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【しろくろ】サッカーという残酷なスポーツ

「世界で最もレベルの高いサッカーの試合」がUEFAヨーロッパチャンピオンズ決勝だとすれば、W杯決勝は「世界で最も誇り高いサッカーの試合」だ。

サッカー選手なら誰もが憧れるその場所を目指して、4年に1度死に物狂いで世界中の才能ある努力家たちが臨む。

2番目に誇り高いのはユーロだろう。
サッカーの最先端を長く走り続けているヨーロッパサッカーの頂点を決める戦い。レベルで言うならW杯以上ではないか。

そんなユーロの直近の王者であるイタリア代表が、W杯の予選で敗退した。

90分間北マケドニア代表を圧倒し、シュート数32対4。ゴール期待値は2.43対0.16だった。

多くのチャンスを作り、相手にはチャンスをほとんど作らせなかった。まさに"ほぼ"完璧なゲームだった。

イタリア代表の多くのシュートが入らなかったのは奇跡に近いし、北マケドニア代表の92分のゴールが入ったのも奇跡に近かった。

そのくらいデータ上イタリアは勝利に近かったのだ。

もちろん、北マケドニア代表は弱くない。予選リーグではドイツ代表にアウェイで勝利している実績もある。

それでもやはり北マケドニアの勝利を予想したものは少なかっただろうし、仮に試合後のスタッツだけを見せて勝敗予想をさせても、北マケドニアの勝利を言い当てる人は少ないはずだ。

この90分間には魔物が住んでいた。

イタリアはホームアドバンテージもあり、歓声は彼らの味方だった。負ければ終わりの独特の緊張感を孕んではいたものの、イタリアのコンディションは全体としては普段以上のものだった。

サッカーには往々としてこういう試合がある。

負けるはずがない試合で負け、勝てる試合で勝てない。そして恐ろしいのは、そういう試合は重要な試合ほど起こりやすいということだ。

この試合でイタリアサッカー界を長く引っ張ってきた英雄とも言える選手たち、レオナルド・ボヌッチやジョルジョ・キエッリーニは二度とW杯に出られないかもしれない。

そんな選手に有終の美を飾らせたい、などという美しい話に、サッカーというスポーツは無情にも水を差す。

サッカーは残酷なスポーツだ。
そうしてまたサッカーを観たくなってしまうのだ。

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