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修理は専門家に任せようという、当たり前の話

 昔から、吹奏楽部には管楽器のリペア業者さんが出入りしていて、楽器のメンテナンスなんかを請け負っていらっしゃいます。吹奏楽の中心は金管・木管・打楽器ですから、これは当然の事です。ところが、コントラバスの修理はコントラバス専門店に持ち込まれているかというとそうでもなくて、扱いは管楽器リペア業者さんに委ねられている事が多い。今回のテーマはここにあります。

 当然、管楽器リペアさんですから弦楽器はフィールド外という事になるのですが、「弦交換くらいならウチがやります」といって弦を全て外してしまって駒と魂柱が倒れてどうにもならなくなって弦楽器店に泣きついたなんて話はたまに聞きます。これらはまだ「何とかしてあげよう」という気持ちからのミスだと思うのですが、最近はとんでもない話をいくつか聞きました。

 コントラバス専門店の10倍近い修理代を請求されたという話。これは本来お願いした修理にさらに頼んでもいない作業までされてとんでもない請求をされたという内容。管楽器リペアさんが預かってどこかの弦楽器店に運び、その人件費運搬費などを上乗せしたとしても高すぎる金額でした。
 弓の毛が古いので毛替えしようとしたら「弓を買い直した方が良い」と弓を買わされたという話は数件聞きました。これに至っては詐欺ですよね。弓の毛替えが出来るのに、なぜ弓そのものを購入しなければならないのか理解に苦しみます。「毛を替えようとしたところ弓本体の傷みが激しくて提案された」という経緯なら理解出来ますが、今回の件については直接指導していたコントラバスの先生が激怒してましたからそれは考えにくいですね。どちらも管楽器リペア店での話。

 注意喚起としてこの事をTwitterに投稿したところ、予想以上の反響があり、この「弓の毛が古いから弓を買い替えた方が良い」という提案をされる事は珍しくないようです。毛替えしといて下さいとお願いして、次回のレッスンに行ったら弓が増えていたなんて話もよくある話のようです。それが安い弓だとしても5万くらいはする訳ですから、そのお金でどれだけのメンテナンスが出来たことか。
 「弦が古いから楽器を買い替えたほうが良い」と提案されたとのエピソードには驚きました。どうやら、思った以上に闇は深いようです。

 私からすれば、楽器や弓に何か問題があるのならなぜ最初に専門の先生に相談しないのか、というところが一番疑問だったのですが、Facebookであるコントラバス奏者の方からこのような意見を頂きました。

 「学校は決まった楽器屋さんで買わなければ予算が使えないところも多いと聞きます。専門店で調整をしたら、それは顧問か生徒さんの実費となって学校の予算が使えないから街の楽器屋さんにお願いするしかないという話をよく聞きます」

 これが事実だとしたら予算の仕組みから見直す必要がありそうです。公立校やコンクールにあまり力を入れていない吹奏楽部は部費も安くてお金が無いのは事実ですが、コントラバスの修理は、大掛かりな内容でなければそこまで高いものではありません。弦楽器を弦楽器店に出す、というのは至極当たり前の発想のはずなのに、なぜこれまで誰も動いていなかったのか不思議なくらいです。それだけ吹奏楽ではコントラバスが軽視されているという穿った見方も出来ますが。

 私が指導しているいくつかの楽器にはとても良心的なリペアさんが入っていて、コントラバスに何かあると私が指定したコントラバス専門店に無償で運搬して下さいます。このように、決して悪質な業者さんばかりではない事は強調しておきたいところです。

 コントラバス専門店の多い関東、関西辺りはまだ良いのですが、専門店の少ない地方に行くとこのような話はかなり耳にします。一度謎の高額請求をされちゃうと顧問の先生方が「弦楽器の修理は高いから後回しにしよう」となって、状態が悪いまま弾かされるから生徒たちも楽しくない、なんて現象がままある。ちなみに先ほど事例を挙げた件は東京都内の話なので驚きました。

 コントラバスの弦にしても、プロなら格安サイトがあって半値近い金額で購入出来る事を知っていますが、学生レベルだとほとんど知られていないので、吹奏楽部はリペアさんを通して定価で買う事になります。一番安いベルカントですら今は5万くらいしますから、これは部活レベルには大きな痛手です。私の指導校に関しては、弦交換の時期になったらこのサイトで購入してもらって、私が弦交換までやってしまうようにしています。

 こんな事が続いているので、今回私が個人的にコントラバスの一般的な修理価格表を作ってみました。 

あくまでも目安で、専門店の中でも金額に高低差あるので数字にするのは難しいのですが、少なくとも10万を超える修理というのはこんな作業なんだな、と知っておくだけで予防になると思います。ついでに弓の毛替えや弦交換の時期の目安、駒の位置や反りについても少し解説を載せておきました。

 学生たちが少しでも良い環境で演奏に集中出来るよう、お役に立てましたら幸いです。
 
  

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