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【企業研究】丸紅

はじめに

当記事では総合商社の丸紅についての企業研究を行います。

総合商社は就活生からの人気が極めて高い業界でありながら、
◆他社との差別化が極めて難しい
◆何が強みなのかが分からない
◆どの部署が花形なのか
◆どのような人物像が求められるのかを掴みづらい

といった特徴があります。

そこで、当記事では上記のような就活生の悩みを解決するべく、
◆丸紅の他社との違い
◆丸紅の中でどの部署が強い=花形なのか
◆丸紅がどのような人物を求めているのか

を丸紅の歴史を創業から辿り、丁寧な解説を行いました。

多くの方々のキャリア選択を成功させるきっかけとなれば幸いです。

基本情報

会社名 :丸紅株式会社
設立年 :1949年12月1日
採用フロー :ES・適性検査→面接(3回)→内定

創業の歴史

-丸紅と伊藤忠商事は元々同じ会社だった!?

出典:https://dime.jp/genre/451340/

丸紅の設立は1949年ですが、その起源は1800年代後半にまで遡ります。丸紅の創業者は近江国(現在の滋賀県)で麻布の持下りを行っていた初代伊藤忠兵衛です。就活生にはあまり知られていないですが丸紅と伊藤忠商事の起源は元々同じであり、その後分社化によって別々の会社になってしまったのです。

-太平洋戦争後に分社化して丸紅が設立

伊藤忠合名会社(丸紅と伊藤忠商事の前身)は第一次世界大戦後に、インドからの大量の綿花の買い付けによって巨額の利益を獲得することに成功しました。その後は日本有数の繊維商社として成長を続けましたが、日本の戦況悪化によって繊維産業は軍事統制化に置かれるようになり、旧伊藤忠商事(丸紅の前身)は業績の悪化および企業の統廃合の潮流に巻き込まれるようになりました。最終的には、旧伊藤忠商事、丸紅商店、大同貿易等が合併し大建産業が設立されましたが、日本の太平洋戦争敗北を機に過度経済力集中排除法が制定され分社化されることになりました。この時に生まれた会社が現在の丸紅と伊藤忠商事でした。

-戦後、合併と海外進出を繰り返しながら総合商社の道へ

大建産業から完全に分社化してしまった丸紅の経営は苦境に追い込まれました。なぜなら、従来であれば伊藤忠商事の持っていた経営資源や情報を活用した商売を行えたからです。そのため、丸紅は収益源の確保や国内・海外の販路を一から作り上げることが必要になりました。そこで、丸紅は2つのことに大きく取り組みました。1つめは、合併を通じて事業の拡大を図ることです。当時の繊維・鉄鋼を強みとした商社である高島屋飯田と東通と合併を行いました。2つめは、海外の販売網の拡大です。伊藤忠商事に経営資源が大きく取られてしまった丸紅は海外への販路が減少してしまいました。そこで、海外の販売網を確保すべく積極的な海外展開を行いました。丸紅はこれらの取り組の結果、世界規模に「商い」を提供する総合商社へと進化を遂げたのです。

企業理念/求める人物像

出典:丸紅ホームページ

丸紅は歴史からも分かる通り、分社化後は0から総合商社としての道を切り開いてきました。その成功の背景には、たとえ財閥系商社が持つグループ総合力や伊藤忠商事のような古い歴史がなくとも、諦めずに現状を打破しようとする挑戦の姿勢があったに違いありません。だからこそ、丸紅は物事に対して果敢に取り組む勇気、何事にも諦めずに挑戦することを事業継続の上での大切な価値観としているのだと考えられます。採用においても主体性や挑戦する姿勢をアピールできる経験があれば合格できる可能性は高まるでしょう。

事業内容

丸紅の事業分野は大きく6つに分かれ、資源・エネルギー分野から生活分野まで幅広い事業領域を持っています。その中でもCDIOは近年に新しく設立された領域であり、丸紅の将来の収益の柱となる事業の開発を手掛けています。

丸紅の3つの強み

食料分野における強力なグローバルサプライチェーン

出典:丸紅「統合報告書2021」

-食品原料、穀物、畜産物のグローバルな調達力および販売網

丸紅は世界各国に食材原料の生産・調達拠点を有しています。例えば、牛肉の二大生産国はアメリカとオーストラリアですが丸紅は両国ともに供給拠点を確保することに成功しています。小麦粉、砂糖、油脂を中心とした食品原料およびトウモロコシ、大豆などの穀物も同様です。

-国内首都圏スーパーマーケットにおける業界シェアトップを誇る

丸紅はマルエツ、カスミ、マックスバリュ関東を首都圏に展開するユナイテッド・スーパーマーケットホールディングスの持ち株会社であるイオンマーケットインベストメントの関連会社として所有しています。そのため、丸紅は当社(ユナイテッド・スーパーマーケットホールディングス社)に対して一定以上の支配権を持っています。当社は首都圏スーパーマーケットで業界ナンバーワンのシェアを獲得しています。だから丸紅は国内食材流通の川下領域、つまり食品小売業を実質的に支配しており、卸・製造業に対して強い交渉力を持っています。また、小売業は最も消費者に近いことから消費者の購買データを入手することが可能です。したがって、丸紅は川下から入手した購買データを分析して消費者のトレンドの流れを掴み、川上領域に対してそれを反映することが可能です。

世界トップレベルの農業資材の供給体制

-世界各国に農業資材の供給先を持つ

出典:丸紅「統合報告書2021」

丸紅はアジア、欧米を中心とした農業資材の販売先を有しています。また、近年では、人口増加に伴い穀物需要が伸びているブラジルへの進出を行いました。ブラジルの農業形態は米国と似ていることから丸紅の持つ既存販売ノウハウを活用することができます。

-Helena社の持つ世界水準の農業資材の販売能力

丸紅は農業資材供給において全米で2位のシェアを持つHelena社を子会社に持っています。Helena社は農業資材の米国の農薬販売代理店で顧客に対する誠実な情報提供と技術を駆使した農業生産者に対するサービス提供で競争優位性を築いています。丸紅は当社(Helena社)が持つ農業資材に関する販売ナレッジを活用しながら北米だけでなくアジア領域での農業資材販売にも応用することができ強いシナジーを生むことができます。

世界各国での電力案件組成および販売

-豊富なIPP案件の経験

IPP事業とは公益ではなく商用のために電力発電を行う事業のことを指します。IPP案件を獲得するには現地での地域営業力と過去の案件成功実績および発電所の効率的な運用・保守が必要になります。丸紅はアジア・中東を中心としたIPP案件に取り組んできました。そのため、IPP事業に対する豊富な実績・ノウハウを有しており競合との入札交渉を有利に進めることができます。

-電力卸・小売のグローバル販売網

丸紅は英国と米国を中心として電力の卸・小売の販売網を有しています。そのため、発電した電力のグローバル供給が可能だけでなく、IPP案件を実施した国でも販売ノウハウを活用することができます。

丸紅の今後の戦略

将来を見据えた成長領域への投資

-DX分野への注力

近年ICT技術の発達によってDXを通じた課題解決に注目が集まっています。そして、丸紅は複数の事業ドメインをグローバルに展開していることからDXを提供できる機会は多く存在します。丸紅はこのような市場トレンドをビジネスチャンスとして捉え、DXコンサルティングファームであるドルビックスコンサルティングを設立しました。ドルビックスコンサルティングはITを駆使した事業戦略の策定だけでなくシステムの導入・運用・保守を幅広いサービス展開を行っており、DXを活用した業界最適化およびエコシステムの構築を行います。丸紅はこのDX事業を横断的に展開し、産業全体での効率化を進めていく方針を打ち出しています。

-環境・低炭素社会の実現へ向けた取り組み

ESGに対する取り組みも成長テーマの一貫として掲げています。資源・エネルギー分野では鉱山の遠隔管理や大型トラックの自動運転化を推進しています。また、電力分野では再生可能エネルギー活用に向けて投資を行っています。また、環境面を配慮した衣料・繊維の循環型サプライチェーンの構築に向けた動きが見られます。具体的には、米国Circ社への出資です。Circ社は繊維製品を繊維原料へ再生する技術を持つ会社です。この技術を用いれば消費者が不要となった繊維製品を再生利用しする、つまり原材料を繰り返し利用して生産加工するこができます。このようにすることで無駄な原材料および廃棄物の削減を行うことができます。

衣類、農業資材のグローバルシェア獲得へ向けた動き

-アパレル分野のOEM・ODM体制をグローバル体制で強化

世界的にアパレルのSPA化が進展し、OEM・ODM需要が伸びています。丸紅はこの領域を既存事業の重点強化分野として捉え投資活動を行っていることは、当社が将来的にアパレル事業のOEM・ODM事業をキャッシュを生む中核事業として位置づけたい狙いが見受けられます。

-農業資材分野のブラジルへの展開

アグリ事業を重点的に強化していく姿勢も見られます。丸紅は20219年に農業資材販売事業を営むAR社を買収し本格的にブラジル市場への進出を行いました。このような買収、すなわち多額のキャッシュを活用してアグリ事業の強化を推進していることから丸紅が農業資材分野を強化分野として位置づけていることが分かります。

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