学校教育関係者のためのAI×教育(5)+α
前回(4)までは、ユネスコ資料を中心に、AIについての簡単な知識と論考をまとめていきました。
今回の(5)から、『AIと教育を理解する:新たな実践と利得-リスク評価』という、ユネスコ資料の第3章を中心とした本題へと入ります。
1.「AIと教育を理解する」
第3章の冒頭では、教育現場へのAIの導入の歴史がさらっと書かれてあります。
私も(1)〜(4)で、既に現在の日本の学校教育現場には、知らず知らずのうちに、AIを活用したサービスが導入されている旨を記しました。
※ユネスコ資料には、下記の引用にあるような、A.〜E.は記入されていません(筆者注です)が、AIと学校教育を理解することは、単にChatGPTなど生成AIのみの学校教育における一時的な How to の議論だけではなく、これから到来確実な、AIと人との共生時代に向けて、AIと学校教育はどうなるかを考える基礎教養として、深く考える土台として、必要に感じています。
A. 教育へのAIの導入
B. 教育におけるAIの応用
C.AIと教育の相互作用
D.教育へのAIの導入と影響
E.教育でのAI利活用で重要な3視点
A.〜E.をまとめると、こんな図になるのでしょうか。
どうも、G7教育相会議などのマスコミ報道を見ておりますと、日本は未だ「生成AI」に対する警戒心が強く、中教審での安宅さんの講演資料(議事録も出ましたね)にもあった「健全な懐疑心」というよりかは、『猜疑心』となって、規制・抑制の方向に、政治家の皆さんは動いてはいないか、と気になって仕方ありません。
ちなみに、「健全な懐疑心」は、公認会計士の業界では、
『職業的懐疑心』として使われています。
これを、学校教育に当てはめると、
とでもなるのでしょうか。
基本は『性善説』であることが多い学校教育現場において、どこまで懐疑心を持てるか、逆に懐疑心が行きすぎて猜疑心となり、より行き過ぎた結果、こどもや若者を傷つけないか?という、アンビバレントなバランスを常に取り続けないとならない点には、十分に留意せねばならない話だといえます。
今回のUNESCO「AIと教育」の内容のご紹介はここまで。
+α. 生成AIと文部科学省・中教審動向
2023.05.16. 16:00〜 中教審の初等中等分科会の特別委員会として設置された、『デジタル学習基盤特別委員会』が開催されました。
この特別委員会の主たる検討事項は、
であり、4年前から文科省が開始した(学校現場での利用・普及は実質3年前から)『GIGAスクール構想』が、コロナ禍対応も終わり、そろそろ端末の更新時期を迎え、「財源、どないすんねん?」の声が、学校設置者である地方自治体から出始め(たいていは、しっかりとGIGAスクール構想をこなしている先端的な自治体群から)て、
「(財源措置検討が始まる)第二期が始まる前に、ちと今回のGIGAスクール構想、一回、課題点とか総括してみよか?」
が主眼の特別委員会です。
冒頭、こんな言葉も文科省説明や委員から出てきました。
個人的には、もはや懐かしい。。「Digitalization」
全国紙とかTVニュースとか、検索エンジンのまとめニュースとか、既にいろいろと記事となっていますが、「生成AI」についての議論は、あくまでも、
「夏休みに入る前に、暫定的なガイドラインを出さないとね」
(自民党PTとか、内閣府のAI戦略会議とか、G7教育相会議とかを踏まえて)
ということで、あくまでもオマケです。
永岡文科大臣のコメント('03''30〜)にも、生成AIの学校での利用の話が出てきます。
さて、
本日の会議は初回顔合わせの意味合いが強く、各委員が簡単な自己紹介と、お考えを述べ、各種の報道にあるような「生成AI」に関する議論までは、全くもって至っておりませんことは、Webで傍聴していた私としては、しっかりとお伝えせねばと思います。
(一番、正しく伝えている近似値は、「教育新聞」さんかなと)
「(生成)AIガイドラインver.1.0」
特筆すべきは、文科省が『AIガイドライン(仮)ver.1.0』の議論の敲き題にあげたこの資料ですね。
いわば「生成AI」に特化した「利活用の仕方」夏休み前までに出すスピード勝負が最大の目標であり、まずはver.1.0のα版として世に問おうか、そのために、エッセンスの詰まった状態でコンパクトにまとめました!
という、とても Good Job! なものです。
(文科省・中教審には Critical で辛口な私でも、ちゃんと良いものは良いと褒めますよ)
もしかして画期的な動きなのでは?
特に、
4. ver1.0は ※暫定的なものとして公表し、機動的に加除修正
の文言には痺れましたね。
文科省・中教審といえば、学習指導要領は10年かけて、ICT/Digitalとデータ利活用は3年かけてもまとまらず、生徒指導提要に至っては…という、時間が流れるスピードが、あまりにもゆっくりすぎて、社会変化に追いつかないことしばし、だったところが、暫定的とか機動的とか、もうね、画期的なんですよ。
今後、生成AIも含まれる「弱いAI」から、AGIという「強いAI」の出現が間近かもしれないという、本稿の(2)〜(4)で示したような話も踏まえての、これまでの文科省・中教審資料にはなかった、大転換な資料です。
(ただ、深読みすると、単にテクノロジーのスピードに合わせた、ということでもなく、AIに関する政策動向がまだ定まっておらず、柔軟に対応するという意味も十二分に含まれます)
(もっと深読みすると、この夏休みに、学校教員が、子どもたちが、「どのように『生成AI』を使うか、使うこと前提で、最低限のリスクマネジメントとしての「AIガイドライン」を、この特別委員会の審議も参考にして作成し、公表しますよ、ということでしょうかね?)
民間はガイドラインを待っているか?
英語とか、情報(プログラミング)とか、生成AIが得意で、正確性のある分野では、民間企業がサービスとして続々と生成AIを組み込み、有償サービスとして出始めています。
が、民間企業の初中等教育向け総合的なB2Cの通信教育(eLearning含む)の大手では(BとかRとかSとかZとか)、未だ「生成AI」を利活用したサービスがリリースがされていません。
この夏休み前に公表される「AIガイドライン」を待っているのか?と言われると、おそらく答えはNo.だと思います。
(理由は推測できますが、申し上げません。各自、お考えください。
私の推測のヒントは、「生成AI」の仕組み、特にPre-Training という点)
さて、今後、いかがなるのか。動向に注目です。
【追記】
さて、左側のこの女性。
誰だかご存知ですか?
UNESCOのステファニア・ジャンニーニ 事務局長補です。
この方、今、ご紹介しているUNESCO資料の冒頭で出ていらっしゃる、偉い方です。
文科省のnoteを見ると、
とありまして、「等」の中に「AIと教育」の話題が入っていた、と思いたいところです。
おそらく、現時点では、世界史上最強の「AIと教育」の知見を持たれている国際機関のDirectorクラスの方のお一人なので、文科相にとっても、素晴らしいレクになったのではないかと思います、もしも、話題が出たら、ですけどね。
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