見出し画像

コロナ禍での第2回コントラバスコンテストを終えて

 昨日、僕が主宰する「中学生・高校生のためのコントラバス・ソロコンテスト」の第2回が終了致しました。

画像1

 このコンテストについてのこれまでの経緯はこちら。

《クラウドファンディングで再確認した人の絆の大切さ》
《コントラバス・ソロコンテストを終えて》
《コントラバスコンテスト継続宣言》

 もちろん、これから講評をまとめて、表彰状の印刷をして、副賞含めての発送作業がありますし、スタッフの一人もレンタル楽器の返却に向かってくれていますし、諸費用の支払いもありますので、まだ作業が完全に終わった訳ではありませんが、とりあえずメインイベントは終了といったところ。

【感謝】

 まずは、開催にあたり参加して下さった皆様、生徒さんを送り出して下さった顧問の先生そして指導されているコントラバス指導者の皆様、審査員の北村くん、佐野さん、前田さん、ゲストの菅沼くんと大槻くん、伴奏者の小林くんに原さん、クラウドファンディング等でご支援頂いた方々、ホール確保にご尽力頂いた越川様、素敵なチラシとプログラムを作成して下さった木村百花さん、さらにはご協力頂いた楽器店や企業様、そして当日お手伝い頂いたスタッフの皆様に心から感謝申し上げます。

 実は全国大会前になって「伴奏するはずだった先生が学校から東京行きを禁止され、伴奏者が居なくなった」という参加者がいましたが、専属伴奏者のお二人に相談したら「全く問題ありません」とあっさり対応して下さり、プロフェッショナルだなと感心、感謝の念に包まれました。

 次に、家族には最大の感謝を伝えたいと思います。もともと僕は土日に仕事が入るので普段からあまり小学生の子供たちとの時間を作ってやれないのですが、コンテストの準備が始まるとさらに時間を取られてしまいます。そこにコロナ禍という状況も加わって、この半年一緒にどこかに遊びに行くという事はほとんど出来ませんでした。それでも「大変なお仕事をしているんだよ」と子供たちに言い聞かせてくれていた妻、そして明るく接してくれた子供たちには心から感謝したいと思います。

【コロナ禍での開催について】

 コンテスト開催については、プログラムの「ご挨拶」でも書きましたが、コロナ禍に入ってから開催するかどうか悩んだのは昨年の夏くらいまでで、そこから一度も迷った事はありませんでした。
 僕自身、オーケストラの現場で「やるべき感染防止対策をしていれば感染のリスクは低い」と判断する事が出来ていましたし、「開催する」と言い続ける事が学生さんを勇気づけると思っていたからです。
 もちろん、2週間程度経過しないとこのイベントが本当に無事に終了したのかどうか分からない訳ですが、参加者関係者の2週間前からの検温義務、スタッフのビニール手袋とマスク着用、控室のソーシャルディスタンス、各楽屋の使用人数制限、親睦会も人数制限に飲食禁止と、感染防止対策についてやれる事はやったと考えていますので悔いはありません。

 表彰式こそ口頭での結果発表のみに変更しましたが、もしかしたら表彰式は今後もこの形式で良いかもしれないですね。僕がこのコンテストで重要な位置づけとしているのは最後の親睦会ですから、表彰式を早めに終わらせて親睦会に時間を割くほうが本来の目的としては正しいような気がしています。
 当初、今回の表彰式は予め文面と名前だけ刷っておいて後から金賞、銀賞、銅賞のハンコを押す予定だったのですが、これだと鷲見賞や優秀指導者賞の賞状は別途作成しなければならない。それならコンテストが終ってから賞まで含めて全部まとめて印刷出来た方が事務的にも楽ですし出来栄えも安っぽくならないかな、と思いました。表彰式の方式については改めて検討してみたいと思います。

【審査】
 
 今回から予選動画審査を導入しました。動画を1ページにまとめて公式サイトに隠れページを作り、審査員がパスワードを入れて閲覧出来るようにして、Googleスプレッドシートで審査表を共有する形にしました。全国大会では審査用紙に予選の講評も掲載する事で、審査員が予選からどのように成長しているかを確認出来るようにしました。
 そうそう、表彰状と講評を後から郵送にすると、講評を打ち直して発送出来るので、審査員が講評で誤字脱字を気にしなくて済むというメリットもありますね 笑 第1回では審査員が漢字を思い出せず審査中にスマホで字を調べるなんて事もあったそうです。
 数多くの動画審査が加わった事で審査員の皆様にはかなりお時間を割いて頂く事になってしまいましたが、真摯に向き合って頂き感謝しております。

 審査結果は前回に続き銅賞無し。まあ、そもそもの点数設定がかなり甘いので予想通り。予選を導入した事で全体のレベルが上がり、ちょっと金賞が多すぎたので、その辺のラインは再考するかもしれません。
 ですが、銅賞はなるべく取らないように今のままにしようと思ってます。というのも、全国大会まで来た時点で全員金賞あげたいくらいですし、それからやっぱり銅賞のイメージってなんだかあんまり良くないと思うんですよね。部活動でコントラバスは何となく下に見られている傾向にあるので、結果が出て部活に戻った時に「やっぱり銅賞か」よりも「えっ、全国銀賞なの?もしかして凄いの?」と周囲に思わせる事も計算しての受賞ラインの設定になっています。

 特別賞となる鷲見賞については、「印象に残る演奏をした人」という選考基準通り、自分の音楽をしっかり表現出来る人が選ばれたのだと思います。僕は全く演奏を聴いていないので正直分かりませんが、鷲見賞選考の話し合いでは審査員の皆さんかなり意見をぶつけ合っていました。
 当日ご来場されていたプロオーケストラのコントラバス奏者の方が自身の投稿でこんな事を書かれていたのが印象的でした。

「(自分が賞を獲って当然)という演奏は飽きるし評価もされない事が、そのまま結果に出た事も有意…やはり一生懸命頑張った跡が見える演奏は魅力的でした。私が後世に(大袈裟)伝えたい事です。気持ちや考えは音に出る…それは発する言葉と同じ」

 会場に居合わせたプロのコントラバス奏者たちもこの結果には共感しておりました。技術だけでなく、音楽を表現するという基本的な事をしっかり評価して下さった審査員の皆様には感謝致します。

 またある保護者の方からこんなメールも届きました。

 「全国大会出場が決まってからは、親は出るからには良い結果を!なんて思って子供に色々言ってきましたが、当日会場に出向くと、そんなことを子供に押しつけていたのが恥ずかしくなりました。普通のコンクールなどは、良い結果を求めてピリッとした雰囲気で、押しつぶされてしまいそうな空気なのに、このコンテストはスタッフの皆様の細やかな心遣い、子供達がのびのびと楽しく演奏出来るように懸命に動いて下さっている姿を見て、本当に親にとっても良い経験になりました」

このように音楽の本質、このコンテストの主旨に気づいて下さった事はとても嬉しいですし、温かい雰囲気を作り出してくれたスタッフに感謝ですね。

 実は次回の審査員も一人はオファー済み。僕の開催意図を汲んでくれて、かつこれまでにまだ登場していないオーケストラの方という条件で少しずつご相談させて頂こうと考えております。

【参加者の皆さんへ】

 発表した当初は「参加者が来なかったらどうしよう」と不安になった時期もありましたが、蓋を開けてみれば予選動画審査には前回を遥かに上回る多数の応募があり、涙が出ました。本当にありがとうございました。

 参加者の皆さんについては、おそらく全国大会まで部活停止で練習出来なかった人もいらっしゃるでしょうが、皆さん一生懸命演奏を聴かせて下さいました。多くの事を失った彼らにとって、このコンテストが少しでも目標そして励みになっていれば嬉しいですし、ここで知り合った仲間との交流が刺激となり、今後常に音楽が傍らにある人生であるよう願っています。

【辞退】

 コロナ禍という事で「東京に行くのが怖い」という理由で辞退された方も数名いらっしゃいました。僕としては残念でしたが、そのお気持ちも良く分かります。万が一、というリスクも考えると辞退に踏み切られた決断は致し方ないですね。ある指導者から「私も生徒も保護者も泣きながら辞退の決断をしました」と連絡を頂いた時は胸が痛みました。

 おそらく緊急事態宣言の影響もあって部活動停止になり、練習不足で不安を抱えたまま全国大会に参加された方がほとんどだったと思いますが、本番3日前になって「練習が出来ていないから辞退したい、自信を持って演奏出来るようになってから参加する」と連絡をしてきた参加者がいました。
 普通のコンクールならこのまま淡々と事務手続きをして辞退となるんでしょうが、あくまでも僕個人の主催という事で、「僕らプロでも自信を持って演奏出来るなんてそんなにない。会場はみんな参加者の味方だし、このコンテストは勝敗を決めるのではなく仲間と出会う事が最大の目的。それに練習不足はみんな同じ条件、ここで逃げるのではなく挑戦する選択肢を持って欲しい」とメッセージを送ってみましたが、残念ながら想いは届かず辞退という決断となりました。お母さまから「娘はコロナ禍で楽器に触らない状況が続き音楽から気持ちが離れているようだ」との返信があり、これにはいろいろと考えさせられました。

【僕の生徒たち】

 今回高校生部門で僕の生徒さん7名が予選に参加しました。中にはコントラバスを始めて1年足らずという生徒もおり、予選の結果が出るまで正直ドキドキしていましたが、結果全員が全国大会に進む事が出来ました。
 これは生徒さん自身の努力の賜物であり、そこに僕が少しでも役に立てたのなら幸いです。高校生部門32名のうち7名が僕の生徒というのは嬉しかったですね。

 ただ、僕の生徒さんたちも、音大受験生以外は部活動の生徒なので、学校から指導依頼が無い事には指導が出来ず、一度もレッスン出来ないまま全国大会となってしまった事が本当に残念でした。何度か「動画送ってね」とお願いしてアドバイスはしていましたが、なかなか文字だけでは難しい部分もあり、きちんと仕上げるところまで行かなかったのが悔やまれます。

【座席数制限】

 悔やまれるといえば、今回は座席数制限があって、参加者1名につき1名の保護者しか入場出来ず、伴奏者や引率の先生の入場もお断りしなければなりませんでした。
 自分自身ずっと座席数制限のなかオーケストラで演奏活動をして来たので、ある段階から覚悟は出来ていましたが、現実的にはいろいろ厳しかったです。「何とか入れませんか」とのお声もありましたが、全員お断りしなければならなかった事はコロナ禍とはいえ本当に心苦しく、申し訳ない気持ちでした。ほとんどの方が気持ち良くご協力下さった事には感謝の言葉しかありません。
 ただ、「伴奏者は入れない」とお伝えしていたにも関わらず空いている席に勝手に座っていらっしゃった方も居たようです。モラル、大切にして欲しいです。
 さらに、座席数制限によって保護者以外のチケット収入が全く無かったのは大きな誤算でした。実は今回制限が無ければもうクラウドファンディングをやらずに済む計算だったのですが、もう一度だけクラウドファンディングに頼らなければならないかもしれません。「またかよ」と思われる方も多いでしょうが、本当にコロナ禍での開催は想定外でした。何とかご理解ご容赦頂き、あと一度だけご支援を頂けたら幸いです。

【コンテストから音大へ】

 このコンテストは3月末開催という事で、開催直前に音楽大学の合格発表がありました。第1回のコンテストに参加された方々の「音大に合格した」というSNSへの投稿があり、これまでに分かっているだけで、第1回コンテスト出場者からは東京芸術大学4名、東京音楽大学1名、武蔵野音楽大学1名、昭和音楽大学1名、沖縄県立芸術大学1名の合格者が出ています。
 もちろん、もともと音大受験希望でたまたまこのコンテストに参加した人も多いでしょうから、このコンテストが音大合格者を生んだなどというつもりは全くありませんし、何も音大を目指す人を増やしたくて開催している訳でも無いのですが、実際に「このコンテストをきっかけに音大を目指し始めた」とご連絡頂く方も多く、少しずつ「多少はコントラバス界のお役に立てているのかもしれない」という実感が湧いてきました。この春東京芸大に合格した第1回鷲見賞受賞者からは「次回のコンテストはお手伝いさせて下さい」とメッセージを頂きました。こうした声が無かったら今回僕の心は折れていたかもしれません。
 いずれゲスト演奏で、コンテスト出身者によるコントラバスアンサンブルなどもやったら良いかもしれませんね。

【ボランティアの皆様】

 当日お手伝い頂いたボランティアの皆様にも心から感謝したいと思います。僕の生徒さんたちを始め、第1回に出場してくれた方が「今度は私が力になる番だと思います」と連絡をくれたり、第1回参加者のお母さまも「お手伝いさせて下さい」とメッセージを下さり、今回受付を担当して下さいました。
 さらには、Twitterでボランティアを募集したらすぐに連絡をくださったアマチュアコントラバス奏者の方々、楽器屋さんの紹介でご連絡を頂いたジャズプレイヤーの方、そして本職が楽器屋さんなのに個人でお手伝いの連絡を下さった方もいらっしゃいました。皆さんコントラバスへの愛に溢れていました。
 本当は最後の親睦会にはスタッフも全員参加して頂きたかったのですが、今回は感染症対策で会場の人数制限があった為、ほとんどのスタッフは結果発表終了と共に解散となりました。残って親睦会の受付をお願いした2名は音大生と音高生。スタッフがあってこその演奏会という事を今のうちに知っておいて欲しかったこと、そして彼女たちと同じ音大に進む参加者もいたので、あえて彼女たちにお願いしました。
 今回は初めての会場という事もあって開館からバタバタして、僕の数々のミスもありましたが、スタッフの皆さんの素晴らしいフォローで何とか成立することが出来ました。こうしてボランティアで働いて下さった皆様がいらっしゃるからこそコンテストは成り立っています。ありがとうございました。

【苦言】


 そして、今回、どうしても許せない参加者(というか保護者)もいました。これは別の記事またはYoutubeで取り上げようと思っているので詳しくは書きませんが、本当に信じられないような対応で怒り、呆れました。
 これまでにも何度か書いてますが、このコンテストは、全国大会当日こそボランティアの方々にお手伝いをお願いしているものの、それまでは僕が演奏・指導の仕事の合間に企画・営業・広告・経理・事務まで全て一人でやっています。このコンテストをやったからといって収入なんか無くて、僕自身がボランティアみたいなもの。
 だからこそ参加者とのやり取りなどはなるべくストレスを減らしたいのですが、今回はほんの一部の身勝手な人の行動で何度心が折れそうになったか分かりません。「もう次回の開催を止めようかな」と何度か本気で考えました。ですが、Facebookに愚痴を投稿したら「たった1人に頭を悩ませるより、やる気のある49人の為に頑張って」というアドバイスを頂き、目が覚めました。
 いま、想定外の辞退が起きた時の自分の対応や気持ちの揺れを冷静に顧みて「ああ、まだまだ精神的に未熟だな」と感じます。何かあるたびに感情的になってしまって、「開催出来ただけでも上出来」と考える事が出来なかったのは大きな反省点ですね。
 コロナ禍で連絡事項が多かったというのが今回最も苦労した点ですが、次回は何事もなくすんなり開催出来る事を祈るばかりです。
 
【最後に】

 最後になりますが、このコロナ禍において参加して下さった皆様とご協力頂いた皆様には本当に心から感謝申し上げます。
 僕が一人で事務作業をしている事で、参加者の皆様にはいろいろとご迷惑をおかけした事と思います。毎回反省を重ねながら、もっと無駄のない効率の良いシステム作りを目指したいと考えております。
 第1回よりも精神的にキツく身を削られるような出来事の多かった第2回の開催でしたが、次は何事もなくスムーズにいくことを願って、今はまずゆっくりしようと思います。

 ああ、でも、明日からもうリハーサルが始まる 笑

【追記=コンテストの理念】

 先ほど、コンテストが終ったタイミングで、偶然このような言葉を見つけました。あるサッカーの試合後のアナウンサーの言葉なんですが、「リーグ」「サッカー」を「コンテスト」に、「スタジアム」を「ホール」に置き換えると、まさに僕がコンテストに置いている理念がそのまま言葉として表現されています。
  
「ギスギスしたリーグが世界にはあります。
だけど自分たちのJリーグというものは、
これでいいんじゃないかな、と思います。

誰もが来て楽しい、ファミリーで来て楽しい、
子供たちと一緒に来られるJリーグ。

もちろん一戦一戦はタフな真剣勝負だと思うし、
そういうところから世界を目指していくというのが僕らの国のサッカーだと思いますが、

だけど、Jリーグの中で片方が勝ち、片方が敗れるということがあったとしても、

全力を尽くして戦った後に心を通わせる光景があるスタジアムを、いつも期待したいと思います」

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?