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献血の日

本日8月21日は献血の日だそうです。

昔は今のように赤十字の血液センターでのみ献血が行われていたわけではなく、民間の商業血液銀行がありました。そこで血を提供するとお金がもらえるとのことで、頻回に血を売る人がいたりして、提供される血液の質が悪かったりしました。

そこで1964年の8月21日に政府が輸血用の血液は売血ではなく献血で賄うと閣議決定しました。

この閣議決定により、今の献血の体制が整備されていきました。

整備されてきたことで、現在献血・輸血は安心安全なものになっています。

安心と安全のために

献血のために献血センターにきていただいた方には、血をいただく前に問診や検査を行います。

これは安全な血液を患者さんに提供するため、そして提供にきてくださったドナーさんの安全を守るためです。

輸血を受ける人の安全

輸血を受ける患者さん側としては、輸血製剤の質として安心できること、そして必要なときに輸血できることが必要です。

まず質に関してですが、それはドナーさんが献血を受けるときに問診、血液検査でチェックをしています。

例えば感染症についてですが、感染症によっては血液を介して移るものがあります。B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、エイズのウイルス(HIV)、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-1)などです。

これらに感染している人の血液をいただいて、輸血すると輸血を受けた患者さんに感染症が移ってしまいます。

感染している人の血液を使わないように、感染する危険性の高い方に関しては問診のところで献血をお断りしています。例えば以下のような方です。

・これらのウイルスに感染したことがある方

・HIVの検査目的 (ちなみにHIVの結果はお伝えしていません)

・不特定多数の方と性行為を行う方

・半年以内に新しいパートナーとの性行為がある方

・マラリアなどの流行っている地域から帰ってきて、時間の経っていない人

etc...

これらの問診に加えて、血液検査でもこれらの感染がないかチェックしています。

この問診と血液検査のダブルチェックで輸血はかなり安全になってきています。実際に輸血で感染してしまったという方はかなり少なくなっています。

日本で2015年から過去5年の調査では、HBVに感染した人は3人のみだそうです。HCVやHIVの感染に関しては0人です。

血液疾患の患者さんは実感をもって分かってもらえると思いますが、血液内科の病棟だけでも、毎日のように複数の患者さんに輸血を行っています。それが血液内科以外の科を含め、日本中の病院で輸血が行われていますので、5年間の輸血の量は相当なものです。その中でHBV3人というのは感染する確率としては相当低いのです。

血液検査まで行っているのにどうして感染が0にならないかというと、検査は絶対的なものではないのです。特に感染してすぐに献血されてしまうと検査にひっかからないことがあるのです。なので、先程の問診も大事になってくるのです。

献血する人の安全

問診では血を提供してください方の安全面も確認しています。

あまり睡眠が取れていない、ご飯を食べてない。このような状態で献血をしますと、献血中または献血後に体調が崩れやすくなります。このような方は、その日の献血はお断りすることがあります。

持病内服薬も確認します。病気や薬によっては、ドナーさんが安全に献血できない可能性があるため、献血を避けていただきます。

内服している薬を尋ねると、薬の名前を覚えていない方がいらっしゃいます。薬の名前を控えて、献血に来ていただけると幸いです。

貧血の方から血を抜いてしまうと、その方の貧血がさらに悪化してしまうため、血液検査で十分な血の濃さがあるかも確認しています。

十分血液がある方でも、頻回に血を抜くと、貧血になってしまいますので、一年に献血できる回数も上限を設けています。

献血してくださる皆さんのおかげ

このようなシステムの上で安心安全な輸血が行えています。

輸血の安定的な供給は、十分量の献血量の上に成り立っています。これは日頃献血をしてくださっている皆さんのおかげです。ありがとうございます。

現在若い人の献血者数は徐々に減ってきております。献血できる年齢は最高で69歳までです。今後年齢が上の方が、献血をできない歳になってくると、献血の供給量が減ってしまうことが危惧されます。

将来的にはiPS細胞から血球を作り、輸血に使えるようになるのだと期待していますが、現在は人工的作った血球を臨床試験以外で使うことはできません。

十分な血球を人工的に作れるようになるまでは、人から血をもらうことでしか輸血を供給できません。

献血できる方は是非ご協力をよろしくお願いします。


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