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【アンジェルマン症候群】④特徴 運動機能障害

研究途上の、まだまだわかっていないことの多い疾患です。できる限り情報源は説明できるように心がけますが、原則的に、≪この疾患の子を育ててきたなつまま流謎解き&解説≫だったりします。ご了承ください。


アンジェルマン症候群の人たちには、程度の差はありますがほぼ全員に運動機能障害があります。

発達遅延があり、独歩ができるようになるのは定型発達の人よりもずいぶん遅れますが、多くの人はぎこちなくでも子供のころに歩けるようになることが多いです。
他の疾患を合併していなければ、いわゆる寝たきりになる重度の運動機能障害となる疾患ではないので、街で見かけた時にこの人たちの運動機能障害を正しく理解することは非常に困難です。

そこで、一つ一つについて、なつまま流解説を行なっていきます。


失調性歩行、バランスの異常

バランスが取りにくいので両手を上げてバランスをとりながら歩きます。

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階段までズンズン登れるほどに歩行が安定している人もいれば、車椅子やバギーを必要とする歩行機能の方もいます。
娘はバランスは少し悪いですが歩行、移動が大好きで、車椅子は持っていません。
何キロでも歩ける系😅自分で歩きたい系😅なんなら危なっかしく走れる系😓体育会系女子です🍀
この個人差はとても大きいです。

振戦

振戦とは手先の小さな震えのことです。
娘は少ないですが、細かな作業をしようとした時など小刻みに震えていることもあります。
てんかん、発作波とも関連しているようです。

細かい作業が苦手

指先を使った細かい作業が苦手です。
例えばスプーンなどが握り持ちになって腕全体で大きく動かして食べたり、物をゴミ箱に捨てる時も手全体で押し込むように中に入れたりします。
払い除けたい時も体全体で大きく動きますので力が大きく伝わります。つまり、払い除けられた方はとても痛いです

最近では、幼い頃から【療育】や【訓練】で、できるだけ細かく手先が使えるよう作業療法を行う機会も増え、スプーンや箸の握り持ちではない正しい持ち方や、姿勢良く座る練習、物をそっと触る練習など、訓練して獲得を試みます。

力加減が利きにくい

ちょっと余談になりますが…。

1970年代、ユリゲラーという超能力者がテレビの向こう側で《あなたもスプーン曲げができる!》と言い、彼が言うようにスプーンを扱った人々のスプーンが本当に曲がって話題になりました。

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彼は、視聴者に対し、腕をしっかり伸ばしてスプーンを持つように言いました。
手首の関節・肘関節・肩関節全てしっかり伸ばすように。関節を固めるのです。
すると、粗大な動きとして全力が一点にかかりやすくなり、スプーンは曲がると言うわけです。

彼自身が他に示したスプーン曲げの種明かしについては知りませんが、素人さんへの仕掛けはこんな感じだと思います😅

ということで、我々人間はさまざまな関節を器用に使うことで実は微妙な力加減になっています。
どの関節も固めて一点に力を入れると粗大な運動となり自分で思うよりも大きな力になってしまい、力をコントロールすることが難しくなります。

前述の細かな作業ができないことと併せて、力加減が利かないということなどは実は成長と共に自然に獲得していくものです。
そこがうまくいかないことで、なんとか訓練によって獲得を試みるのです。

しかし、力は入れるよりも抜く方が難しいですから、アンジェルマン症候群の人たちは自分の思うように体を使えない不便さを常に抱えています。


飲み込みにくい


これを運動機能障害の一つとして断言している研究者がいるかどうか不明ですが、私は咽頭部、喉頭部、舌、口腔内の運動機能の低下によるものだと思っています。

ほっぺと歯茎の間に食べかすが詰まった時、私たちは舌や顔筋を動かして口腔内に持ってきて嚥下しようとします。ほっぺに溜まったままじゃ気持ち悪いですよね。
アンジェルマンの人たちはそのような口の中の細かな動きが苦手です。
歯磨きをしようとしたらほっぺと歯茎の間に食べかすを発見することがよくあります。
支援者がブラシで掻き出して綺麗にします。
また、歯磨きの時にうがいをして吐き出すこともかなり難しいです。
ですから、飲み込んでも構わないジェルタイプの歯磨き剤を使用します。


ものをしっかり噛んで咀嚼することも少し苦手ですし、飲み込むための咽喉部の運動機能も劣っていると思います。

水分摂取も、人によってストローが苦手な人、コップが苦手な人がいます。娘はコップの縁を上下の唇で上手に挟みこむことができないので水分がダラダラと唇の脇からこぼれますが、ストローはとても上手なので水筒もストローボトルや赤ちゃん用のモテモテくん(販売終了品)で水分摂取しています。


基本水分はむせやすいように思います。

このように、むせは要注意ですし、大きなものを喉に詰めそうになる誤嚥も要注意です。
知らない間に誤嚥性肺炎になっていたというようなことも珍しくありません。

食べ物は必ず一口大に切って、よく噛んでねと声をかけながら必ず人が付き添い、見守る必要があります。

娘は自分で食べるという行動はできますので、食事介助という形ではなく一緒に食卓を囲むことはできますが、誤嚥しそうになっているのをいち早く発見することや、むせたらタッピングを行うなどアンテナを高く張っておかなければ、実は食事時間というのは危険がいっぱいなんです。

支援してくださる方に一番真剣に深刻な事としてお伝えするのは、この【食事時間の危険回避】についてです。
アンジェルマン症候群は、身体がそこそこ動くタイプの疾患なので、支援者の皆さんもまさかこんなに飲み込みが下手だとは思わないことが多く、つい油断してしまわれるのです。


こんなふうに、アンジェルマン症候群の人たちはいくつもの運動機能障害を抱えています。自分の体が自分の思うようにコントロールできないストレスは計り知れません。
体がうまく使えないことによりお友達を思った以上に強く引っ張ってしまったり、物をうまく扱えずに壊してしまったりします。

そんな【悔しさ】に目を向けることで、アンジェルマン症候群の人たちの訴えたいことの意味や、行動障害への対処方法が見えてきたりします。

そして同時に、運動機能障害が存在するからこそ危険予測をして気を付けていなければ事故につながるということを知り危険回避をしなければ彼らの命が守れないというところにもつながってくるのです。



最後までお読みくださりありがとうございました。

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地域の保健室をしつつフリーランスとしてお仕事している笑顔大好きな【なつまま】が、重度障害であるアンジェルマン症候群のキュートな娘との豊かな生活と、医療や福祉について思うこと、日々の小さな気づき・感動などを綴っております。

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