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【医師解説】花粉皮膚炎について

花粉が身体症状を起こすことをはじめて報告したのはBostockで、枯れ草による眼症状や呼吸器症状について枯草熱という名称を提唱しました。
そして1873年にBlackleyが枯草熱の原因は花粉であることを証明し、花粉症という病名が生まれました。
近年花粉症患者の急増に伴い、花粉皮膚炎の報告も増えています。

スギ花粉皮膚炎は臨床的に2つの病型に分類されると考えられています。
最も多い病型は、基礎疾患としてアトピー性皮膚炎があり、スギ花粉がその増悪因子として働くような場合です。
アトピー性皮膚炎の30%程度の患者がスギ花粉により増悪すると考えられていますが、最近の報告では、スギ花粉症を合併したアトピー性皮膚炎の94.9%の患者が顔面などの皮膚症状の悪化を認めています。

もう一方はアトピー性皮膚炎の既往がなく発症する病型です。
アトピー性皮膚炎が合併していないスギ花粉皮膚炎の典型的な特徴は、

① 春先もしくは秋に生じ、他の季節には生じないこと。
② 顔、眼などの露出部位もしくは頸部など摩擦部に生じやすいこと。
③ 蕁麻疹様で浮腫性紅斑の発疹であること。

などです。この蕁麻疹様の紅斑は赤みが強く境界が鮮明であることが特徴です。
スギ花粉がアトピー性皮膚炎の増悪因子として働いたときには、蕁麻疹様の紅斑のみではなく全身の多彩な紅斑、丘疹が出現しアトピー性皮膚炎が増悪することがあります。

治療は通常のアトピー性皮膚炎または接触皮膚炎の治療で大丈夫です。すなわち、症状に応じた外用ステロイド薬と抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬の内服です。また、飛散時期においては予防が重要です。具体的には

① 晴天、強風時は特に花粉が多いので不要、不急の外出を控える。
② 帰宅時は上着を脱いで花粉を払ってから家に入る。
③ 花粉のつきやすい毛の衣服をさけ、なるべくマスク、帽子、メガネを着用する。
④ 露出部にワセリンなど油脂性軟膏を外用し花粉の直接の付着を減らす。
⑤ 帰宅したら洗顔し、症状に合わせた外用薬を塗布する。

などです。また、疲労、睡眠不足などは症状の悪化を招くので生活のリズムを整えることも重要です。


            青山メディカルクリニック

               院長 松澤 宗範


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