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スペインのお夕飯は、本当に21時からしか始まらなかった

短いマドリッド出張ではあったが、現地の食事時間の慣習のおかげで、仕事後にちょこちょこと観光もできた。

まず、彼の地でのランチは、良いレストランに関しては早くても13時半開始。13時は「絶対ありえない」らしい。13時半でも早い方で、15時くらいからランチをとることも普通にあり得るという。カフェとかは例外だろうけれど、ビジネス接待ランチで使うような場所だと、15時もそれほど不可思議ではないらしい。(とバルセロナ人が言っていた)

そんな時間にランチを食べたら、そりゃお夕飯は遅くなる。予約も21時くらいからしか受け付けていないところが多かった。その前から開いてはいるが予約を受け付けていなかったり、もう少しカジュアルなバルっぽいところだったりする。

仕事自体は普通の時間に終了したので、お夕飯までの空いた時間に美術館巡りが出来た。ちなみに美術館の多くは、1日の最後の2時間は無料のところも多いが、かなりの行列になるので、オススメは、その2時間が始まる1時間前に入館すること。有料ではあるが、無料時間を狙う人も多い為、館内が空いている。

ウェブから外観借用...

ソフィア王妃芸術センターはまさにその戦略で狙ったら、ゲルニカの前にほぼ人がおらず、見放題だった。

ゲルニカそのものも素晴らしかったのだけれど、その正面の壁に、ゲルニカ製作の過程を写真に収めた連作があり、それもかなり面白かった。製作過程で、牛の向きが変わっていたり(元々体は右方向だった)、馬の位置が変わっていたり(もう少し下で、顔も上向き)、突き出された拳が消えたり(消えてるので、現物には無し)、寝転がっている人物が腹ばいから仰向けに変わっていたり、画家の試行錯誤の跡がはっきりと見て取れる。かなりギリギリまで加筆修正していたことが、わかって面白い。当初からほぼ変わっていないのは、左のほうの幼児の亡骸を抱く母だけだった。

写真1枚見ては、振り向いてゲルニカ本体を確認し、次の1枚の写真を見て、写真同士を見比べてから、また本体を確認する。時を超えた間違い探しみたいだった。それもこれも、人垣がなかったから出来たこと!

ダリの作品も多く、キュビズムのコレクションも見応えがあった。

翌日訪れたプラド美術館も、圧巻のコレクションだった。

ソフィア王妃芸術センターが現代美術なら、プラドはスペイン絵画と言って思い浮かぶような、色調暗め、写実的な肖像画がとても多く、中でもベラスケスのコレクションは圧巻だった。お洋服の肌触りとか、なんだこれ写真かよ、と思うようなたっぷりと濃厚な雰囲気。作品の年代も広範囲に網羅されているので、ああ、だんだん馬の描きかたが上手くなっていったんだなあ、なんて上から目線な見方もできる。ゴヤも、ピカソも、意外なことにルーベンスも多かった。

また、今年はプラド開館200周年らしく、「裸のマハ」、「着衣のマハ」、ピカソが描いた裸のマハ(ちゃんとそれと分かる!!!)等、画家同士のつながりを取り上げた企画展が開催されており、これも面白かった。ピカソって、ベラスケスやゴヤを尊敬していたんだそうな。知らんかったー。スペインというくくりでピカソやダリを意識したことがなく(ごめんなさい)、その視座を得られたことも嬉しかった。

最終日も午後13時まで時間があった為、王宮か教会へ行こうかと思っていたのだが、朝食のグリーンスムージーにどうやら当たったらしく、それどころではなくなった。

でもいいのだ。何かをし残した場所は、きっとまたいつか来られるというサインだと思うから。なんて、ようやく固形物を食べられるようになったから言えることなんだけどさ。


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