見出し画像

ペットと言って検索して出てくる画像が上のこれ

タクさん:

どうもどうもこんにちは。時差あるんですよね。ぼくは日本、タクさんはアメリカですもんね。こんばんは、かな。おはようかもしれない。

いただいたお手紙はちょっとぼくを持ち上げすぎだなーとおもいました。そういうお気づかいはうれしいですが要りません。もっと自由にしてください。文通ですから。

それはさておき、いいお手紙をありがとうございます。熱気が伝わってきます。

少し気が楽になったのは、学会等を通して、研究室の外にも自分の仕事を知ってくれる人が少しずつ増えてきたこと、そして自分の研究の社会貢献度合いを過大評価することなく正直に見つめ始めたこと、も大きいのかなと思ったりします。

これなんか、最高ですね。完全に同意、同意、同意しすぎてドウイ・ジョージになるレベルです。今のはわからなければ別にいいです。

最初にぼくが書いたお手紙を、タクさんがきちんとアレンジして投げ返してくださったことがありがたいです。

自分が何をやっているかということを人がわかってくれないストレスは無視できないよね、ってことですね。体験談としてもよくわかります。

この往復書簡では、誰かに知ってもらうってどういうことなのかってのを、さらに多層的に掘り下げていきたいなと思っていますが、とりあえずしばらくの間は、お互いの仕事をどのように他人に伝えていくか……特に、タクさんのなさっているお仕事、研究について、いろいろ聞いてみたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。

さっそくですが、前回のお手紙に書かれていた、

私は、現在アメリカでPET (positron emission tomography)という医療画像技術を用いた研究に従事しています。

は、ああ、そういう名前のアレがあるんですね、ってかんじでした。まあぼくも医療者ですから、PETくらいは知ってますよ。知ってますとも。でも、

このPETという技術では、放射性同位体を含むように化学合成した薬物を、ごく少量体内に投与し、その分布の経時的な変化を3D画像として記録することが出来ます。

ここがもう何言ってるか、ぼく、すでに理解できないんです、おもいのほか。知っているつもりだったんですけれど、何もわかってなかったです。

理解できないというか……放射性同位体という言葉は知ってますし、化学合成もわかりますし、少量も体内も分布も経時的も3Dもぜんぶ意味はわかるんですけれども。

単語の意味はわかるんですけれども。

つなげた文章そのものの、字面上の意味もわかるんですけれども。

それが結局、誰に、どういうシチュエーションで、どのように役に立つのかがよくわからんのです。

ぜひ続けてお教えください。誰に、どういうシチュエーションで、どのように役に立つ技術ですか? 

ノーベル賞科学者が一般紙の記者に、「それ、何の役に立つんですか?」って聞かれるアレありますよね。実は、あまり大きな声ではいえませんけれど、けっこういい質問だと思うんですよ。だってやっぱり、普通は、そこ知りたいですもん。基礎科学は役に立つか立たないかのレベルでやる仕事じゃない、って答える学者の気分を、ぼくは本当によくわかります。「一般人の役には立たないけれど学者の脳を喜ばせることができるぜ!」っていう回答には興奮します。その上で質問として「どんな役に立つのか」「どんな未来につながるのか」を知りたいというのはこれ、本能だと思います。

タクさんが扱っているPETというのは、何の役に立つ技術ですか?

PETがあるとないとで、世界は変わりますか?

PETを極めると、どんな未来がみえてきますか?

(2019.7.29 市原 → タクさん)