見出し画像

【企業研究】住友商事

はじめに

当記事では総合商社の住友商事についての企業研究を行います。

総合商社は就活生からの人気が極めて高い業界でありながら、
◆他社との差別化が極めて難しい
◆何が強みなのかが分からない
◆どの部署が花形なのか
◆どのような人物像が求められるのかを掴みづらい

といった特徴があります。

そこで、当記事では上記のような就活生の悩みを解決するべく、
◆住友商事の他社との違い
◆住友商事の中でどの部署が強い=花形なのか
◆住友商事がどのような人物を求めているのか

を住友商事の歴史を創業から辿り、丁寧な解説を行いました。

多くの方々のキャリア選択を成功させるきっかけとなれば幸いです。

基本情報

会社名 :住友商事株式会社
設立年 :1919年
売上 :約4.6兆円
平均年収 :約1356万円(2021/03期)
採用人数 :例年120-150名程度
選考フロー :ES・適性検査→面接(3回)→内定

創業の歴史

-住友の原点は銅の精錬業

出典:住友金属鉱山ホームページ

住友の原点は16世紀後半にまで遡ります。住友は1590年に関西地方で泉屋と称し、銅の精錬事業を始めました。当時は原材料から銅と銀を分離することが難しい時代であったため、精錬した銅に銀が混在していると利益が減少しました。そこで、住友は南蛮吹きと呼ばれる原材料から銅と銀を分離して精錬する技術の開発に成功しました。この技術が住友の事業に大きな利益をもたらし、住友は発展していきました。しかし、17世紀後半になると銅の精錬技術が発展していき、従来の南蛮吹きを中心とした経営から利益を獲得することが困難になりました。ここから住友は事業形態を銅の精錬から銅山の経営へと踏み出すことになります。その後、住友は1691年に別子銅山を開坑し、本格的な銅山経営を行い始めます。

-1945年に商事部門への進出を図る

住友商事の前身にあたる会社は大阪北港地帯の不動産開発を行っていた大阪北港株式会社です。住友グループの不動産部門として事業を行っていた大阪北港株式会社は後に、株式会社住友商事ビルディングと合併し、住友土地工務株式会社になりました。住友土地工務株式会社は日本建設産業株式会社へと改称し、戦後の財閥解体をきっかけに、商事部門への進出を行いました。その後、1952年に日本建設産業株式会社は住友商事株式会社へと改称されました。

-1970年代に本格的な総合商社の道へ

住友商事は三菱商事や伊藤忠商事などの商いを出発点をして設立された会社ではないため、新しく取引先および市場を開拓する必要がありました。住友商事は日本の高度経済成長期の波に乗り、1950年代に海外拠点の拡充、1960年代に取り扱い品目を増やしました。そして、1970年代に住友商事は総合商社としての経営基盤を整えることに成功しました。

企業理念/求める人物像

出典:住友商事ホームページ「経営理念」

住友の企業理念は大きく2つあります。

-自利利他公私一如(じりりたこうしいちにょ)

(別子銅山跡)

出典:https://www.travel.co.jp/guide/article/568/

自利利他公私一如とは「目先の利益に捕らわれず長期的な観点で国家および社会に利する事業を我々は行う」ことを指します。この住友の事業精神が体現されたエピソードとしては別子煙害問題が挙げられます。住友は1691年に別子銅山を開坑しました。しかし、機械設備および鉄道が開発・導入されるにつれて製錬所のキャパシティが不足し、新居浜の沿岸部に移設されることになりました。しかし、製錬所から排出される亜硫酸ガスが周辺の農林に被害を与え、周辺住民からの不満・怒りが爆発しました。そこで、住友は自利利他公私一如の事業精神の下、新しく移設した製錬所を約20km離れた無人島に移設することを決定しました。この移設費は別子銅山の経営から得られる純利益2年分に相当するとされています。このようなエピソードから住友は目先の利益に捕らわれず長期的な国家・社会の繁栄を目指す精神があると言えます。

-事業は人なり

もう一つの代表的な住友の事業精神は「事業は人なり」です。住友商事は前述した通り「商い」を原点として設立された会社ではありません。しかし、「熱心な素人は玄人に勝る」の精神の下で、商事部門の事業を成功させてきました。だからこそ、住友商事は「人」や「想い」に対してどの企業よりも重みを置いていると考えられます。したがって、採用の過程においても能力・スキルは当然評価分野ではありますが、人の魅力をどれだけ感じさせられるかが勝負の分かれ目になりそうです。

事業内容

住友商事の事業グループは6つに分かれています。注目すべきはメディア・デジタルグループです。他の総合商社とは異なり、メディア事業がグループとして独立する形態をとっています。これは住友商事の中でメディア事業が利益を稼ぐ柱の一つとしてみなされていることを指しています。

住友商事の3つの強み

鋼材事業で業界トップクラスのシェア

-住友が古くから培ってきた鋼材事業の経営ノウハウ

出典:住友商事ホームページ「グローバル事例」

住友は銅山経営、銅の製錬をはじめとする鋼材事業を祖業として発展しました。その歴史は数百年にのぼることから、鋼材事業の黎明期~成熟期までの流れを熟知しているだけでなく、それらを経営に落とし込んだ事業ノウハウを持ち合わせています。そのため、世界各国での鉱山の発掘・運営および鋼材の製造にかけて、現地の出資した会社に対して住友が持つ鋼材事業のノウハウを伝え、成長させることが可能になります。

-世界各国に広がる銅材調達ネットワーク

住友商事は鉱山での資源発掘、トレーディング、流通までサプライチェーン全体を一貫して提供しています。そのため、住友商事が持つ鋼材事業のノウハウを世界各国に掛け合わせることが可能になり、他社を寄せ付けない強固で最適化されたサプライチェーンを作り出すことができます。

グループ一体となって手掛ける不動産事業

-住友商事の前身は住友グループの不動産経営部門

出典:住友商事ホームページ「沿革」

不動産開発は利益率の高いビジネスですが、土地の取得の際に利害関係者の説得・協力が必要になり長年の経験や関係が交渉を有利に進めます。住友商事の起源は住友グループの不動産部門であった大阪北港株式会社です。当社は大阪北港を中心とした地域の開発を担っていたことから不動産開発に強みを持っています。だからこそ、住友商事のルーツは不動産経営にあると言っても過言ではなく、前身の会社が持つ不動産開発の経験およびノウハウを活用しながら案件の取得・運営までを行い、安定的な高収益を上げることができます。

-開発から運営まで一貫して行えるグループ力

住友グループには住友不動産を中心とした不動産開発・流通・管理を一貫した体制で行える経営基盤が存在します。住友商事はこのようなグループ力を活用して開発不動産の案件の獲得および実際の開発を行うことができます。

CATV市場の王者J:COMを筆頭とするメディア事業

-CATV市場国内シェアナンバーワンを誇る

住友商事は成長分野であった情報産業を強化すべく1900年代後半にケーブルテレビ事業を営むJ:COMを米国のリバティ・グローバル社と合弁で設立しました。その後、J:COMはリバティ・グループの中間持ち株会社の売却によって住友商事とKDDIが双方50%出資している連結子会社になっています。J:COMはケーブルテレビ市場で50%以上のシェアを有してるだけでなく、テレビ通販や有料コンテンツの配信など多数のメディア関連収益をあげています。現在では住友商事の当期純利益の10%以上の収益をJ:COMに関わる事業が稼いでいます。

-ICTソリューション市場で強みを持つSCSK

SCSKは住友商事グループ企業をメインにITソリューションを手掛ける会社です。近年、日本はデジタルトランスフォーメーション(DX)が遅れていると問題視されているように、企業に対するDXニーズも非常に高まっています。そのため、SCSKの事業は今後も拡大していくと考えられます。

住友商事の今後の戦略

-長期的な次世代ビジネスへの成長投資

住友商事の現時点の事業ポートフォリオでは金属、メディア事業が収益の柱となっている一方で、生活関連分野に関して強みを持つ事業が少ない傾向があります。そのため、今後国内市場が衰退して鋼材輸入が減少したり、スマートフォンを媒体とする動画配信サービスが台頭し国内CATV市場が縮小していった場合、住友商事の収益の柱となる事業が消えてしまう恐れがあります。だからこそ、将来的な観点で事業を継続していくためにも次世代ビジネスへの投資は必要不可欠になります。

次世代ビジネスの注力分野はヘルスケア・再生可能エネルギー・DX関連事業であると2023年度向けの中期経営計画書で記載があります。上記の3つの分野は日本の少子高齢化、世界的な環境意識の高まり、日本のデジタルトランスフォーメーションの後進性といったマクロトレンドに対応したものになっています。再生可能エネルギーに関しては従来から世界的にプラント設計・開発・運営を手掛けた経験および実績があり、事業の成功が望めそうです。また、DX事業に関しては、住友商事は総合商社という形態をとっている関係上、事業を横断的に展開かつサプライチェーン全体に影響力を持っており、この分野の注力は業界全体の効率化による利益拡大へと結びつきそうです。

-国内での生活関連事業および海外リース事業の強化

住友商事は金属・メディア部門に依存しない事業ポートフォリオの作成を目指すべく、既存事業の大幅な強化を打ち出しています。その重点的な対象となっているのは食料・ヘルスケアを中心とした生活関連事業と海外におけるリース事業です。前述した通り、住友商事は今後国内市場が縮小する危険性の高い事業を収益の柱としています。そのため、新たな収益の柱を新しく成長投資だけでなく、既存事業の育成を通じて作る必要があります。具体的に、生活関連分野ではサミットと住商フーズを連携させ事業基盤の拡大を図るだけでなく、国内外のドラッグストアを中心としたヘルスケアの事業基盤を固める方針を打ち出しています。また、海外リース事業に関しては、今後成長によって建機の需要が増加すると見込まれる新興国市場にさらなる進出を行っていく戦略を掲げています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?