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#15 阪神タイガース優勝のドラマは「38年ぶり」ではなく…

1985年以外、ほぼほぼ暗黒

「あのタイガースが優勝!?」というよりも「あのタイガースが成長!!」の方がしっくりくる。自分の中では「1985年以外はほぼほぼ暗黒」だった。1973年、1976年、2008年は土壇場でジャイアンツに優勝をさらわれ、1992年は土壇場でヤクルトに競り負けた。2008年は北京オリンピックの悪影響があったものの、とにかく、勝負弱い印象が強い。

暗黒の象徴 1993年から2001年

この期間は特にひどかった。甲子園は基本ガラガラ。平日ならバックネット裏の当日券を購入できた。試合展開は常に同じ。1回表に点を取られ、裏の攻撃は7回まで沈黙。7回表の相手の攻撃が異様に長く、追加点を入れられている間に、我慢できなくなった子供たちがジェット風船をとばしてしまう。8回裏くらいから反撃に転じるが、時すでに遅く、敗北。甲子園が満席になる気配は一向に見られなかった。

2003年、2005年、2014年もある意味暗黒

日本シリーズには出場したが、2003年は「内弁慶シリーズ」と呼ばれ、ビジターで全敗(4敗)、2005年は甲子園でも勝てず、まさかの4連敗。「終わり悪ければすべてダメ」という感じで、とにかく後味が悪かった。クライマックスシリーズの勝負弱さも相当のレベルで、引退予定の桧山進次郎のホームランの余韻が強かったりする。2014年こそクライマックスを勝ち抜き、ジャイアンツに勝利して日本シリーズに出たが、やはり敵地・福岡で全敗。

金本監督の右腕が反転攻勢の起点に

タイガースにとって運命のドラフトと言えば、江川卓よりも大山悠輔。ファン心理としては1位で競合する田中正義(ホークス➡日ハム)よりも佐々木千隼に行ってほしかったが、まさかの大山指名に会場全体に悲鳴が轟いた。かくいう自分もそのひとり。高輪プリンスホテルで顔面をしかめた自分が情けない。前年度の高山・坂本・青柳と言い、2016年の大山・才木・糸原といい、金本監督の引きの強さは尋常ではなかった。

種をまいた矢野監督

何かと賛否両論が分かれる監督だが、自分自身、この人の野球観は好きだった。なんといっても鈍足の歴史を塗り替えた功績は大きいと思う。細かい野球は正直ヘタクソだったし、大山、佐藤、中野、糸原らの守備への指導には難があったが、走る勇気を植え付けた点は大いに評価できる。

稲を刈り取った岡田監督

2008年に残念な形で退任し、オリックスでも華々しい成果を残せず、久々の監督復帰となった2023年。守備位置の変更を含め、「枯れた指導」を通して、働き盛りの若手の才能を見事に開花させた。全盛期のアスレチックス並みに選球眼を向上させ、つなぐ野球を徹底させ、小兵の集まりにもかかわらず、いつでも、どこからでも点を取れるチームに仕上げた。クライマックスでの圧勝はもちろん、シリーズでもオリックスの若手投手にプレッシャーを与え続けていた。凄みのあるチームに変貌させた点、名監督と言える。

シリーズのMVPは森下翔太

このシリーズの勝因は「負けっぷり」の潔さ。第2戦で抑えられ、第3戦も一方的な展開となり、このままズルズル行くのではと不安になったが、ゲッツー崩れで1点追加したあとの森下の芸術的な流し打ちで空気が一変した。宗のファインプレー連発がなければ、もっと早くに優勝を決めていたのではなかろうか。

全員、紳士で心地よい

優勝後のインタビューが素晴らしい。「こんなチームだったかな?」と思うくらい、品格のある選手が増えた。品格があるから強いのか、強くなって品格が生まれたのか、定かではないが、これまでずっと羨ましく見てきた常勝軍団(昭和のジャイアンツ・カープ、ライオンズ、平成のスワローズ・ホークス)と同じ香りがタイガースから漂ってきた。この違和感がなんとも言えず、心地よい。大河より長いドラマを見ているような気分だ。

いつまでも続けばいいのにと心から願う。


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