見出し画像

デザインサークルがオンライン学祭でつなげてわける話

外はぶるぶるこたつはぬくぬくの候、皆様いかにお過ごしでしょうか。
ふとんに大学があればいいのに。2019年度入会のしばです。

年も明けてしまったのですが、今から遡ること約2ヶ月、駒場祭の話をさせてください。
こういう振り返りは年末にやるものなんですが…LINEにDiscordに、あけおめを連呼してもぐもぐみかんを食べてるうちにそんな機会は失ってしまいました。新年早々の振り返りに少々お付き合いを。

画像1


テーマ設定までの経緯

ご存知新コロことSARS-CoV-2があいも変わらず暴れ回ってくれたせいで、9月の五月祭(!?)に引き続き駒場祭もオンラインでの開催になりました。

とはいえオンライン開催の事実が判明したのは夏が終わってから。駒場祭の準備はまだまだオフラインの可能性を残した時期に始まったのでした。

呑気に駒場祭できんのかね〜なんて言っていたアブラゼミ・クマゼミ合同ロックフェスの季節。
同期からの単刀直入すぎるDMが来たのは7月25日のことでした。

2021-01-15 15.02のイメージ

さて大変です。オンライン開催の経験は五月祭のみ。そしてなんとこの頃まだ五月祭は開催されていません。五月祭なのに。私たちは計画段階の五月祭を参考に駒場祭の準備を始めることにしました。去年の駒場祭をやった先輩・同期にも話を聞いて、手探りの中で企画が始まります。とにかく先例は偉大。

まずは意思決定を行うadmin(=正副の責任者)とビジュアル・フォント等ブランディングに関わる仕事を行うbranding(トートロジーの極み)を組織します。8月に入り、ロードマップを定めた上でテーマ選定に入りました。

ところで、参考にしていた五月祭でdp9は何をしていたのかといえば、「メリハリ×デザイン展」と題して、五月祭特設ページ上で色々なメリハリ(色、音、昔話など…)を体験してもらう展示を行っていました。(昔話については2020年度入会のユンくんがこんな記事を書いてくれています。こちらもぜひ!)

この五月祭のテーマ選定は「コロナで失われたメリハリについて考える」という趣旨だったのですが、五月祭同様に新コロ被害者の会の一員である駒場祭としてもどうにかこの感染症と絡めた展示を行いたい…そんなことを思っていました。この状況について、五月祭と違う視点で捉える。例えば、「メリハリ」などの名詞ではなくて、動詞でテーマを考える。

そうして考えるうちに思いついたのは「つなげる」、そして「わける」でした。

2021-01-15 15.07のイメージ

当時のメモ


実はこれ、副責任者と全く同じことを考えていたなんていうテレパシー案件だったのですが、それはともかく。

テーマは決まりました。でもまだ大きな問題が残されています。駒場祭では例年飲食店をやっていたのですが、オンライン開催の可能性の濃い中で全く異質の企画を具体化しなくてはなりません。webページ上での企画のために効率よくコンテンツ制作を進める方法を検討しました。

他のメンバーとともに話し合った結果、駒場祭を各自でバラバラに進めていた自主的活動である「PW(プロジェクトワークス)」の着地点にすることが決定。PWは何らかの課題感に対して有志が集まり、オリジナルシャツを作ったり、プロジェクションマッピングをやったりと思い思いの方法で応答する自主的な活動です。この枠組みを、駒場祭を目標としたコンテンツ制作活動に定義し直して利用することになりました。同時に駒場祭もこうしたPWの総体として定義されていきます。スイミーみたいで可愛いですね。

こうした経緯から...

駒場祭の企画=「つなげる、わけるを軸に、複数のPWを考えること」

になっていきました。

画像4

わたくし謹製の超わかりやすい図



企画の具体化

PW企画を形にするために、8月末にはMTGでdp9全体によるブレインストーミングを実施。個々のメンバーが感染症の流行下で抱える問題感を共有するため、MTG参加者を二人ずつのグループに分けた上で一対一のインタビュー形式が取られました。メンバー同士で「つなげる」「わける」に関する問題を聞き出し、スプレッドシートにまとめていきます。この後、どの問題に共感したかをシートに書き込み、投票してもらいます。こうして「多くの人が共感するような、つなげる・わけるに関する諸問題」が浮かび上がるだろう、という計画です。

こうして出てきた企画案のうちで、実行されたのは3つ。

「授業や遊びの後の余韻がなくなってしまった…」
①「帰り道」を作る
授業や飲み会などの遊びがオンラインになったことで、「切断」すればいつでも「帰る」ことができるようになった。しかしそれはデジタルなもので、談笑しつつ三々五々帰っていく余韻は失われた。動画、文章など媒体を問わず失われた「帰り道」を表現する。

 「人やモノとの偶然の出会いがなくなった!」
②まちの物体X
外を出歩くことが少なくなり、あるいは人と会う機会が減ったことにより、目的外の偶然の「出会い」を得ることが少ない日々が続いている。こうした「セレンディピティ」を新しい日常に提供するため、街中で見つけた正体不明のもの、奇妙で面白いもの−「謎の物体X」を投稿できるサイトを立ち上げる。

「感染対策ではわけることは大事だけど、敏感になって分けすぎても対立を煽っちゃうよね..」
③わける・わけないゲーム
何かを十把一絡げに語れば、誤解を招いたり見落としができる。分類しすぎると、差は枝葉末節になって全体が見えづらくなる。わけたり、わけなかったり、程よく「わける」とはどういうことか探るミニゲーム群。

お、いい感じですね。ちょっと説明文がシラバスっぽいけど…。

これに加えて、以前から進んでいた「アイソメトリックイラストを描く」PWを合わせ、4つのPWで駒場祭を構成することに。


あーだこーだと色々言ってるうちに、brandingの2人の1年生によってメインビジュアルが形になってきました。仕事が早くて助かる。
モチーフになったのは「磁石」
それぞれの人やモノが中立ではなく磁性を帯びていて、組み合わせによっては「つなが」って、或いは「わかれ」てそれぞれに最適な距離を保っています。二色のコントラストがあるのも、「つなげる・わける」の間の二項対立を表すのに好適。つなげる=CONNECTとわける=DISCONNECTの中にはNもSもあるじゃないかということで、NとSをくっつけたりして動きを与えていきます。branding、さては君ら天才だな??

画像5

最高のメインビジュアル。(Helvetika Neue Bold)

9月下旬、MTGで全体へPW企画とキービジュアルを発表。駒場祭へ向けて大きな盛り上がりを見せます。PWにおけるフォントや色などを統一することはしませんでしたので、これ以降brandingの仕事は主に企画を行うwebページのデザインへと移っていきます。

10月以降、adminが申請関係をバタバタと片付けている間に、上級生のフィードバックを受けつつwebページのデザインが完成に近づきました。カレンダーに「駒場祭・当日」も見えてくる11月。このころは中間試験が重なったことからもかなりシビアな仕事の割り振りを要求されました。多くの上級生に声をかけ、実装担当と通話しながら夜に作業を行い、18日には全体のページの仮完成を迎えます。お気づきでしょうか?まだ各企画ごとのページは完成してないんです。えらいこっちゃ…


当日!

2021-01-15 13.32のイメージ

各企画ごとに制作されたバナー

駒場祭当日、10時30分。webページはついに公開されました。”CONNECT/DISCONNECT”のロゴにはアニメーションがつき、スクロールすれば色とりどりのバナーが現れる。それぞれが各班が力の限りを尽くして制作したクリエイティビティ溢れる企画です。上に挙げた当初の企画案の内容と比較してみてください。(ここで劇的!ビフォーアフターのテーマソングが流れる)

まずはかえりみち。記憶の中にある味わい深い余韻の時間、それが帰り道。音とともに、時間帯を変え、歩く人の人数を変えて来場者自身がそれぞれの帰り道をカスタマイズしていく企画です。着せ替えゲームみたいですね。


2021-01-15 12.48のイメージ

場所を選んで、時間を選んで、人数を選んで「帰り道」を着せ替えられる。

そして街の物体X。街で見つけたものー物体Xを、それが日常か非日常かを評価して投稿すると、画像の色情報や「日常感・非日常感」の情報によって架空の地図上へマッピングされます。地図で周りを探索すれば、意外な共通点を持つ画像に行き当たるのかも。 

画像8

関係性を見つける写真投稿システム。この点一つ一つが誰かの投稿した”物体X"なんです。めっちゃサイバーな感じですね...


続いてわける・わけない「〇〇感」。いろんな場所に住む来場者にとって「近い」範囲はどこなのか?地図で選んで他の人と見比べてみる。普段想像もしないもの、例えばキャンパス、じゃがりこ…を単位にして比較する。楽しいミニゲームで普段の「分け方」を相対化します。

2021-01-15 12.53のイメージ

わかるかこんなもん、と言いながらやっちゃうタイプのゲーム。


最後に、アイソメトリックイラスト。パースをかけず、鳥瞰図的なイラストでメインビジュアルに使われた「磁石」を表現します。これは完全に視覚的な存在として来場者に訴えかける展示です。製作者たちのコメントを見ていても極めて直感的、本能的な創作。遠近がない、不思議な世界です。

2021-01-15 13.40のイメージ

なんだこれの連続。夢に出そう。そして、とても楽しい企画。

素晴らしいページ、そして多数の企画とともに駒場祭当日を迎えられました。責任者一同、ほっと一息。


課題感

課題として残ったのは「広報不足」「人材確保」です。駒場祭広報専属のメンバーがおらず、広報戦略、広報の量と質が圧倒的に不足していました。人材についても、web、写真など持っているスキルを聞く「スキルアンケート」を実施してサークル内の人材把握と配置に努めたのですが、実際やってみれば実装担当者のキャパオーバーが続き、先輩方に頼み込んでようやく完成を見ました。余裕を持った配置は難しいものです。

また、web系の人材の圧倒的な不足の一方で、デジタルデザインや写真が得意なメンバーが十分に活用されない状況がありました。webのスキルがない人も巻き込むためにはweb以外のやり方も模索すべきだったのでは..(例えばこういうnoteを使うのもありです)などなど、今後のオンライン学祭を見据えて様々な反省点が浮かび上がりました。五月祭は駒場祭の反省を踏まえ、さらに洗練されていくはずです!


おわりに

締め切りぎりぎりの依頼に応じてくれた先輩方(ごめんなさい)、他の駒場祭企画と掛け持ちで取り組んでくれた同期、デザイン・パワーを最大限発揮した後輩の力、そしてbrandingの二人の貢献と副責任者の協力がなければ決して完成しなかった企画でした。本当にありがとうございました。

多くの人に支えられつつ、オンライン駒場祭という70回を超える駒場祭の歴史でもかつてなかった状況下で駒場祭企画に取り組めたことは、サークルとしても、私自身にとっても大変意義のあることだったと感じます。

五月祭、見に来てくださいね!


文: しば(東大,2019入部)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?