2016.7.15 cakes「世界一美しい不倫の話」ウラ話〜紙v.s.ウェブ論争に思う〜

--この記事は「投げ銭記事」です--

こんにちは、外科医の雨月メッツェンバウム次郎です。

晴れた日が続き梅雨も終わりかと思ったら、今度は日本中を暴風雨が駆け抜けました。昨日の東京はひどい雨でしたね。私はピンアポ(1:1で会うこと)の女性用にとコンビニでタオルを買って持って行きました。案の定足がびしょびしょで、持って行ってよかった。足が濡れたままゆっくり食事なんて出来ませんもんね。

さて、今回のcakes連載では「世界一美しい不倫の話」と題して、ある世界的なシャンソニエ(シャンソン歌手)の恋のお話を書きました。あまりに驚きの結末だったのでどう書こうか非常に迷いました、普通にそのまま書いてもただの波乱万丈な話になってしまいそうでした。

考えた挙句、そこに彼女のyoutubeで歌っている動画を埋め込んでエッセイの一部にしてみました。こういうのって紙の本では絶対出来ませんし、web記事ならではですよね。編集者さんも「新しい試みだ」と喜んでくれていました。このスタイル、エッセイの中に動画があるというものって、別に奇跡的な発明であったわけではなく、もちろん私の過去の購読経験の中にそれに似たものがあり、「あれって面白かったよな」というなんとない思い出レベルの記憶があったので産まれたんです。

「紙かwebか」という議論って最近よく目にします。でも正直なところ、私には「寿司かカレーか」という議論となんら変わりがないと思っています。つまりは同じ土俵にいないので戦うことはできないよ、という意味です。

ココイチの出現で日本人のカレー食は増えたでしょうし、すしざんまいやスシローで寿司食も増えたかもしれません。人が食べるごはんは1日3食まで、という意味ではお互い干渉しているかもしれませんが、直接的な影響はお互い与えていない。「最近カレーばっかり食べているから寿司は控えよう」とはならないわけです。

同様に、「最近cakesで面白い記事ばかり読んでいるから紙の本は買わなくていいや」とは思わないわけです。webで大量の(おそらく一人当たり年間5000本以上の)記事を読みつつも、「花火」や「永遠のゼロ」(少し古いです)は本屋さんで買って読むわけです。

では、どんなものが読まれるのか。本質は「紙かwebか」ではなく、「面白いか面白くないか」のみに集約されるという点をもっと厳しく見つめる必要があるのです。そんなことを思っていたら、TBSのテレビマンでweb動画も作っている人が同じことを言っていました。引用します。

僕は「おもしろ原理主義」と唱えています。ものすごくシンプルに言うと、おもしろいもの(コンテンツ)はどんな世の中になっても求められるということ。(角田陽一郎 cakes「テレビ VS ネット動画? すべての鍵は「おもしろ原理主義」にある。」)

ま、私やこの方がドヤ顔で言うまでもなく「当たり前だろ」と業界の方は思うのでしょうが、どうも出版関連・書き手関係の方と話していると「どう見せるか」に重きをおいていて「なにを見せるか」を置き去りにしてしまっているように思います。

読み物というのはエンターテイメントの一部であり、映画や雑誌、テレビドラマと競合します。もっと広げると、「余暇の過ごし方」であればなんだってエンターテイメントなのです。

ミクロに考えればある人の「土曜日の午後」をどれが奪うかという話で、その人がもっとも心地よいと思うものが選ばれるんです。それが国会前デモなのか、極上のイタリアンレストランでのゆっくりとしたランチなのか、トライアスロンの練習なのか、闇カジノなのか、webエッセイなのか、歌舞伎なのか、新しくアプリとしてこの3月にリリースされたロマンシング・サガ2なのか、付き合っていない若い女性と行くオリスパなのか、おばあちゃんのお墓参りなのか。

それらはすべてが競合していて、一つのパイを取り合っています。ですから、読み物というものはある人の中の「おばあちゃんへの思い」や体を鍛えたいという願望、金を稼ぎたい欲なんかと競合していて、その果てには食欲や性的欲求といった人間の根源的な欲求と戦わなければなりません。

その意味では紙もwebも戦うべきはお互いではなく、他のエンターテイメントです。敵は天国のおばあちゃんやパズドラや闇カジノなんですね。

ですから、書き手の皆さんは迷わずめちゃくちゃ面白いものをエッセイでも小説でもニュースでもいいので書いてください。スパのセラピストさんは筋肉の構造を学びより本質的な癒しを提供し、プロのシェフはおいしいパスタを研究し、おばあちゃんは天国で孫のことを想っているのですから。一読者として、とても楽しみにしています。

出版業界が斜陽産業であるとはずっと言われていて、事実恐ろしいスピードで売り上げは落ちています。でもそれは、人々が読まなくなったからではなくて、面白い読み物が減ったからではないのですか。テレビが見られなくなったのは、ずっと独占していた動画という世界に他のもっと面白い人々が参入してきたからではありませんか。

ただただそのコンテンツの質と、人間というものへの理解の深さ、それだけが業界の勝ち負けを分けているのです。それに自覚的にならなければ、どれほど歴史があろうが既得権益が強かろうが、必ず滅びるでしょう。

そんなことをいち書き手として自戒しつつ、書きました。

あ、今回は恋のお話をしておりませんでした。ま、cakesの本連載がどっぷり恋のお話でしたのでたまには、ね。

この記事も「200円投げ銭記事」にさせていただこうと思います。せっかく投げ銭してくださった方に、医者は人間ドックをどう受けるか、そして受けるコツについて少しお話しておきます。ご参考までにどうぞ。

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2016.7.15 cakes「世界一美しい不倫の話」ウラ話〜紙v.s.ウェブ論争に思う〜

雨月メッツェンバウム次郎

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cakes連載記事、あそこには書けない週刊ウラ話

cakesで毎週金曜の連載「それでも僕は、外科医をやめない」のウラ話や続きを書いています。ここだけでもお楽しみ戴けます。
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