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4. 科学的根拠からみた小児のかぜとトラネキサム酸・気管支拡張薬・ヴェポラッブ®︎

小児はよく風邪をひくため、小児科外来に受診されたことのある保護者の方々も多いでしょう。
これまで、咳止め、去痰薬、鼻水止め(抗ヒスタミン薬)について解説してきましたが、どれも有効性はイマイチでした。

これ以外の薬でよく処方を希望されるのは、
・喉の痛み止め
・胸に貼るテープ
あたりでしょう。今回はこの2種類の薬のエビデンスを解説していこうと思います。

「子供が喉や口の中を痛がっているので、口や喉の痛みに効く薬をください」と頼まれることもあります。
ひょっとしたら、トラネキサム酸(トランサミン®︎)を処方された経験のあるご家族もいると思います。
しかし、トラネキサム酸(トランサミン®︎)が本当に有効な薬なのか、小児の風邪において科学的根拠があるのか、ご存知な方は少ないでしょう。

さらに胸に貼るテープの処方を希望される保護者の方々は多いです。
気管支拡張薬の一種で、ホクナリンテープ®︎やツロブテロールテープ®︎が代表的です。ご存知の方も多いのではないでしょうか?
「咳止めテープ」と保護者の方々からリクエストがあるのですが、実はこれらのテープには咳止めの効果はありません。

「咳止めの効果がある」と思い込んでいる保護者の方々が、外来でたまたま遭遇した小児科医から「咳止めの効果がありませんよ」と説明されても、なかなか納得できない方も多いと思います。
そこで、論より証拠をと思います。今回は実際に行われた研究の科学的根拠を明記して、本当に咳止めの効果がない点を解説しています。
また、この薬には振戦(手足の震え)や動悸などの副作用もあるため、使用は慎重になった方が良いと考えられています。

最後におまけで「ヴェポラッブ®︎」の有効性について解説して見ました。
昔ながらの治療法ですが、いまだに外来で「ヴェポラッブ®︎は効きますか?」と質問されることがあります。
実は小児では長らく研究はされていなかったのですが、2010年に行われた臨床研究を発見しましたので、そちらの解説をしつつ、有効性に関する質問にお答えしようと思います。

こちらの記事は以下の内容です:

1. トラネキサム酸について
1-1. トラネキサム酸の概要
1-2. トラネキサム酸を含む処方薬
1-3. トラネキサム酸を含む市販薬
1-4. 小児のかぜへの有効性の研究について
1-5. 喉のかぜや口内炎への有効性について

2. 気管支拡張薬(β刺激薬)について
2-1. 気管支拡張薬(β刺激薬)の概要
2-2. 気管支拡張薬(β刺激薬)を含む処方薬・市販薬
2-3. 小児のかぜによる咳と気管支拡張薬

3. おまけ:ヴェポラッブ®︎について
3-1. ヴェポラッブ®︎はかぜに効く?
3-2. ヴェポラッブ®︎を塗ると体温が上がる?
3-3. メントール(menthol)のおかげ?

4. まとめ/あとがき
4-1. まとめ
4-2. あとがき

内容としては医学論文10本分の解説と、それぞれの薬に関する基礎知識が詰まっています。
お値段は100円です。安い缶コーヒー1本分くらいの価値はあると思いますので、気になった方は是非とも読んでみてください。

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