リビング シティ

流すように 知らないシミ

数える時 わずかな安心

身を起こし 動き確かめる四肢

空き缶の様に 使い切る命

最後まで飲み干し

自分の手で ゴミ場に行けるように

スマホとタバコ カメラと金

冷たさだけをバックに

飛び出した街


夕暮れの5時

かすかな四季 彩るための

働き灯すネオンの明かり

ホスト通いのビッチ

憎まれ口を叩き

強がるふり

今日は下手すぎ

押し黙り 街に消え

掲げたエルメスを握る手

ぬくもりを握るのは

まだ怖い


薄暗がりの6時

通りの向かいのワンボックス

バットを持って降りる子供

酒とスモークで付ける勇気

走る路地 踊るような足に

光るバンズのソール

怯えが消えないが やるしかない


始まった夜7時

見上げたホテルの中

裸のまま見下ろす誰かの女

とめどない乾き 背徳はあくまで耽美

なぁレディ 外を見るのはやめろ

カーテンを閉め

どこまでも隠れるんだ


深みにはまる夜8時

なり出した携帯 しゃべりだした友人

甘い紙 舐めるのをやめられない

現実よりもひどい夢が止まらない

喜劇のはずが今じゃ悲劇

まじめすぎるだけだと

電源と 共感を切り


サイレンがなる9時

悲鳴に聞こえなくなったのは

いつの頃だったか

走りこむ担架

赤灯の下 泣き崩れる女

倒れた彼氏を囲む野次馬

掲げるスマホに写らない

奴らの足元に流れる血に

気が付いたやつはいない


始まった夜10時

飲み屋でつきない会話

他愛もないバカ話

緩みすぎた感受性で

お前が言う

ネイバーワールド

で また会おうと笑顔

夢か それとも、儚さか

測れずに笑い損ねた

俺を許してくれないか



濃すぎる11時

全てを隠し クラブで踊り

テキーラ ショットで煽り

眺めるフロア あわせる調子

喜びと快感 見失う自分

音楽は鼓動を

本物のLOを

ナチュラルなほど

日々が消える自由の地下牢


狂いだした朝3時

まだ消えない月 

ジャンキーのオヤジ

上下そろった 蝶のジャージ

蜜をすすり過ぎ

見えない敵を振り払い

壁にむかって怯えさす指

OLは眉を顰め

俺は笑うことにする

明日には飛んじまう

最後の羽ばたきかもしれない


しらけだした4時 

ドンキの影 決められた家出

話しかけてくる 知らない少女

映し過ぎた現実で うつろになる目

輝く画面は 唯一の灯り

無いよりまし

瞬きもせず 書き込む指先

ボトルに詰め 流す140文字

『hold on me』


照り出した朝日

嫌に青い空を見て

はきそうになるやつが

この街には多い

ここはたぶん

幸せには あまりにも遠い

回りを気にして入るアコムで

欲しがる 一時の安らぎ

そよ風のように

当たりまえなメメントモリ

安すぎて 掻き消える意味

強く握る 溶けそうな糸

誰もが歌う 離すまいと

『リビング ライフ』

『リビング マイ ライフ』

叫けぶ路肩の詩

名もなき墓石

手向ける煙  生きる証


星の見えない道

酔ったあとの帰り

コンビニの店員 疲れた作り笑い

白々しいが 眩しいLED

フェイクに隠された意味

瞼を閉じる間の

一瞬の閃きで

満たされる街

過ぎ去る人に

たまに祈るんだ

明日を生きるための

コピーされた僅かな愛と

涙を拭えるだけの

配られたティッシュが

ポケットの中に

あるように




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