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新型コロナ流行下の同人イベに行ってみた

 なんだか新型コロナがヤバい時節ではありますが、今年1月以来11ヶ月ぶりに同人誌即売会に行ってきました。

 なんでこんな時期に同人誌即売会に行ったのか。それはまあ、久々に行きたかったというのもありますが、コロナ禍における同人誌即売会について、実地で確認したいという想いがありました。

 というのも、12月4日に「新型コロナウイルス感染症(COVID19)流行下における同人誌即売会の開催ガイドライン」(以下ガイドライン)が、コミケ準備会や赤ブーブー通信社等、同人誌即売会を主催する団体の連合体であるDOUJIN JAPAN 2020から発表されました(リリース)。コロナ禍でどうやって同人誌即売会(5000人以上の大規模イベント想定)を開催するのか、という一定の指針が定まった訳です。

 同人イベントの指針となる文書が発表されました。じゃあ、実際の運用はどうなのか? 来年5月開催予定のコミケ99にサークル参加応募をしたからには、コロナ禍における同人誌即売会はどう開催されるかについて、実地で見ておくべきと思いました。

 筆者は引きこもりのライターで元々人と接しない上、こういったイベントに参加制限をかけられているであろう企業人や公務員のような制約もないため、今回一般参加して状況を見て来ることにしました。来年のC99が開催できる状況になるかは分かりませんが、開催された際の参考になればと思い、イベントでの感染症対策について書き残したいと思います。形式上有料ですが、無料で最後まで読めます。気が向いたら課金頂けたら幸いです。

参加イベントと個人の対策

 今回一般参加してきたのは、東京ビッグサイトの青海展示棟で開催された合同オンリー同人即売会の『サンライズクリエイション in BS 2020 冬』。その中の艦これオンリー即売会の『砲雷撃戦よーい!63』中心に回りました。なお、主催のSDFは今回のガイドライン策定に関与していないはずです。

 なお参加にあたって、個人としてはN95対応マスク、飛沫対策に目を覆うオーバーグラス、頻繁なエタノール消毒のための携帯スプレーを持っていきました(以前からインフルエンザ対策のために冬コミはN95マスクをして参加してましたが…)。N95マスク常備していることからも分かるように、筆者はかなり神経質なので、この記事の視点も神経質なのはご了承ください。

 なお、意外かもしれませんが、立体的なN95マスクの中には、一般的な不織布マスクより呼吸が楽でメガネが曇りにくいものがあります。入手できそうだったら手に入れてみるのもいいかもしれません。適正価格なら1個数百円程度ですが、毎日使うと高くつくので、ここぞという時で使ってます。

入場前登録~入場

 現地は9時から入場受付開始。一般入場開始は11時からになります。入場にあたっては、まず手指の消毒と検温があります(下写真)。

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 その後、入場受付となりますが、受付方法は事前にネット上で行う事前登録と当日受付があります。事前登録はネット上で入場料金の決済、氏名・連絡先等の個人情報の登録を行い、現地でQRコードを提示することで入場章(リストバンド)が引き渡されるシステムです。当日受付は決済や個人情報の記入を現地で行います。

 自分が到着した10時過ぎには既に入場受付に列はなく、事前登録受付でスマホのQRコード見せてすぐに待機列に並びましたが、当日受付では手書きで紙に個人情報書かされるため、事前登録の方が楽という印象です。

 なお、ガイドラインでは感染症対策として、厚労省の厚生労働省新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)をスマホ所持者にインストール・稼働させ、濃厚接触の有無を確認することとしている。なお、今回のイベントではCOCOAインストールは推奨にとどまっています。

待機列

 一般待機列は青海展示棟外周を回るように形成されていましたが、コロナ禍以前のイベントの待機列の三分の一以下の密度という印象です。特に前列は以前なら5倍の人を詰めていたと思います。ディスタンスは保たれていますが、これは以前に砲雷撃戦やった蒲田PIOみたいな箱だと難しいだろうな……というのが正直なところ。

 もっとも、一般待機列も後ろに行くと、ややディスタンスが甘くなる。4列だったのが2列になったのもありますが、前列と比べると密度がある。状況に合わせた変更と捉えるか、ポリシーが緩くなったととるか。

 マスク非着用者は入場できないことを謳われているため、自分が見た限りでは待機列でもマスク着用率はほぼ100%。例外は食事や水分補給している人だけでした。ただ、世間一般と同じく、呼吸はしやすいが飛沫の吐出し・吸込み性能が不織布マスクの半分のウレタンマスク(性能比較の詳細はハフポのこの記事)が増えたなあ、というのが気になったところ。参加者と話す事の多いサークル売り子がウレタンマスクなのやや抵抗が。

 なお、ガイドラインでは、列形成時のリスクについて「列形成時の声による誘導、 待機列での会話および近接距離による飛沫感染や接触感染」を挙げていますがが、待機列に並んでいた時、スタッフがマスクを外して大声で遠くのスタッフを呼びかけていたのを目撃。ただ、現実的に遠くの人間に連絡するには、無線や拡張器でなく大声に頼る時もあると理解しているので、ここは難しいところ。

会場内

 11時の開場後に入れた会場はコロナ禍以前のSDF主催イベントと比べれば、かなり空いている方だが、それでも人の流れは多い。しかし、以前は身動き取れないような場所もあったけど、今回はそういう混雑は見られず、人と接触することはなかった。

 ただ、サークルの列が密集することがあった。目につくとスタッフが声をかけて、ディスタンスを取るように指示されるが、そうすると列がスカスカになるため、並んでいない人が割り込んでしまう例を何回か見た(自分も割り込みに「列ありますよ」と注意した)。コロナ禍以前では途中列に割り込まれることはあったが、並んでいる中で割り込まれた記憶はほとんどない。列に並ぶと今まで以上に注意を要した。

 列と言えば気になったのが、最後尾札。ガイドラインでも接触感染リスクは挙げられているが、最後尾札は不特定多数が触る上、みな同じような場所を持つ。自分は最後尾札を持った後は持った手をすぐ消毒したが、これを参加者全員がやるかといえば現実的でないと思う。最後尾札持ち専任のサークルスタッフという手もあるけど、次のコミケではサークルあたりで入場できる人が2人に減っていて多くのサークルは余裕もないし……。

サークルスペース

 サークルを回ってみると、最近の商店では一般的な透明シートによる飛沫ガードや、現金を参加者が箱に投入する形にして接触をなくす等の工夫をしているサークルもあるものの、必ずしも一般的でない。最も多かったのはこれまた商店で多いトレイの利用で、現金の受け渡しをトレイを介して行うことで、売り子と参加者の接触を避けている。

 ただ、個人的にはトレイに効果あるか疑問で、たしかに売り子ー参加者の接触は減るけど、トレイに不特定多数の参加者が手を触れることになる以上、トレイよりも手を接触しないよう留意しての現金受け渡しの方がマシな気がする。商店がトレイ使うのはコンビニ等で以前やられていた「客の手を包み込むようにお釣りを返す」という慣習を防ぐためだと思っていたんですが……。現実的にはトレイの頻繁な消毒が解かなあ。

 悩ましいのが見本誌で、見本誌を置かず確認もNGのところもあれば、見本誌を読む前に置いてある消毒液で手指消毒を行う旨明示しているサークルもあったが、そこで消毒もせずに見本誌を手にとった参加者を見た。こういう事態を防ぐためか、本を全てバックヤードに置き、参加者に一切触らせない対応をしていたサークルもあったが、頒布数によっては難しいだろう。

一般参加してみて

 一般参加者側からの視点としては、今回のイベントではディスタンスは概ね取れていたし、今までのイベントと比べれば信じられないくらい余裕ができている。ただ、イベント主催者はともかく、サークル側の対応はどうしても差が出てしまう。中には、これ感染症対策に寄与しないばかりか危険じゃね? という対策も見られた(ここらへんは「手袋の着用、学校の消毒で新型コロナ感染は防止できるの? 過剰な感染対策を減らすためのポイントとは」等、感染症専門家に聞いた記事でも読んで欲しい)。

 ただぶっちゃけ、サークル参加者としては、個人レベルのリソースな以上、対策に限界もある。専門家でもないので、なにが効果があって、なにが無意味なのかも分からない。信頼できるソースがあればいいのだけど、ネットでは前に問題になったWELQのようにヤベえ医療情報が跋扈している。信頼できる情報へのアクセスが課題になりそうだが、同人サークル向けか……。

余談:同人誌即売会場の換気について

 ところで、新型コロナ対策として換気の重要性が叫ばれて久しいですが、実際に換気されているかの指標として、二酸化炭素濃度を利用することがあるようです。実は以前、2018年12月のC95にサークル参加した時、自分のサークルスペースに二酸化濃度計を置いて計測したことがある。その結果がこれ。

 結果は意外に思われるかもしれないが、入場が始まる前の人が少なかった時の方が、二酸化炭素濃度は1000ppm以上と高い数値を示していた。厚労省は施設が十分に換気されているかの基準の一つを二酸化炭素1000ppm以下としているので、これは換気に問題があるといえる。ところが、シャッターが開放されると、人が大勢入ってきても1000ppm以下の状態を維持できている。コミケ西館はシャッターさえ開けていれば、十分な換気はされているようだ(あるいは空調が本気を出したのか)。

 他のイベントではどうなのか。例えば、2019年4月に行われた『技術書展6』にサークル参加されていた方が測定していた。

 二酸化炭素濃度が3000ppm近くになるのは、コロナ抜きにしても大変良くない。技術書展6の会場は池袋サンシャインシティ2F 展示ホールDだったそうだが、ここは天井も低く、ビッグサイトのように外部へ通じる大型シャッターも無い。機械式空調の能力を超えてしまったのだろう。ビッグサイトのようにシャッターも開けられないと、人数制限しか取る手が無さそうだ。

 新型コロナも面倒くさい社会にしてくれたなあ。

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