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【9】母親の覚悟は伝わったのに…

数年越しに覚悟ができた母親は、同胞さんへ「ひきこもり支援センターに相談へ行っていた」と、ようやく伝えることができました。
相当な反発を食らうだろうという予想に反して、意外にも同胞さんの反応はうすいものでした。

これに乗じて、同胞さんも支援センターへ行ってみないかと提案したところ、やはり最初は例のごとく「自分には関係ない、行っても無駄」と拒まれましたが、日が経つにつれ、その提案を受け入れる姿勢へ軟化していきます。

そして、同胞さんが「行ってもいい」と支援センターへ行くことを承諾してくれたのです。

ことごとく行政の相談窓口を批判していたのに、ものすごい進歩、暗闇に小さな光の筋が走る瞬間を感じました。
涙した母親がしてくれた覚悟が、同胞さんにも「自分のために提案してくれている」と伝わったんだと思います。
だからこそ、重たい腰を上げてみよう、ただでさえ人とはあまり関わりたくないだろうに、初めての場所へ行ってみようと、思ってくれたんだと思うのです。

ついに同胞さんは、ひとりで支援センターへ出かけていきました。
母親も心配だったようですが、ひとりで行きたいという同胞さん本人の意向に沿いました。
支援センターから帰ってきた同胞さんは、相談員さんに好感を抱いたのか、次の面談の予約をしたと母親に報告しました。
それから複数回、支援センターへ通ってくれるようになりました。

一方で、これまで続けてきた家族面談は、相談員さんから急に終わりを告げられました。
陰でコソコソ家族面談を続けると、本人と支援センターとの信頼関係に悪影響が生じるからだそうです。

支援センターで何が行われているか、家族としてわからないまま本人を支えるのは難しい。本人に直接聞いたとしても、家族の過剰な期待と捉えられることを恐れて、話題にできない。万が一、本人が通所を自己中断した場合はどうするのか。だから、本人了承のもと家族面談を継続してほしい。

そうお願いしましたが、信頼関係への悪影響という理由だけで押し切られ、本人が通わなくなったら家族へ連絡するからと、一切応じてくれませんでした。

このことが、わたしにとって支援センターに対する信頼感を大きく損ねるきっかけとなりました。

そして、同胞さんが支援センターへ行ってくれたとはいえ、侮れないことも心得ていました。
相談員さんとの相性次第では元の木阿弥になりかねないと思っていたからです。同胞さんの今回の行動は最後のチャンス、今度こそ次はないと。

だから、同胞さんには、支援センターへ定期的に通えることを最初の目標として、ゆっくりでいいから、家族以外の誰かと、信頼関係を築いてほしいと思っていたのです。

支援センターへ数回通いましたが、侮れないという予感は的中してしまい、結局行かなくなってしまいました。
以前、同胞さんが相談窓口へ行った時と同じ、「行っても無駄」という言葉とともに。
母親は同胞さんへ理由を尋ねても定型句で返される、いつもの構図、元の木阿弥です。

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