スローワード

「別に好きなわけじゃないよ」

「どういうこと?」

「めんどくさ、そういうのやめない?」

言い捨て、彼女がカラオケの端末をテーブル置くと同時に流れ始めた音楽とビデオ。小刻みなハイハットと、川沿いを歩く男女。私の知らない、彼女の好きなバンド。なのに、さっきの会話を忘れらなかったのか、歌いだしがワンテンポ遅れたのが分ってしまって、私はぎこちなく頭を揺らしながらモニターから目を逸らしていた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?