自分に関連した分野の論文を追い掛ける方法

前提: 生命科学分野(とそれに関連するデータサイエンスまわりにも一部共通)。個人的な見解。

1. Push型
興味のある論文が自動的に集まる環境を作る

1.1. Google Scholar Alerts を使う
http://scholar.google.com/scholar_alerts?view_op=list_alerts&hl=en
シーケンス法や追い掛けたい著者の名前などのキーワードを登録しておく。関連特許や会議録、博士論文、プレプリントサーバもひっかかるので便利。類似サービスに Google Alerts があるが学術的でないものもヒットしてノイズ多い。PubMed のアラートは PubMedに登録されたものだけしかヒットしないのでお勧めしない。

1.2. 論文誌eToC
論文誌の目次メールはあまり使わない。読むの大変なわりに関係ない論文がたくさん載っている。自分がいつか投稿したい雑誌だけにするのがポイント。

1.3. SNSを利用する
「情報は出す人のところに集まる」ので、まずは自分が興味を持った論文についてつぶやくようにする。Chrome なら Taberareloo などを利用してウェブで見付けた論文をはてブのようなソーシャルブックマークと、TwitterのようなSNSに同時投稿する。Twitter クライアントを開く必要がないので、気が散ることもない。ただし、自分の研究の方向性がバレないような配慮も必要。ある程度情報を出していると、こんな論文あったよ、という具合に教えてもらえる。昔ならブログを書く、という選択肢があったが、SNSの気軽さと割ける時間のバランスを考えるとメリットは少ない。

次に、近しい分野の人をフォローして、その人達がつぶやく論文情報を参考にする。これらの情報は一種のキュレーションされた良質な情報だ。そして積極的にふぁぼったりいいね!する。それによってますますつぶやいてもらえるようになる。こういう論文ない? と聞ける人が増える。ソーシャルブックマークにあるユーザーをお気に入りリストにまとめる機能もお勧め。SNSよりもノイズが少なくてよい。

ラボではクローズドなGoogle+のコミュニティを作成して、みつけた論文を気軽に紹介し合っている。メールやメーリングリストで送ると、リアクションが必要な気になってしまうが、G+だとわりと気軽にできるのがポイント。


1.4. RSSリーダを利用する
RSSリーダーを読むことを習慣化するのは難しいためお勧めしない。移動時間などスマホをどうしてもいじってしまう時間に読むと決めるのがよい。次世代シーケンスやバイオインフォ業界は海外に良いブログがたくさんある。これらのみをRSSリーダーに入れて読む。趣味やニュースサイト、論文誌のeToCは入れない。論文の場合は、出先では読めない場合もあるので、その場合は、Evernote などにURLを送っておく。iPhoneなら「メールで送信」を利用して Evernoteにメール経由で投稿する。PubMed 検索のRSSはお勧めしない。early access な論文などPubMedに登録されるまでの時差がありすぎるし、ちょっとRSSリーダーを開くのが遅れたりすると、シーケンス業界のように進歩が速い分野は死活問題になる。


2. Pull型
関連論文をねこそぎ集める。


2.1. 興味のある分野の論文をひとつ探し、引用している論文
Google Scholar がよい。プレプリントサーバなど、PubMed ではヒットしないコンテンツもあるため。出版時期を容易に絞り込むことができるのもよい。引用元をクリックして、その論文に関連するものを辿る。辿った先でまた引用元をクリック。論文の引用文献をみる方法だと過去に遡ることになるが、この方法は、興味のある論文を引用している論文を探せることがポイント。

2.2. last, first authorのウェブサイトを見つける
引用元を遡っていると、よく見る名前がでてきて、ストーキングしたい研究者が出てくる。first と last author を見るのが大事。それらの人のウェブサイトを探す。ウェブサイトを見ると、もともとどういう考えをする人間なのかだいぶわかる。research interest や publication list, cv をみる。元ボスやそこから独立したPIなどの関連を知る。師弟関係だけでなくライバル関係も整理しておくと業界の勢力がよく把握できるはず。所属組織のウェブサイトだけでなく researchgate, linked-in, SNS, 学会発表の要旨などもみつけるとよい。グラントデータベースもかなり参考になる。バイオインフォなら sourceforge や github もみること。

2.3. みつけた論文のイントロで引用されている論文を集める
イントロには必要な論文がたくさんひかれている。しかし恣意的に選ばれている場合も結構あるので複数の論文をみるのが大事。

2.4. 総説の引用文献をみる
良い総説の引用文献を辿る。良い文脈の上に論文が整理されているが、恣意的でもある。いくつかのレビューを見ること。Nature姉妹紙のレビュー紙はお勧め。Nature なんとか Reviews ってやつ。

2.5. 推薦を使う
最近の論文紙のウェブサイトは、関連論文をリコメンドしてくれるサービスが結構ついている。論文ページのサイドバーやフッダー部分をみる。これを数クリックしていればだいたい集まる。

3. Stack
集めた論文はどうするか? 目的は読むことと、自分が論文を書くときに引用すること。上記のように、いろいろなところで論文を収集しているが、だいたいはメールかEvernote、ソーシャルブックマークにスタックされている。これはあくまでも一時保存している場所という認識をすること。最終的に読んだり引用する論文「だけ」を Papers などの文献管理ソフトで綺麗に整理する。ブックマークレットを使って楽々登録できる。

一時保存した文献も含めて整理しようとすると続かないし破綻する。Evernoteに転送した論文もチェックしたら管理せずに放置する。たまに前にみた論文を探したくなることがあるかもしれない。そんな時は、Evernote, Gmail (Google scholar alertsのメール), ソーシャルブックマークの全文検索あたりをすればだいたい見かるので管理する必要はまったくない。最後はGoogle で世界のだいたいは検索できる。Chrome の Evernote 機能拡張を入れておけば、Evernoteも同時に検索してくれるのでさらによい。それでもだめなら Chrome の履歴全文検索する。

読むべき論文は印刷するか、たまに落ちるiPad mini retina + Papersで読めばよい、おしゃれなカフェあたりで。

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