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再生不良性貧血とCOVID-19

再生不良性貧血は白血球が少なかったり、免疫抑制療法を受けていたりで、免疫の低い状態となります。

好中球が少ないために、細菌や真菌にかかりやすくなります。

細菌や真菌に比べて頻度は落ちますが、ウイルス感染も起こりやすくなります。免疫抑制療法は細胞性免疫を低下させますので、ウイルスを押さえ込む力が弱くなります。

さて、今世界中で流行している新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、再生不良性貧血の方にとって大きな危険性をはらんでいるのでしょうか。

やはり免疫の低い疾患ですので、感染した時のリスクは高いと推測します。

まだまだ再生不良性貧血においての報告は少なく、まだ十分には分かってないことが多いのですが、少しの報告が出てきたので、それらを見ていきたいと思います。

世界で最初に報告されたCOVID-19に感染した再生不良性貧血の報告は、この論文だそうです。

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59歳の輸血が必要な再生不良性貧血の女性です。

新型コロナウイルスに感染し、熱、咳、頭痛が出て、その10日後にけいれんし、意識が悪くなっています。原因は急性壊死性脳症だったようで、その後亡くなられています。

恐らくこれは特殊な例で、一例だけの報告ですから、再生不良性貧血の人がこうなりやすいのかは分かりません。


2番目の報告は次ものだそうです。

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14歳の重症再生不良性貧血の男の子です。

熱、咽頭痛、鼻血の症状から始まった様です。入院時の白血球は1340/μL、好中球は170/μLです。

発熱性好中球減少症でもあるので、入院で抗生剤治療を受けた様ですが、コロナのPCRで陽性となっています。

幸い酸素化もCTも問題なく、悪化なく経過し、入院15日目に退院となっています。


2つの一例報告を見てきましたが、最近出た論文では5人まとめて報告されています。現段階では再生不良性貧血のCOVID-19に関して一番大きな報告です。

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5人は24歳男性、55歳女性、35歳男性、21歳男性、24歳女性です。若い人が多いです。

重症度はsevereが3人、very severeが2人です。

以下の3つの内、2つ以上満たすときsevereです
・好中球 200-5–/μL
・血小板 2万/μL未満
・網状赤血球 4万/μL未満

好中球が200 /μL未満となるとvery severeです。

この5人は幸いCOVID-19にかかっても、重症になることなく、全員治癒しています。再生不良性貧血はあるものの、若い点が重傷になっていないポイントなのかもしれません。

この報告で気になった点が2つありました。

1つは、定期受診での採血で好中球が減少していたから、新型コロナウイルスの検査を受けたというのです。そしたら、陽性だったということです。

血球の推移がいつもと違うというのも、COVID-19に気づく一つのポイントかもしれません。

2つ目の気になった点は、COVID-19にかかった後に、帯状疱疹になった人が1人、腸炎を起こした人が1人いる点です。

新型コロナウイルスの感染やその治療のステロイドでこのような合併症が起きやすくなるのかもしれません。

まとめ

少人数の症例報告を見てきただけなので、確定的なことは言えませんが、再生不良性貧血だからといってべらぼうに重症化しやすいとか死亡率が高いということはないのかなと思いました。。

ただこれらの結果を受けても、我々医師としては再生不良性貧血の方のCOVID-19は一般の方のCOVID-19より注意して診ていきます。

また感染による血球減少や、感染後の合併症にも気をつける必要がありそうです。

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