見出し画像

ダウン症として産まれ、心臓の手術も無事終えた下の子。

手術直後は眠ったままの状態でした会えなかったが、翌日には目を醒まし、少しずつ回復していったようだ。

そして退院。

産まれてから病院にいてばかりだったが、ようやく我が家に帰ってこれた。

もちろんダウン症は抱えたままだが、もうこれで普通の生活を送ることができる。

病院に会いにいくのと、いつでもすぐに会える環境とでは、当然ながら安心感がまるで違う。

少しずつではあるが、表情も豊かになってきた。

そんなある日、熱が出たと連絡が入った。

少しぐったりしているようだが、それ以外は特段変わったこともなく、仕事中だったこともあり妻に任せた。

病院へも行ったが、簡単な薬をもらって終えたそうだ。

ただ、次の日も、その次の日もまだぐったりしているので、また病院へ行くという。

土曜日だったため、私も病院へと付き添うことにした。

病院へ着いて、いろいろと検査をしてみるも、なかなか原因が分からないという。

娘は依然ぐったりしたまま。

腕に刺された点滴に安心感を覚えるしかなかった。

血液から尿から、何を調べても分からない。

大きな病院だけに、過ぎていく時間の分だけ不安が襲う。

その一方で、根拠もないのに「どうにかなるだろう」と、楽観的に構えている部分もあった。

入院する可能性が高くなってきたこともあり、準備のため一旦妻を家に帰した。

3〜4時間は過ぎただろうか。先生から衝撃的な通知を受ける。

「血糖値が2000を超えています。」

大人であれば通常は100程度。尋常ではないことをこの時点で確信した。

頭が真っ白になる中、着々と手続きが進み、救急車で大学病院へと搬送されることになった。

初めて乗る救急車が、まさか娘の付き添いだなんて夢にも思わなかった。

病院へ着くと、再び待つだけの時間を過ごすことになった。

どうなっているのだろうか。もうすぐだといったのに、まだなのか。

不安と怒りでどうにかなってしまいそうだ。

すっかり日も暮れ、待つ私も疲れ切った頃、ようやく先生から説明を受けることができた。

無菌病棟に入り、対面した我が娘は全身ぐるぐる巻きにされ、点滴やら見たことのない注射やらが繋がれていた。

先生から説明を受けたが、結果は1型糖尿病とのこと。

生後数ヶ月の幼児の発症は極めて珍しく、前例もないためとにかく慎重に処置を進めさせてくださいと告げられた。

急激に血糖値を下げると、低血糖に陥り取り返しのつかないことになってしまうのだそうだ。

ダウン症は先天的なものだから、ショックではあったが何とか受け入れられた。

でも、血糖値の異常は気づこうと思えば気づけたのではないだろうか。

病院の先生でもなかなかその考えに行き着かなかったというが、もっと早く気づけてあげればこんなことにはならなかったのに。

あれから1年経過した今でも時々そう考えてしまう。しょうがなかったなんて、とても言えない。

その後は先生の試行錯誤の甲斐あって、通常レベルの血糖値まで回復することができた。

今でも血糖値は暴れる。これが1型糖尿病の宿命だ。

でも、ダウン症でも、1型糖尿病でも、とにかく元気いっぱいに過ごせている。

こういってはあれだが、親バカとか抜きにしてもなかなかの美人だ。

今一緒にいられるだけで本当に幸せだ。

特に妻には苦労をかけるが、こうして毎日笑顔を見られることほど喜ばしいことは他にはない。

同じようにダウン症や1型糖尿病を抱えた家族のいる人に、この記事を読んで少しでも勇気付けることができれば何よりである。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?