"THE TEAM"を読んで感じたこと

今オンライン上で話題になっているリンクアンドモチベーション取締役麻野さんが書かれた"THE TEAM 5つの法則"という書籍を早速読ませていただきました。(また当社の部長陣にも配布させて貰いました)
千葉道場でも何度かご一緒したことがあり、組織や人事課題について徹底的に向き合い、最前線で課題解決をしてきた麻野さんは大変尊敬している経営者の一人です。今日は書籍を読んで感じたことをツラツラと書いておこうと思います。

書籍の構成

"THE TEAM"は優れたチームとはなにか?またチームのパフォーマンスを最大化させるための法則とはなにか?を5つの観点から説明しています。その5つの法則はわかりやすくABCDEで分類されています。

A: AIM (目標設定)
B: BOARDING (人員選定)
C: COMMUNICATION (意思疎通)
D: DECISION (意思決定)
E: ENGAGMENT (共感創造)
 
それぞれの項目で具体的な企業・他業種での事例やリンクアンドモチベーション社自体で実践されてきたことが述べられていて面白いです。(モチベーションクラウド事業が目標設定を"数字目標"から"意義目標"に転換させた過程で生まれた事業アイデアだったというのははじめて知りました)
中でもDECISIONについて書かれた章が個人的には刺さったのでそちらについて深掘りしてみます。

独裁か、合議か

会社や組織で意思決定を行っていく上で独裁=トップダウンでやるのか、合議=民主的に意見を集めて行うのか、はそれぞれメリット・デメリットがもちろんあります。また、会社のフェーズや社員の状態などで適切な手法は変わってくると思います。この章の中で麻野さんが"成果をあげた独裁的なリーダー"としてシンガポールの初首相だったリー・クアンユーの事例を出しています。
リー・クアンユーは一代でシンガポールをほぼゼロの状態から一人あたりGDPで日本を超えるレベルにまで経済成長させたリーダー。何も資源がない、まさに一つのスタートアップがゼロからプロダクトと組織を作り、大化けしていくようなストーリーを彼は国という単位で実現しました。
ただリー・クアンユーは民主主義国家のシンガポールにおいて常に独裁的に政策を推し進めてきたといいます。外資系企業誘致のためのインフラ作り、厳しい能力主義的な選別教育システム・英語エリート教育等を次々と導入。それぞれの政策に対して、自国の産業が育たないのでは?人材の教育機会が不平等になるのでは?といった反論がある中で、野党を黙らせてダイナミックに政策を推進してきたことでシンガポールは急速に成長をして行きました。また同氏は「どの国も経済発展の後に民主主義があり、民主主義によって経済が発展することはない」とも述べています。
この章を読んでいて、意思決定は「正しい/正しくないか」ではなく、「強いか/弱いか」だなと。チーム内で議論をし尽くすことは大事ですが、一人の強く・速い意思決定、またその後にその選択を正しくする実行力がこの不確実性の高い環境では必要だと改めて思いました。

基準と規律

また他の章では組織の中における基準=スタンダードの重要性についても書かれています。心理学的に人は組織の中の他者が取っているレベル感に自身のパフォーマンスを合わせる傾向があるという話(参照点バイアス)。
トップ自身がそのロールモデルになることも大事ですが、あえてそういった行動を取るメンバーを組織内に配置し、スポットライトを当てることも同様に重要です。ルールを多く作り、人の行動をコントロールするのではなく、その行動を当り前に取る基準や規律を作ることで組織を自立駆動させていく。
この話に関連して、バルセロナやマンチェスター・シティの監督をするグアルディオラ(ベップ)の存在を思い出しました。

Amazon Primeでのこちらのドキュメンタリーを見た際にも感じましたが、グアルディオラはスター選手を普通の選手と同様に扱います。サッカーにおける戦術浸透はもちろん、日々の小さな習慣(食事制限、練習への時間厳守etc)にこそプロ意識を選手に徹底して求めます。規律を要求し、その基準に満たさない場合はどんなに優秀な選手も試合に出さない。(これは元日本代表の岡田監督も同じことを言ってました。選手を特別扱いしないと腹を括ると、監督の覚悟は自然と選手に伝わると。)
勇気がいるやり方ですが、その規律があるからこそ世界中の名選手が集まった際に、彼らが個人のエゴやプライドを捨て去り、共通の目標に向かうチームとしての強さが増す。どんな組織にも基準や規律は必要ですし、まずはトップから変わることの重要性を再認識します

まとめ

THE TEAMはチーム・組織作りにおける大事なポイントを平易な言葉でまとめている良書です。経営者や人事責任者だけでなく、幅広い層に向けて麻野さんがメッセージを届けようとしているのが文章から感じられます。
トップやマネジメントレイヤーから変わることで組織は変化していきますが、最後の章でも書かれていますが、結局はメンバーひとりひとりの意識と行動が変わらないと組織は本質的には変わらない
制度や仕組みの導入はあくまでもスタートでその継続的な改善が必要。また、やる気がある本気の人間に機会が与えられることで、その熱量や危機感が組織内に伝搬し、事業がドライブされていく。改めてそんな組織でありチームを作るぞ、と思える書籍でした。
書籍の中に書かれている内容で実践出来ていないことも多いので、自戒の念を込めてのエントリーでした。

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