企業の"らしさ"を、どう表現するか?

2019年6月11日に、ドコモ・イノベーションビレッジで、『イノベーションを世界に伝えるために身につけたい、共感を得るためのPublic Relations』と題した勉強会を開催しました。

ゲストに株式会社PR Tableの久保圭太さんをお招きし、ベンチャー、中小、大企業を問わず、「共感」を得るためのPublic Relationsのあり方やコンテンツのつくり方、社員のまきこみ方などについてお話頂きました。

まずは勉強会の雰囲気と流れをダイジェスト動画でご覧ください。

勉強会開催の背景と問題意識

この勉強会を企画した背景には、私が関わるベンチャー、中小、大企業のPublic Relations(以下、PRとします)に関する問題意識がありました。(ちょっと長い問題意識ですがお付き合いください)

私自身は、mogcookという魚の離乳食をつくるローカルベンチャービジネスを立ち上げたり、1Rollという動画制作・配信ソリューションのベンチャー企業に所属しています。もう一方で、1Rollを利用してくださっている中小企業の経営者、大企業の広報担当者(主に、コーポレートコミュニケーション担当)の方のサポートも行っています。

この一年、動画を使ってブランディングや広報活動、採用広報活動を行っていきたいとご相談いただく機会が増えました。
広報活動であれば、テキストや写真中心のプレスリリースを動画に変えれば、もっと注目されるんじゃないか。
採用広報であれば、給与や福利厚生などの”スペック情報”だけでなく、経営者メッセージ動画などを見せれば、他社と差別化できるんじゃないか。
インナーコミュニケーションであれば、長いテキスト情報やプレゼン資料は読んでもらえないので、動画にすればもっと見てもらえるんじゃないなか。

そう考えてご相談いただくものの、企業規模や目的を問わず壁になるのが、以下の3点です。
・誰がその動画を制作するのか?
・その動画のクオリティは高くないといけないのではないか?
・自社ならではのコンテンツをどう制作すればいいのか?

1Rollは月額5万円で動画が制作し放題というサービスで、業種や用途に応じたテンプレート(絵コンテや音楽、効果音が予め組み込まれたファイル)があります。そのため、動画制作経験やスキルがなくても、ビジネスで使用できるクオリティの動画を制作できるのですが、PRで使用する動画となると、テレビCMのようなクオリティでなければいけないんじゃないか。上長の承認を得られるだろうかという心配が出てきます。
実際、企業紹介動画や企業の周年記念動画の多くは、キャストを起用し、しっかりと予算をかけて制作したものがほとんどです。しかし、そうした動画制作にはコストがかさむため、継続的にステークホルダーに対して動画で情報を届けようとすると、何度も発注して制作することはできません。
社長や社員が自ら動画を制作、動画に出演することでコストを抑える必要がありますが、そこでネックになるのが「クオリティ」の問題なのです。

三つ目の「自社ならではのコンテンツ」というのはさらに難題です。
採用広報であれば、もともとテキストだけだと同じ給与25万円のところを、経営者メッセージや先輩社員インタビュー動画をつくることで差別化しようと考えているはずが、「しゃべっていることは他社も同じなんじゃないの?」というブレーキがかかります。或いは、「弊社は風通しのいい社風で・・・」という動画の中のメッセージも、セリフを読み上げたような言葉だと、かえって視聴者に敬遠されてしまわないか。
じゃあどうする?
うちの会社ならではの情報って何があるんだろう?
と突き詰めていくと、「あれ?うちの会社って他社と何が違うんだっけ?」という強烈な自己批判が起き、そこで手が止まってしまうのです。

このような課題を抱え始めたときに久保さんと知り合い、久保さんがお話されていた企業の“らしさ”というキーワードにこの問題を解決するヒントがあるように思い、今回の勉強会を企画した次第です。

企業の“らしさ”って何だ?どうつくるんだ?

企業の“らしさ”について書く前に、勉強会でお話された久保さんの要旨をご紹介しましょう。様々なビジネスが模倣され、参入コストが相対的に下がり、競合他社が増えているという状況。そして、国内の人手不足に加え、外資系企業の参入による採用難という状況をふまえ、久保さんからは以下のような流れでお話をいただきました。

・世のなか、“モテ”ない企業が増えてきている。
・「好きです。」と言われる企業にならなければならない。
・そのための手段としてPRがある。
・PRとは広告、宣伝、プロモーションだけでもなければ、メディアリレーションズだけでもない。
・PRとは、組織とその存続を左右するパブリックとの間に、相互に利益をもたらす関係性を構築し、維持するマネジメント機能。
・企業、行政、学校、NPOなどあらゆる組織が、それを取り巻く多様な人々(ステークホルダー)との間に、継続的な“信頼関係”を築いていくための思考・行動のこと。
・すなわち、ステークホルダーとの良好な関係構築。
・ステークホルダーとは、クライアント企業や株主、メディアだけではない。
・自社サービスのユーザー、地域社会も含まれる。
・社員や社員の家族もステークホルダーだ。(←ここが大事)
・今までは、メディアを通じて、ステークホルダーに情報発信することや、第三者の評価による“空気づくり”がPRの主流だった。
・これからは、「好きです。」と言われるための「会社らしさ」。その「会社らしい表現」が求められるようになる。

“らしさ”。

これは冒頭の問題意識で書いた「うちの会社ならではの情報」を発信するための核になるものだと思います。
でも、“らしさ”ってどうつくるんでしょう?CIのように外部のデザイナーに依頼してつくるものなのか。日々の業務のなかから醸し出されてくるものなのか。久保さんのお話を聞きながら湧いてくる疑問を頭に止めながら、講演を追っていきます。

・「好きです。」と言われるために、マス的な価値観だけではなく、多様な「個」の価値観が重視されるようになる。
・企業は個の集合体であり、(インターネットが普及したことにより、今や)個人がメディアとなる時代になった。
・広報担当以外の社員も日々さまざまなステークホルダーとの“窓口”になっている
・つまり、「社員」を通じてステークホルダーとの関係構築を行っていく必要性がある。
・そのためには、自分たちの“らしさ”を社員にしっかり伝えなければならない。
・そうすることで、社員が自分たちの会社のことをクライアントや家族などのステークホルダーに伝え、それが結果的に社会に広がっていくことになる。
・社員ひとりひとりがPRパーソンであるといっても過言ではない。

ここでのキーワードは「社員」、「社員ひとりひとりがPRパーソン」になると思います。そして、“らしさ”は会社から社員に伝えるものということでしたが、コンテンツを制作したり、それを伝えるスキルや経験のない社員に、そうしたことができるのか?という疑問が湧いてきます。

久保さんの講演を再び追いましょう。

・“らしさ”を伝える手法は、プレスリリース、メディアインタビュー、ソーシャルメディア、オウンドメディア、社内報など様々ある。
・そのキモとなるのが「言語化」。
・言語化とは、≒「ストーリーによる自社アセットの見える化」。
・ただし、ただ「風通しのいい会社」と言うのは言語化になっていない。
・「どうして」風通しのいい会社なのか、「どうして」そういう会社にしたのかという背景や、風通しの良さを象徴するようなエピソードや制度、そのように働いている社員を発信する必要がある。
・誰が、どのように?というWhatやHowの情報は共感度が浅く、なぜやっているのか?というWhyの情報は共感度が高くなる。
・このWhyの情報ネタは、起業のエピソード、プロダクトへの想い、社内制度の導入背景、社員紹介、顧客の声など、社内にいくつも転がっている。
・これらの情報をストーリーにして届けよう。(※ちなみに、このコンテンツ制作と流通に適したソリューションがPRTable)

そうか。Whyの情報を届ければいいのか。
Whyの情報はネタは、起業のエピソード、プロダクトへの想い、社内制度の導入背景、社員紹介、顧客の声などでいいのだな。それならうちの会社にもあるぞ!
と思ったのも束の間、ちょっと待てよ、と。
こういう情報こそ「他社も持っているんじゃないの?」と思いませんか?

そうした情報の数がわずかしかなければ、大して他社と差別化できないでしょうが、多様な個人によって発信されることで。また多様なコンテンツの形式によって届けることで、他社との差別化、すなわち“らしさ”を出せるようになるんじゃないでしょうか。

久保さんは講演のなかで、「発信」ではなく「表現」。“らしさ”を表現する形式は、テキストや写真だけでなく動画でもいいし、社内制度やイベントなどでもいい、と話されていました。PRの主要手段をプレスリリース一択にする必要はぜんぜんないということであれば、リリースを書けない(或いは各権限のない)社員でも、異なる形式でPRパーソンになれます。

多様な個々の社員による表現。多様な形式による表現によって、“らしさ”が醸し出されてくるイメージが少しずつ湧いてきました。
その一方、また新たな疑問が湧いてきます。
多様な個々の社員がPRパーソンになってステークホルダーに情報を届けようとしたとき、いったいどこまでそのクオリティや内容をコントロールできるんだろう?バイトテロや内部告発(これは不正を糺す意味であれば社会的に歓迎すべきことですが)などのリスクがあるなか、個々の社員の情報発信をどこまで許可・許容するのか。また、そもそも社員が主体的に動いてくれるようになるために、どのように働きかければいいんだろう?どのように巻き込んでいけばいいんだろう?

こうした疑問が私だけでなく、他のみなさんにも浮かんでいるであろうところで久保さんの講演は終わり、勉強会は「MVQ」という小グループで聞きたい質問を出しあい、最も講師に聞きたい質問を選んで答えてもらう時間に移りました。この質疑応答リストは下記のスプレッドシートで公開していますので、ぜひみなさんの参考にご覧ください。
(空欄の部分は、順次久保さんが回答を記入くださるとのことです。ありがたい!)

“らしさ”はコントロールできるのか?

質疑応答を聞きながら考えていたのは、“らしさ”はコントロールしきれないな、ということです。
創業者や代表取締役の中にある“らしさ”と、デザイナーの“らしさ”、セールス担当の“らしさ”、カスタマーサポートの“らしさ”は微妙に異なっているはずです。
これまで広報部が主に情報の発信源であった時代ならいざ知らず、今や誰もがインターネットで情報発信できるようになった時代に、マニュアルのような“らしさ”は存在し得ないのではないでしょうか。
今回の勉強会のタイトルにある「共感」は、“らしさ”への共感であって、その“らしさ”は送り手と受け手の間で、表現された情報の内容を通じて共感を得るという図式になります。

そして、勉強会で話されていた社員もステークホルダーであるという考え方は、この送り手と受け手の間に、社員が入るということです。

このように関与する人間が増えれば増えるほど、管理・コントロールする難易度は非常に高くなります。であれば、絶対に外せない核となる思想や信条を策定し、社員と共有したうえで、その表現方法は社員に任せるという手を取った方が、管理コストの削減という意味でも、“らしさ”がステークホルダーに刺さる可能性を豊かにするという意味でも良いのではないでしょうか。

ブランディング、採用広報、コーポレートコミュニケーションにおける動画活用について

さて、今回の勉強会と上記の質疑応答タイムを通じて、私がもっていた問題意識は、いったん以下のような感想と新しい問いに変わりました。
私の問題意識は以下の3点でした。

ブランディンや採用広報、コーポレートコミュニケーションにおいて、PRの手段として動画を使用するにあたり、
・誰がその動画を制作するのか?
・その動画のクオリティは高くないといけないのではないか?
・自社ならではのコンテンツをどう制作すればいいのか?

これに対する感想と新しい問いは下記になります。
・社員一人一人が動画制作した方がいい。
・最初は顔出しを嫌がる社員の方がいるので、旗振り役の社長なり上長が率先して動画をつくる(或いは動画に出演する)。
・動画のクオリティ(演出やライティングの技巧)よりも、“らしさ”が出ているかどうかを公開基準にしてみる
・その“らしさ”は一発の会社紹介ムービーでは醸せないので、多様な社員が関わって、まずは数多く撮影して世に出してみる。
・そうした積み重ねが、“らしさ”を醸し出すことにるながる気がする。

この仮説を実践されている企業を、下記の記事で紹介しているので、よろしければご覧ください。

インナーコミュニケーションや社内報(動画社内報)などの活用事例はこちらのnoteにもありますので、こちらもよろしければ。

久保さんはTwitterでPublic Relationsについて様々な情報発信をしらいらっしゃるので、こちらもぜひチェックください。


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