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単位長さあたりの重さ(24開成中)

 今年(2024年)の開成中の大問1小問2で出題された問題です。

一見すると条件がややこしくて難しそうですが、「単位量あたりの大きさ」の考え方を十分に理解している人にとっては易々と解けてしまう、いわば「易しい難問」であったと思います。開成中のような最上位校をねらっていない子でも、5年生以上の多くの小学生にぜひチャレンジしてほしい一題です。

(解)

金属棒の左端からの長さと重さの関係

 金属棒を左端から同じ長さだけ切り取ったとき、切り取る部分の重さが等しくなるのが34.5㎝のときだけであったということは、上の図のように長さと重さの関係をグラフで表すと、(原点を除いて)OとPのグラフが1点でしか交わらないということである。つまり、グラフの概形は上の図のようになるはずである。

(ア)
 Pの金属棒について、もし左端から34.5㎝までの部分が全て8g/㎝だったら、そこまでの重さは
   8×34.5=276(g)
になる。しかし、実際は345gであったから、ここに11g/㎝の部分が混ざることで、
   345ー276=69(g)
だけ重くなっているということである。
1㎝分が、8g/㎝から11g/㎝の金属に置きかわるたびに、
   11ー8=3(g)
だけ重くなるから、11g/㎝の部分の長さは
   69÷3=23(㎝)
ということになる。
よって、8g/㎝の部分(★)の長さは
   34.5ー23=11.5(㎝)

※重さが、単位長さあたりの重さに比例することを利用すれば、34.5㎝までの部分について、Pの金属棒の★の部分より右側の部分の重さは
   69×11/(11-8)=253(g)
と計算できるので、Pの★の部分の重さが
   345ー253=92(g)
と求まります。すると、Pの★の部分の長さは
   92÷8=11.5(㎝)
となります。

もし34.5㎝全てが8g/㎝だったら……

(イ)
O, Pについて、34.5㎝よりも右側の部分だけに注目すると、重さが同じであるから、その部分のOとPの長さの比は、単位長さあたりの重さの比の逆比、すなわち
   1/10:1/8=4:5
である。
この部分の長さの差が2㎝であるから、Oのこの部分の長さは
   2×4/(5-4)=8(㎝)
よって、金属棒1本の重さは
   345+10×8=425(g)  (おわり)

ひとこと

 「金属棒を左端から同じ長さだけ切り取ったとき、切り取る部分の重さが等しくなるのは34.5㎝のときだけである」という条件がこの問題にどう効いているかが少しわかりづらかったかもしれません。ここではグラフを書いて図形的に考えることで、その点をクリアにしました。もしこの条件がなければ、(ア)も(イ)も答えが1つに定まりません。
 グラフは、速さの問題を解くときによく利用されますが、それは速さが「単位時間あたりの進む距離」として表される比例関係の量だからです。今回の「単位長さあたりの重さ」もこれと全く同様の比例関係の量ですから、グラフは有効です。(イ)では、「長さ」が「単位長さあたりの重さ」に反比例することを利用して、逆比の考えによって長さを求めました。

「速さ」は「時間」と「距離」の間の比例関係
「単位長さあたりの重さ」は「長さ」と「重さ」の間の比例関係

 小学5年生から導入される「単位量あたりの大きさ」は、算数の世界から数学の抽象的な世界へとジャンプするための大胆な発想を学べる、重要な単元です。塾の授業はもちろんですが、何より、学校の授業を真剣に受けながら、算数/数学の世界の奥深くへつき進んでほしいと思います。


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