見出し画像

レッスン行脚


2019年に入り、すぐに金沢と北海道にレッスンで伺いました。

金沢はもともとオーケストラの友人が指導していたのですが、多忙で日程が取れなくなり、私に「代わりに行ってくれないか」と連絡があったもので、2日間朝から晩まで中学、高校、大学と9校みっちり指導しました。

北海道は3日間で旭川商業高校と留萌高校、留萌中学校の指導。こちらは高校吹奏楽部の先輩が留萌高校の顧問を務めている関係で「まともなレッスンを受けさせた事がないから、一度指導に来てくれ」とお願いされて伺ったものです。

どちらもレッスンが終わった時に生徒たちが「もっと早くお会いしたかったです」と言ってくれたのが本当に嬉しかったのですが、特に北海道では印象に残る出来事がありました。金沢は数が少ないとはいえ定期的にレッスンがあった訳ですが、北海道の生徒さんは「レッスンはこれが初めて」という生徒ばかり。それにも関わらず、高校生は軒並み基礎がある程度出来ていたのです。

「本当にレッスン受けた事ないの?どうやって練習してきたの?」と聞くと、自分でインターネットなどの情報を調べてコツコツやってきたのだそうです。これには考えさせられました。
もちろん、他の地域でもレッスンを受けた事がない生徒の指導をした事はありますし、そのほとんどは基礎が全く出来ていない状況でしたから、たまたまこの時伺った学校の生徒さんたちの探求心が強く学習能力が高かったのかもしれませんが、それにしても、一切指導を受けずにここまで楽器を鳴らせているのは驚きでした。

私は吹奏楽コンクール全国大会常連の強豪校のコントラバスパートを何校かほぼ毎月指導しています。正解のない指導法の中で、私はなるべく生徒自身に考えさせるようにしているつもりではありますが、やはり練習の課題を与え方法を示している以上、生徒たちが自分で悩み考える時間は少ないのではないかと思います。今回の経験から、より生徒たちに自主性を求め思考するような練習方法を伝えていけたらと強く感じました。

さて、留萌高校のレッスンでは、「部員のみんなが先生の演奏を聴きたいと言ってます、お昼に部室に集合してます」という無茶ぶりがありました。
日常的にソロを演奏している訳でもなく、むしろオーケストラプレイヤーのスペシャリストという自負を持ってやってきただけに断りたかったのですが、生徒のお願いは断り切れず、仕方なくベートーヴェンの第九のレチタティーヴォ、カプッツィの協奏曲の第1楽章、ディッタースドルフの協奏曲第1楽章とカデンツァを弾いてみました。学校の楽器でしかも五弦という条件ながらまあそこそこの演奏は出来たかな。
 
その演奏後、生徒たちが「先生に感謝の気持ちを伝えます」といって立ち上がり、突然の合唱が始まりました。曲は「夜明け」。これは旭川商業高校の吹奏楽部の卒業生が顧問の先生に宛てて作詞したものだそうですが、メロディーも歌詞も感動的な曲のうえ、生徒たちの声って胸に響くんですよね。涙を堪えながら聴いていましたが、指導したコントラバスの生徒が泣いているのを見てこちらもグッときてしまいました。僕一人のために歌ってくれたこの瞬間、生涯忘れることはないと思います。

指導に行ったはずが、いろいろと学ばされた数日間となりました。
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?