、複雑な響きも

このnoteでは、移動ドをドレミファソラシの7音から12音に、臨時記号の♯や♭の音(ハ長調の場合の黒鍵の音)まで拡張して、移動ドで感じて演奏します。

7音だけでは比較的単純な音楽しかできませんが、12音あるとジャズやポップスのしゃれたコードの響きも理解しやすくなります。耳の感覚と理論の融合、みたいな感じです。

12音の名前は、米英の方式(いわゆる“バークレー式”)を拝借させていただきます。例えばミ♭は Meです。発音は「♪ メ」と短くて調子がよく、曲のリズム、流れをこわさずにスムーズに歌えます。

この短いということは大変重要です。いちいち「♪ ミ フラット」などと読んでいたら、字余りになって歌えないですからね。

日本人向けに少しアレンジして、「♯や♭の音だけ英字、他の7音はカタカナ」のカナ英字まじり表記でいきたいと思います。なお、♯系、♭系には全部で10個の英字の読み方がありますが、その中からコードに特に重要な4個に絞り、身近な曲を歌って1個ずつ慣れていきます。

12音の音の名前(Cをドとする場合)
バークレー式で白鍵をカタカナに変える。黒鍵はピンクで示した4個を重点とします。

■このnote(マガジン)の構成

度数を1個ずつ攻略し、組合わせてコードを作る

身近な曲を移動ドで歌いながら弾いて、5度、4度、3度 … と、度数ごとに鍵盤上での即読や音の響きに慣れていきます。聞き慣れたメロディーの記憶が、音程の感覚を作ってくれます。特に曲の冒頭は大事です。

度数がある程度たまったら、それらを組み合わせてコードを作ります。そして、コードの音を並び替えて変化させます。

こんな感じですすめていって、第4集が終わる頃には大抵のコードを即座に作れるようになるでしょう。

内容項目

第1集〜第4集の各マガジン(noteの集まり)を、それぞれ10本くらいのnoteで構成します。

第1集   度数即読と3音のコード         2023年11月リリース
主な項目:
5度
4度
3度
MeとFiの音
3音のコード(メジャー・コード、マイナー・コード)
コードの転回形でアルペジオ
ダイアトニックコードとローマ数字表記
曲に合わせて弾く
コードをなめらかにつなげる

第2集 7度の音程と4音のコード           以下、順次リリース予定
主な項目:
トライトーン(減5度、増4度)
12音の移動ド 全部の音の名前
7度
Teの音
4音のコード(メジャーセブンス・コード、マイナーセブンス・コード、セブンス・コード)
ダイアトニックコードとツーファイブ

第3集 4音のコードをラクに弾く  他          
主な項目:
3度と7度で弾くコード
6度
Leの音
ディミニッシュコード
オーギュメントコード

第4集  テンション および マイナーKey
主な項目:
9度、13度でコードのテンション
テンションを加えたツーファイブ  
♭9度、♭13度でオルタードテンション
マイナーKeyのスケールとダイアトニックコード
マイナーKeyのツーファイブ

※上記項目は変更の可能性があります。
※上記マガジン全体のことを「このマガジン」ではなく、「このnote」と記載します。転載、複製は禁止とさせていただきます。


ぜひ、次の§1.をご覧ください! 即読しやすい5度をテーマにしたお試し版です。

参考とさせていただいた本

[1] 『ピアノ学習者のための ピアノソルフェージュ1巻−6巻』
デーヴィッド クレヨンビュール、他 (著)     出版:全音楽譜出版

[2] 『ジャズ ソルフェージュ 1、2  ジャズ・ミュージシャン ボーカリスト 作曲のための移動ド ソルフェージュ(12音)とイヤー・トレーニング』
宇野重行 (著, 編集)        出版:UNOジャズレッスン

※この他、個別の話題で参考とさせていただいた本については、随時、各note中に記載します。

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キーとキーの間の間隔(度数)をひと目で読み取り、耳の感覚も使って、直感的にコードをみつけます。

ピアノコード一覧などをみて、その膨大な数に圧倒されたことはありませんか? 丸暗記しなくても自分で音を見つける方法を、ここにまとめています。…

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