頬粘膜がん 483日目 けいかほうこく


 頬粘膜癌 483日目。

 血圧 108 - 81 mmHg
 血糖 - mg/dL (朝食前)
 酸素 99 %
 脈拍 74 拍/分
 体温 37.0 ℃
 体重 73.5 kg

 5日も経過してしまっているがお義母さんの葬儀が終わってバタバタしてたのが、ようやく落ち着いてきた感じでもある。

 実際には去年、僕の放射線治療と化学療法での入院が終わるのを待たずして彼女が入院して、丁度1年あまりが経過した形だ。実は僕がまだ入院治療中だったため、すでに限界にきていた彼女の症状は予断を許さないという状態だった。正直、僕の入院中に逝ってしまう可能性がかなり高かった筈だ。
 けれど、これは彼女の頑張りももちろんあるのだが現代医学の残酷さというか、もう限界だと言われた後も1年間を彼女は生ききった。この1年間を彼女はどのように思いながら過ごしたのだろう。妻はまたどのように思いながら過ごしたのだろう。
 2人とも、今はゆっくり休むといいのだ。そう、思う。

タイトルはちょっとチャーリー風に書いてみた。

 さて、僕の目下の問題は左の下顎骨に抱えてしまった放射線性下顎骨髄炎である。

 正月からこの痛みに悩まされている。ピークは2月の頭ぐらいで、その頃は痛みで夜もろくに眠れず、頭がずっと割れそうな感じだった。とにかく痛いのでうめくぐらいしかできないし、口を開けば悪態ぐらいしか出てこないので、縮こまって頭を抱えて”いしのなかにいる””いしのなかにいる””いしのなかにいる”とぶつぶつ呪文のように唱えていた。まぁ仕事にも行かなければならないので、オキノームをガンガン服用しながら素知らぬ顔をして仕事に出ていた。まぁあたまの中は”いしのなかにいる”で一杯だった。

 2月頭の診察でベースの痛み止め(オキシコンチン)を増量してもらったことでなんとかかなりマシになっている。今も日中、頓服のオキノームは欠かせないが呪文は唱えなくても過ごせるようにはなっている。


 状態的には痛みは抑え込んでいる。しかし、開口障害は増悪しつつある。口を開けると痛いし、歯磨きで歯ブラシを歯の間を通して歯の裏側へ入れるのがすでに激痛である。入れて歯ブラシの向きを変えるのも激痛だし、歯の裏側を磨くのも激痛だ。激痛は顎の関節あたりで起こっている。10mm強あったはずの開口は今は5mm強にまで下がっていて、痛みのせいで開口訓練は殆どできない。いや、痛みを押して少しはやるのだが涙がちょちょ切れるので続かないのだ。

 あわせて、いよいよ問題になってきているのが舌と唇の痺れだ。左の唇の一部と舌の左側の外縁部から先端にかけて痺れていたんだが、今は痛み止めが切れると顎や頭の痛みともに、舌の左半分が全体的に痺れてくる。唇は左半分がたらこ唇になったみたいな気分だ。見た目はとくに腫れているわけでもない。

 舌が痺れてきているので、口腔内の舌の運動がかなり制限され食べたものをまとめたり口の中で寄せたり喉の奥へ運んだりができない。前歯で何かをかみ切ると、歯の裏にその囓った食べ物がくっつく(包丁でゆで卵を切ると、たまごの黄身の一部が包丁にへばりつく)みたいな感じになってもそれを自分の舌で剥がすことができない。それがめちゃくちゃ気分が悪い。

 比較的食べやすいのと好きなのとで”おはぎ”を良く食べるんだが、粒あんの小豆の皮が歯の裏にくっついたりするともう剥がせなくイライラがいっきに高まる。職場で昼にパン食にしているんだがその時に一緒にごまたっぷりスープなんてのを飲んだりすると(これがごまの量がはんぱなくて味もとてもヨロシクていいんだが)、口の中にちらばったごまの粒でイライラは爆発である。せっかく美味しいのにイライラ感が爆発してなんだか食べる事の楽しみが台無しになってしまうわけだ。


 おいしく、たのしく食べたい。

 そんなささやかな願いはなかなかハードルが高いのである。

 まぁ仕方ないんだけどね。ただ、これは以外と慣れない。僕の場合は・・・・・・だ。いろんな方の闘病ブログを読むと食べる事にはそれほど拘らない風の方もおられたりする。いや、実際は風にしておられるのかもしれないが。


 僕はなかなかそこが諦められないというか、食べる事に意地汚いというか。

 栄養補助の飲料だとか、そういうのにまったく食指が動かない。しかし、そろそろ麺類以外を食べるのがかなり負荷がかかるようになってきたこともあり、いよいよそっちにもアンテナを伸ばさねばならないのかなぁとか頭の片隅では考える。

 お刺身も、ペラペラのものはまだなんとか食べられるが普通に切ったお刺身がかなり厳しくなってきた。

 タタキならまだいけるかな。うん、いけそうな気もする。もうしばらくなら。ネギトロ用のまぐろの叩いたのがスーパーで頻繁に特売に並んでいる。これからは切り身はちょっと諦めてネギトロでも食べようかな・・・・・・ってレベルだ。


 口がうまく開けられなくなってきたから、すぐに食べ物が唇から零れそうになる。小さくちぎったパンを食べる時も、口を開けて歯の間に押し込んで。皿の上で食べないと手から押しつぶされて千切れたパンがこぼれ落ちる。幼児のお食事風景に近づきつつあり、人前で食事をするのが段々と嫌になりつつある。気をつければパンと麺類はギリ大丈夫みたいな。


 舌が動かないので食事が不便になってきているのと、喋るのが難しくなってきている。

 まだ、発声自体はそこまで悪くなっていないと思うしなんとかなっているんだが、口の中で舌は必死に状態になってきた。早く喋ろうとするとろれつが回らないのでゆっくり喋るのだが、ゆっくりになると舌が動かないで発音というか言葉を作るのが微妙な部分が強調されるのでそれはそれで緊張する。


 現状はそんな感じ。


 あとは、日中でもしょっちゅう限界ぐらいに眠い波がしょっちゅう押し寄せてくる。これはベースの痛み止めの影響なんだろうなぁとは思うんだが、さすがにそれを減薬するのは難しそうだ。

 舌のしびれの具合がひどくなってきているので、おそらく痛み止めを元の量にもどすとまた激痛の日々って予感はひしひしとするしなぁ。


 いろいろ不便はあるが不幸では無い。

 ギリ凌いでるって感じだろうか。


 週末は旧友が訪れてくれる事になっている。

 長い付き合いだ。50年来の友人と言うことになる。すごくいい奴ってわけでもない。特別に金持ちでもなければ天才でもない。めちゃくちゃ優しいわけでもないし、厳しい男気があるわけでもない。めちゃくちゃ癒やされたりもしないし、すごい感動を与えてくれるわけでもない。

 まぁ僕にしてみても彼にとって、とても優しい人間でも、金持ちでも、力持ちでもない。そんなに頼りになるわけでもないし、男気もたぶんないw


 だけど、まぁ一緒にいるとちょっとワクワクして、疲れない。それってなかなかのものじゃないかなと思う。


 週末が楽しみだ。

 


 今日もいい1日であった。


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