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はじめてのオフ会(TENGA編)

東海地方某所に集まりし4人。彼らには一つの目的があった。

『TENGAの妖精に会いたい』

何でも『水が苦手な夫』を持ち、性生活のあまりの不遇に傷付き『TENGAの妖精』になった女性がいるらしい。

*               *               *

彼らは激怒した。必ず、かの邪智暴虐な某夫を除かなければならぬと決意した。

彼らにはセックスが分からぬ。彼らは『ぷろぐらみんぐ』を学ぶ気の良い青年たちであったが、女には無縁であった。健全に育ってきた彼らを慰めるモノがあった。名を『TENGA』という。はるばる市に出掛けては、様々な『TENGA』を集めた。

彼らが市を歩いていると、どうも街がひっそりしていることに気付く。日が落ちたせいばかりでない、街全体がやけに寂しい。

彼らは『TENGA』商人を捕まえて話を聞いた。

彼ら「街の様子がおかしい。何故、賑やかでないのだ」
商人「某夫は手抜きをするのです」
辺りをはばかる低声で答えた。
彼らは聞いた。
彼ら「何を手抜きするのだ」
商人「セックスでございます」
彼ら「何故だ?」
商人「水が苦手だからだそうです。手抜きセックスに傷付いた1人の女性が、最近『TENGAの妖精』になったようです。
この話を聞いた我々、街の住人は大変心を痛めました。『TENGA』は心を込めて作るものです。しかし、我々はnoteで『私がTENGAになるまで』を読んでから、質の良い『TENGA』を作ることができなくなりました」

彼らは、激怒した。
「呆れた某夫だ。生かしておかぬ」
彼らは単純な男であった。
Twitterにて『TENGAの妖精』に
「年明けに勉強会 兼 交流会を開きませんか?」とDMを送ったのである。

*               *               *

冒頭に戻る。

2019年1月6日
彼らと『TENGAの妖精』は串カツ屋にて面会した。
女…もとい妖精の顔を見る。
丸顔にショートカット、これといって良し悪し付ける顔ではないが一つ特徴があった。
(ちっぱい…)
彼らは口に出さずとも、この一点を見逃さなかった。
視線に気付いた妖精が言う。

妖精「お気付きでしょう、私はちっぱいなのです。私がちっぱいなせいで、夫は手抜きセックスをするのでございます。そのせいで、この街の『TENGA』生産率は逓減傾向にあります」

彼ら「そんな訳はない!第一に『水が苦手』とは一体何なのだ、解せぬ。確かに、『TENGA』の質は下がり生産量も逓減傾向にある。これではまるで、『TENGA』が人質に取られているようなものではないか…!!」

「しかし…」と彼らの中のうちの一人が言う。

「『TENGA』の生産量が減っているのは、何も妖精さんのせいだけではない。『TENGA』の流通経路が限られているせいもある。『TENGA』の販売店といえば、ドンキ、それに某ドラッグストア、それからネットで買うしかないだろう。
そもそも『TENGA』とは、セックスできない男のためだけにある訳ではない。その用途は幅広く、医療用にも使われると聞く。このような『TENGA』を卑猥なものとみなし、限られた店舗でしか扱わない社会こそが問題だ」

彼らは顔を見合わせ、囁くように、しかし力強く言った。

彼ら「『TENGA』を解放しよう」


妖精は聞いた。
妖精「『TENGA』を解放とは、一体どのような…?」

彼らは語る

彼ら「まずは『TENGA』のイメージを変えるところから始めよう。
妖精さんは昔の『ユニクロ』をご存知かな?一昔前の『ユニクロ』のブランドイメージは『低品質、低価格、大量生産』だった。しかし今やどうだろう。『ユニクロ』と言えば『少し高い、しかし高品質』の製品を提供するブランドという印象を持っているのではないだろうか?
ブランドイメージを変えるのは大変なことである。
『TENGA』のブランディングを進め、顧客の『TENGA』のイメージを一掃し新しいものにするしかない」

彼ら「コンビニにも『TENGA』を置こう。いや、ディスプレイとして、トイレに置いておくのもいいかもしれない。まずは使わなければ、その良さがわからぬ!!!!」

盛り上がる彼らの中で、浮かぬ顔をする者がいた。
「私を殴れ…力いっぱい頰を殴れ……………私は『TENGA』を使ったことがない。
私は『TENGA』を愛している。しかし実家住まいである。使うべきタイミングも『TENGA』の捨て方もわからぬ。私は…『TENGA』を使わず、ただコレクションしていたのだ」

その告白が終わると同時に、他の彼らが『not TENGER』の頬を殴った。

しかし他の彼らも次々に、告白をする。

「実は『TENGAプレミアム』しか使ったことがない。『TENGAハード(黒)』はあまり好きでないのだ」

「実は私も『TENGA egg』ユーザーだが『TENGA カップ』は使ったことがない。見栄を張って『TENGA カップ』を買っていたが、アレは人にあげてしまっていたのだ」

彼らはお互いの頬を殴り合った。

「ありがとう、友よ」彼らは同時に言い、抱き合い、そして嬉し泣きをした。

串カツ屋の中で、歔欷の声がした。串カツ屋の店主である。

「皆さん方の話をお聞きしました…えらく感動いたしましてね。すみません…どうぞ、お会計はこちらです」

彼らと妖精は店を出た。
他の客たちの間に、歓声が上がった。
「『TENGA』万歳!『TENGA』万歳!」

『not TENGER』の元に『TENGAの妖精』がそっと近寄り、耳元で言った。
「使ったことないんでしょう。ドンキで買いましょう」
『not TENGER』は、ひどく赤面した。




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