食支援研究家 五島朋幸

新宿で訪問歯科診療もする歯科医師。食支援研究家。 ふれあい歯科ごとう代表、新宿食支援研…

食支援研究家 五島朋幸

新宿で訪問歯科診療もする歯科医師。食支援研究家。 ふれあい歯科ごとう代表、新宿食支援研究会代表、日本歯科大学附属病院口腔リハビリテーション科臨床准教授。 株式会社WinWin代表取締役。 ラジオ番組「ドクターごとうの熱血訪問クリニック」(全国12局で放送)パーソナリティー。

マガジン

  • 地域食支援の100の言葉

    全国各地で「最期まで口から!」と言った地域食支援活動が行われています。しかし、結果を出すのは容易なことではありません。 地域食支援活動のトップランナーの1つ、新宿食支援研究会の代表である五島朋幸が、地域食支援に必要なことを100の言葉にまとめていきます。

  • 戸塚「超」会プロジェクト!

    新宿区戸塚地区を中心にしたコミュニティーづくりの物語。

  • ドクターごとうの訪問歯科日記

    日頃の診療、雑感、ランチや飲み会、そんなライフログです。

最近の記事

その81 日本語の下手な名医はいない

 日本語が下手とは、文法も語彙も話し方も含めて伝える手段としての日本語が下手ということである。しゃべることも文章も含めて。名医は患者を感動させるし心を動かしていく。そもそもの日本語が下手な人がそのようなことができるわけがない。  伝わればいいと思っている医療者は伝えられない。日本語が下手な人は言葉が足りなくて伝えられない。知識を得てくると言葉が無駄に多くて伝えられない。そしてその先に、適切な語彙量で的確に伝えられる人がいる。決して年齢や経験ではない。  さらに伝え方は医療

    • その80 チームという名の個人戦

       病院のNSTに代表されるように、施設などにも食や栄養を管理するチームが存在します。もちろんメンバーの多くは職員ですし、NSTのように完全固定されていることもあります。このような時のチーム力は、それぞれの連携のスムーズさであったり、全体としての高い目標だったり、チームとしての成長力であったりします。  しかし、残念ながら地域では食支援チームといっても他所属です。それぞれ足元が違う中で、足並みをそろえるのも大変です。そんな中で、地域食支援チームの力とは何でしょうか。まさに、「

      • その79 プロフェッショナルの結果

         地域食支援は地域住民と専門職のコラボレーションです。中でも専門職の連携を考えるとき、共通言語は1つです。「結果」。だから私たち新宿食支援研究会でも絶えずメンバーに結果を求めます。  さてプロフェッショナルの結果とは何でしょうか。一言で言うと期待を裏切る結果です。想像もつかないような結果を出すことが他の職種へのアピールであり、コミュニケーションツールでもあります。  歯医者に入れ歯の調整を頼んだらしっかり食べられるようにしてくれた。福祉用具専門相談員に車椅子をお願いしたら

        • その78 成長しようと思う時しか成長しない

           私たち医療の仕事もキャリアがものを言うと思われています。もちろんキャリアは重要です。しかし、キャリア(物理的な経験年数)が同じであっても大きな差が開いています。どこで差が出るのか。自ら成長しようと思っているかどうかです。  とても分かりやすい話です。毎日のように文字は書いていますが、年を経ればどんどん字がうまくなっていますか?「字がうまくなりたい」と思って努力をする、練習する、そして結果として字がうまくなることがあります。僕たちの世代にもものすごく達筆な人もいるし、ちょっ

        その81 日本語の下手な名医はいない

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        • 地域食支援の100の言葉
          81本
        • 戸塚「超」会プロジェクト!
          3本
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        記事

          その77 つなぐ

           地域の中で何らかの食や栄養に異常がある方が見つかったとします。重症度が高ければ入院を含めた医療介入が始まります。しかし、体重が減り始めた、外に出なくなったという「兆候」が出た時、気づく人がいても次のアクションを起こす人がいません。そもそも、「主人、最近体重が少し減ったんです」と言っても世間話で終わってしまうかもしれません。  「見つける、つなぐ、結果を出す」は三位一体ですが、つなぐの難しさは、「どのタイミングでつなぐのか」「誰につなぐのか」の2つです。医療者の中でも、食支

          その3 変わる人間関係

           どっぷり昭和の人間です。そして昭和世代の方ならわかる「新人類」は僕のすぐ下の世代です。バブルは学生時代に膨らみ、学生時代にはじけました。大学の体育会、医局に残ってもパワハラ当たり前。20歳前でも酒は飲まされ、先輩に酌をし、一気をし、道端で一夜を明かした世代。令和の世代には少し聞かせたくない過去。まさか町内会でそんな空気流れていませんよね…というお話。  現代社会で求められる、好まれる人間関係とはどんな関係でしょうか。自分の能力を発揮できない関係は好みません。Youtube

          その3 変わる人間関係

          その76 見つける

           食支援を必要としている人は何人か?以前にそんな記事を書きました。高齢者の2割弱。さらに高齢者以外にも食支援を必要とする方はいます。まずは皆さん、自分たちの地域でざっくり、何人くらいが食支援が必要なのか調べてみましょう。そして結論が出るはずです。専門職だけでは街は守れないと。  さて、裏を返すと一般住民も参加で地域食支援をしなければならないということです。もちろん、専門職住民が同じことをするわけではありません。地域食支援には具体的に次の3段階あります。 ①食や栄養に何か問

          その2 町内会の外から町内会を見る

           地域コミュニティといえば町内会!と思う人はどれくらいいるのでしょうか。自分自身は地方出身で文京区の学生寮から1人暮らしになり、平成元年新宿区民になりました。もちろんアパートの一人暮らしで「地域」とか「町内会」とか意識したこともありませんでした。結婚して高田馬場のマンションに移り住みました。そして平成15年、北新宿で診療室を開業することになりました。診療室では「地域ケアを実践する」ということを目標に掲げ、ミニサロンも実施することにしていたので(現在も継続中)開業して間もなく、

          その2 町内会の外から町内会を見る

          その1 新食研と町内会

           最期まで口から食べられない人は多くいます。高齢な方が誤嚥性肺炎で入院すると「禁飲食」(口から食べたり飲んだりしてはいけない)という指示が出ます。ただでさえ体力のない方がそのような指示を受けてしまうと食べる能力はさらに低下し、食べ物を口にしてもむせて食べられなくなることが頻発します。そして医者に「もう食べられません。食べてはいけません」と言われて胃ろう(胃に穴をあけて直接栄養を入れる)などを作って退院をしてきます。本人も家族も口から食べたい、食べさせたいと思っていてもそれは叶

          その1 新食研と町内会

          その75 歯と高さの関係

           歯は何のためにあるのか。もちろん物を噛み切り、噛み潰すことです。歯がないと困りますね。というのは1つの側面。実は、歯にはもう1つ大きな役割があります。お口の中の容積を維持という役割です。  ちょっとわかりにくいかもしれませんが、歯が全くない方だと上顎の土手と下顎の土手がくっつくくらいまで閉じることができます。クシャおじさん?(下)きんさん?両方わからない方もいるでしょうね。それだけ口の中の容積が小さくなったということです。逆に皆さんが上下の歯を接触させてしまうと、それ以上

          その75 歯と高さの関係

          「まいにち、くちビル」応援歌

           世の中はコロナ騒ぎですが、そんなことよりも重要な案件が日本にはあります。高齢社会です。年単位で、ボディーブローのように日本社会はダメージを受けていきます。そんな中、立ち上がった若き女性軍団がいます。くちビルディング選手権を仕掛けるグッドネイバーズカンパニー(GNC)。そうでした!彼女たちの発想こそ日本社会を救ってくれます。  この自粛ムードで高齢者が自宅で過ごす時間が長くなり、心身ともに弱っています。「外に出ない=おなかが空かない=食べない」まさに社会としてそれを防ご

          「まいにち、くちビル」応援歌

          その74 最期まで食べる

           最期まで口から食べてもらいたい!いや、自分自身も最期まで口から食べたい!そう思って食支援の活動を続けています。しかし、そのものの意味で考えると少し間違ってとらえられるかもしれません。あくまでも「最後」ではなく「最期」までなのです。  以下は「はつかいち〈暮らしの中の看取り〉準備講座」の代表、大井裕子先生が提示されている”IMADOKO”です。はつかいち 暮らしと看取りのサポーターより転載  がんに限らずいろんな病気で死を迎えるとき、本当に食べられなくなる時期を迎えます。

          その74 最期まで食べる

          その73 マニュアルこそ進歩すべき

           もちろん学生時代、教科書があってそれを基に勉強してきました。高校時代までは疑いもなく正しいことが書かれているものと思っていました。大学に入ってからいわゆる臨床科目の講義が始まって「?」と思うことが出てきました。そして実際の臨床実習が始まると、教科書だけでは役に立たないケースもしばしば。そこではじめて気づきました。ここにはわかっていることしか書いていないと。   医療にしろ何にしろ日々進化をしています。そこには教科書のようなものがあるのですが、それらが進化していなければ意味

          その73 マニュアルこそ進歩すべき

          その72 決断したらぶれない

           小学生、中学生時代、ショートショートの星新一さんの文章が大好きで、自分が持っていない文庫本を見つけるとすぐに買って読み漁っていました。その中の1つの文章で、今でも忘れられないものがあります(作品名は忘れました)。ものすごく当たるコンピューターがあって、相談しに来た人が質問すると「それはこっち」「それはあっち」と即答するのです。しかも、その予言は的確に当たるというのです。あるとき、どうしてこんなにも当たるのかと思って機械を分解したところサイコロが入っているだけだった…という話

          その72 決断したらぶれない

          その71 人の価値

           価値は絶対的なものか?皆さんなんとなくわかっていると思いますが、同じものであっても必要な人には高い価値があり、不要な人にとって価値はありません。美術品や装飾品なんてほとんどそうかもしれません。しかも、高い価値は無限です。ある人が描いた絵が1万円、ある人が描いた絵が1000万円だった。1000倍上手な絵か?そんな尺度ではありません。必要度ですから。  マグロが好きな方も多く、高級すし店では1貫で1食分ぐらいの値段するところもあります。さて、マグロが東京湾に大繁殖していて、い

          その70 認めること、認められること

           もう40年以上前、私立小学校の6年生だった時の話です。教壇に向かって右側、後ろの方に座っていました。その日は卒業文集の編集委員を決めていました。当時、勉強の成績は悪く、運動神経も良い方ではなく、特に目立つ存在でもありませんでした。編集委員の名前が数人あがってきました。もちろん成績優秀者。自分でも文章を書いたりすることは好きだったので、やってみたいなぁとは思いましたが、候補者との差があり過ぎてじっとしていました。その時、学級委員長で人格者(!)のS君が手をあげ、大きな声で 「

          その70 認めること、認められること