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COVID-19の終息予測とイベント開催の難しさ

 知人から、来年2月の公演が中止になったと聞き、僕が主宰する来年3月のコントラバスコンテスト開催について少し不安を感じたので、過去の感染症の終息までの期間を調べました。

 天然痘やペストは時代と当時の医療技術を考えると外しても良いかなと。近年で考えるとやはりSARSとMERSになるでしょう。結局どれも「コロナウイルス」ですね。もっとも、COVID-19はSARS、MERSとはけた違いの感染者数、死者数を出しているので参考になるのかどうか微妙なところではありますが。
 SARSは2002年11月に最初の症例が出てWHOの終息宣言が2003年7月。実質拡大から終息は半年と言われています。MERSは2012年9月に確認されて未だ終息しておらず、断続的に感染者が報告される小康状態。

 WHOの基準ではウイルスの潜伏期間の2倍の期間、感染者が新たに発生しなければ終息宣言となるそうで、今年5月に日本の医師1346名に行ったアンケートでは「日本国内での終息は2021年7月以降」と回答した方が33.5%でトップ、続いて「2020年8~9月」と回答した方が20%で2位だったとのこと。当然僕としては2位の回答を信じたいところですが、これは間もなく答えが出るでしょうから、行く末を見守りたいところです。

 もしアメリカで続く暴動が収まらず、デモによって感染拡大がさらに続くようならそれだけ終息は遅くなっていくでしょう。逆に、あれだけ密の状態でデモを起こしても感染者が大して増えないのであれば、マスクや三密の意味はあまり無かったとも言えます。その意味で、これから10日後くらいのアメリカの感染者数にも注目しておきたいところです。

 さて、音楽業界も動き始めました。世界的なところで言うと、ウィーンフィルは聴衆を減らしての公演。客席こそガラガラでしたが、奏者はマスクをする事もなく一定距離を保つ事もなく、ステージ上は通常営業でした。これは事前に出演者全員が検査を受け陰性である事を証明出来たからだそうで、とにかく検査に後ろ向きな日本ではこれが期待出来ません。
 また、ベルリンフィルも奏者のソーシャルディスタンスを守りつつ、小編成での演奏会を再開しました。こちらは無観客、生配信。もともとベルリンフィルは「デジタルコンサートホール」という配信システムが確立されているので、ネット配信については圧倒的な強みがあります。
 日本でもコロナが流行し始めた3月上旬に東京交響楽団がニコニコ動画での無観客生配信を実施し、僕も出演させて頂きましたが、これはニコニコ動画を提供しているドワンゴの社長が東響の理事だったという関係性があってこそ成立した事で、他のオーケストラではなかなか難しいのではないでしょうか。先日東京交響楽団はニコニコ動画にチャンネルを開設し、日本のオーケストラとしては配信の先端を走り始めました。既にいくつかの楽団はYoutubeにチャンネルこそあるもののネット配信に積極的ではなく、今後日本のオーケストラが配信にどのような姿勢で臨むのかも一つの焦点になるでしょう。
 その日本でも、いよいよオーケストラが活動を再開し始めました。東京交響楽団、日本フィルといった特に存続が危ぶまれている団体から動き始めたのは象徴的でもありますが、無観客の生配信投げ銭システムにする団体が多いですね。入場者数を減らしての開催に踏み切る団体もありそうですし、専門家を招聘して演奏会におけるベストな環境を検証する団体もあるようです。

 僕は感染症については全くの素人ですし、何の説得力もありませんが、個人的には、クラシックの客層はとにかく静かですし、全員がステージに向かって座る、つまり同方向を向いているので、客席での感染拡大の可能性はかなり低いと考えています。唯一懸念されるのは高齢者が圧倒的に多い客層でしょうか。吹奏楽については、客層は比較的若いですし、コンクールでの演奏終了後のブラボーさえ我慢して貰えればリスクは低いと考えます。
 また、ステージ上においては、管楽器でのエアロゾルによる感染の危険はほとんどない事をバンベルクのオーケストラが検証によって証明しています。弦楽器だって向かい合う配置のセクションは無い訳ですから、正直ステージ上でもそれほど危険はないと言える。もしかしたら客席とステージの間には薄いアクリル板など置いたほうが良いのかもしれませんが、少なくとも本番中の感染の危険は相当低いのではないでしょうか。
 むしろクラシックの演奏会において危険なのは演奏会の前後や休憩中にあるのではないか。オーケストラならリハーサルでのやり取りや楽屋での行動、聴衆ならロビーやトイレでの行動には注意する必要があるかもしれません。ですが、マスク着用で自らが感染源となる事はある程度予防出来ますし、体調の悪い人は演奏会に行かない、手洗いやアルコール消毒など当たり前の事を徹底するだけで演奏会は開催出来るんじゃないでしょうか。
 こうしていくつかのプロオーケストラが動き始めた事で、「クラシックは安全だ」という証明が出来れば何よりですし、その結果は僕自身の仕事にも大きく関わってくるので、これからしばらくの間は業界の動向と数字を注視したいと思います。

 ただ、吹奏楽部など学校関係となると、部活の指導者なら預かっている子供の安全を最優先する事は当然理解出来ますし、僕の場合は中学生・高校生が主体となるので、今から無観客・生配信の可能性も模索しながら準備をしなければなりません。
 吹奏楽コンクールの中止にしても、子供が危険だというだけでなく、無症状の子供がウイルスを媒介する可能性も含めるとこの判断は致し方ないところで、賛同しています。部活絡みの場合、強行開催してクラスターにでもなったら今後二度と開催出来なくなるリスクもありますからね。

 さて、既にワクチンが開発された時に備えて各国で必要量を確保しようと競争が始まっているようですが、ここで全てにおいてスピード感のない日本政府が勝てるとは到底思えませんし、ワクチンが開発されたとしても日本で供給されるまでにはある程度の期間が必要でしょう。やはり、コントラバスコンテスト開催には慎重な姿勢で臨まなければならないとは思います。
 現時点では中止という最悪の事態を想定しつつも、無観客での配信、または入場者数を減らしての開催といくつかの選択肢を考慮しつつ、準備を進めていきたいと思います。

 全てのイベント主催者の皆様にとって、一刻も早く終息が訪れますように。
 

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