さよならの妖精 ~ ABC座『ジャニーズ伝説2017』

今年のえび座、ここ数年というかこれまでのえび座の中で最高レベルの完成度だと思います。すげー最高だしめっちゃ楽しくもあるんだけど、初見のときなんだかすごくぞくっとしちゃって。

まず、アイランドでおじいちゃんのPTSDがきわまってるなあって思ってしまったのがでかい。おじいちゃん完全にJアラートが空襲警報に聞こえてるタイプの老人で、1幕なんかぶっちゃけ8割戦争やってて「もう~~~戦争はぁ~~~~だめなのおおおぉおおお~~~~ウワアアアアン」みたいなもはや癇癪でしかなく、こらあかん!じいさん、おくすりはよ飲み!みたいな気持ちになったんですけど。えび座は戦争の話こそしないものの、ちょっと近しいものを感じたんですよね。

ジャニーズ(グループ)の栄光と挫折をさんざっぱらみせられたあと、レビューと共に語られるジャニーズ(事務所)の輝かしい歴史に私が感じたものは「民族」だったんですよ。うわすっげーこええーーーーーーこれめっちゃくちゃこええーーーーーーーーーーーー!!!!!って鳥肌立って。

ツアー終了後に書いた前回の投稿でも言いましたけど、自分を誇ること、矜持をもつことって大事だけど難しいわけですよ。だけど、自分で自分に納得がいかなくても仲間のことは誇れるんじゃないか、それがグループのええところじゃろがい!というのが前回の話だったわけですけど、それをもっと大きく広げたのが今回だったと思う。今日の結果に満足できなくても、自分がジャニーズ(事務所)の一員であることは誇れるだろうと。ジャニーズの名を背負ってもっと胸を張れと。その象徴であるレビューをみて、ああ、これは血統の問題なのだな、と思ったのです。

もはや血統といえるこの民族的意識って、ものすごくプリミティブな宗教観だと思う。所属タレントが実際に血族であるわけではないにも関わらず、理想とか理念とかを掲げるある種新興的なものじゃなくて、土着、選民という民族宗教的な思想だ。ただ私が感じたのは「うわ~宗教っぽ~い」というライトなゾワっと感ではなくて、なんかもうちょっと本質的な、疎外感のようなものだ。なんでかっつーと私はジャニーズ事務所所属タレントのファンではあるけど、私自身がジャニーズに所属しているわけではないから。

今回の公演で、A.B.C-Zは、自分たちA.B.C-Zというグループのことをほとんど語らないんですよね。5BOXからの持ち歌2曲ですら、「現在のジャニーズ(民族)最新のパフォーマンス」という以上の意味をもたない。この公演におけるA.B.C-Zはほぼ100%、わりと徹底して「ジャニーズ事務所の一員」として振る舞う。わたしたち地球に生きる人間はみな宇宙船地球号の乗組員のひとりです!みたいな感じのやつ。これを、事務所を背負って立つ我が軍誇らしい!って思うの、なんだか超こわい!!!と思った次第です。

A.B.C-Zがジャニーズ伝説を演じることをゆるされているのって、A.B.C-Zがまごうことなき純血種だからだと思うのです。いまや皆が知ってる派閥の問題そのままの話なんだけど、Jフレ以下の世代って少しずつ血が薄れていて、YJはもう新人類で、キスマイあたりなんか完全な混血児なわけ。そんな中、最初に混ざった外の血がSMAPなんですよ、多分。担当マネージャーの血統の話じゃなくてグループのDNAの問題。今回の公演に(元含む)スマ担が少なからずアレルギー反応を示すのは、もうね、これ、血の問題だと思う。解散ネタが悲しいとか劇中のセリフがとか、そういう直接的な話じゃないと思う。もっと本能的な疎外感なんじゃないだろうか。

ふたたび言うけど、今年のえび座、正直ここ数年というかこれまでのえび座の中で最高レベルの完成度だと思います。無駄もないし隙もない。おじいちゃん演出らしいとっ散らかりもない。すべてを削り取って、ジャニーズというDNAの本質であるショーだけを突き詰めている。そりゃあ「もう大丈夫」って言われるわって話ですよ。

みんな知ってる通り、21世紀を迎えてそろそろ20年が経とうっていうこのときに、グローバリゼーションだダイバーシティだって言ってるこの時代に、ナンセンス極まりない話じゃないかって思う。その先に未来があんのかと。すげー不安だよ、こんなの。それと同時に、このあまりにも最高なショーのDNAを後世に残したいという抗えない欲求がある。そのための最後の純血種がA.B.C-Zなんだと思う。言い換えればそれは“希望”だ。君の名は希望……。

そしてこの「やばい、残さなきゃ、なくなっちゃう」という本能的危機感は、おじいちゃんとかわいくん(概念)、そしてすべてのジャニーズを愛する人たちが、SMAP解散に深く傷付いた結果なのではないか。

先輩メドレーは、最後にSMAPの「世界に一つだけの花」のあと、少年隊の「君だけに」へと続いて、そこで終わり。歌われるのは1番でなく2番のBメロで、「もしもさよならの妖精たちが来て僕にキスしても消せない切なさ」なんだよ。消えないよ実際。ほんとに。今回のえびちゃんはきっと、さよならの妖精だ。

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観劇ヤクザ

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