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西尾昭二 合気会師範

入身一足
――勝負は触れ合う前に決まっている――

合気道が真の武道であるために

「大先生は触れ合う前に勝負は決まっているとよく言われました。
 やはり合気道は、その時すでに相手を的確にとらえる、
 相手の攻撃を食らわない位置にはいってなきゃいけないんです」

 本誌では、合気道の可能性の実現をテーマに、原点である盛平翁に戻ることを提唱しているが、すでに20数年前より、合気道から武道性が失われる傾向に危機感を抱き、合気道を真の武道としてとらえることを強調している合気道家がいる。それが、今回登場いただいた西尾師範である。本誌編集長との会見を通じ、師範の合気道への思い、その剣、杖へ通じる“当て”“入身一足”の理念の奥深さを浮き彫りにし、あらためて「武道・合気道」についての問いを読者に提供したいと考えるものである。

(取材 平成15年2月28日 取材:スタンレー・プラニン/編集部)
※所属や肩書きは、季刊『合気ニュース』136号に掲載当時のものです。

柔道にカムバックできるかなと思ってはいった合気道

―― 一般に合気道稽古と言いますと体術に集中しますが、西尾先生の合気道を初めて目にした方は、当身あり空手のような動きあり、柔道の動きもあり、剣杖もありで、“これは合気道?”と戸惑われる方もおられるかと思います。どのような経緯でこのような稽古を始められたのでしょうか?

 僕は初めに柔道にはいって(昭和17年)、講道館の4段の時に空手の袖山先生(袖山豊作 武徳会の空手師範 日本拳法神道流空手術の小西康祐師範の師範代も務めた 小西師範は植芝盛平と交流があった)と知り合って空手の道場にも行ったのです。昔の柔道は今のように重量制がない時代ですから、僕みたいに身体が小さいのは不利だった。空手なら身体の大きさも必要ないなということで、柔道と併行して空手をやるようになったのです。
 ある日、袖山先生が「世の中には化け物みたいな先生がいるよ」と言われて、こういう話をしてくれました。

「僕が小西先生に連れられて道場へ行って演武を見た時、なんだ八百長じゃないか、と思った。そしたらその先生は『ちょっと突いてきてみぃ』。むっとして、『ほんとにいいんですか』と聞くと『どうぞ』と言う。先生はくるっと後ろを向いて歩き始める。『このじいさん、人をくってるな』と思って後ろから突いていこうとしたとたん、先生は振り向いて『どうした?』。 先生は歩きながらしゃべっているから距離があいてしまう。また突いていこうとすると『どうした?』。声をかけられるたびに身体が止まってしまう。そんなふうにして道場を二周りしてしまった」(笑)。

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