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「課題のネタ帳」を作りましょう

スキルは一気にジャンプアップしません。
亀の歩みで少しずつ、小さなステップを上がっていきます。そして、その階段は非常にゆったりとした“らせん状”になっているため、かなり登ったつもりでも、見たことあるような風景に落胆してしまうこともあります。
でも、登り続けないと実は落ちていきます。

「課題のネタ帳」とは?

そこで、オススメしたいのが「課題のネタ帳」です。
「ネタ帳」からは“よいアイデアを貯めること”を想起しますが、「課題のネタ帳」では、次のようなことをメモします。

  • これ、どんな意味?(用語とか設定値とか)

  •  想定通りにうまく動かない(注意点やコツは?)

  • どこで使うんだろう?(使いどころは?)

  •  こんな機能があったらいいのに… このUI、こうだったらいいのに…

  •  何度もやる作業、毎日繰り返す作業、もっとラクできないかな…


カラーバス効果

問題意識を持っていると、ふとしたきっかけで、そのトピックに関する情報が入りやすくなります。これを「カラーバス効果」や「カクテルパーティー効果」と呼びます。

多くの場合「時間があったら」は、そのまま終わってしまいますが、メモに残しておくことで自然と解決策が目に入ってきます。
つまり「後で調べよう」をメモしておくことで、マジックが起こるんです。

いつやるの?

「時間があったら」は実現されにくいのですが、仕事には次のような時間が生じます。

  • スキマ時間

  • 脳ミソの切り替えタイミング

  • 気分が乗らないときのウォーミングアップ

こんなときこそ課題のネタ帳の出番。ネタ帳を開いて「これを調べてみよう!」と生産的に取り組めます。

質問の機会に備えておく

講師の仕事の際、次のようにお聞きすることがあるのですが、質問される方は非常に少ないんです。

「何か質問ありますか? 今日扱った内容の範囲を超えてもいいのですが… 手を挙げにくい場合には、終了後にお声がけください」

セミナーの懇親会の場などでも「こういうとき、どうしてる?」と話題に出せるとよいですが、これもやはり問題意識が可視化されているからこそ。

漠然とした問題意識の可視化

もうひとつ重要な視点に「この面倒な作業、なんとかならないものか?」という漠然としたものがあります。
具体的な解決方法につながるものが思い浮かばなくても、「たぶん、もっといいやり方があるハズ」という問題意識を持つことで、解決方法に行き当たる可能性が高くなります。

「検索してもヒットしない」は、適切なクエリー(検索語)を与えていないことが多いわけですが、問題意識を可視化することで「検索に必要な用語やキーワード」が目に入ってきます(ここでいう検索は、ウェブ検索のほか、オンラインヘルプなども含みます)。

最後の5%

セミナーのアンケートに「ほとんど知ってた…」と不満を書かれる方がいます。これを見ると「もったいないなー」と私は感じます。

ある意味、「ほとんど知らない」状態では覚えることが多すぎて持ち帰れるもの(=吸収できること)は逆に多くありません。わかったつもりでいても実際は指のスキマからこぼれてしまっています。つまり、ヌケ・モレが多い。

セミナー(や書籍)は、むしろ「ほとんど知ってた」状態でこそ、効果が高いと私は考えます。スキルが「30→70」  になるのと「80→85」になるのとを比べた場合、「30→70」の方が体感として多くを学んだような気がしますが、「80→85」にすることの方がしんどいのです。

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自分だけの世界(または会社やコミュニティ)の中にばかりいると、やり方、進め方が固定化してしまいがちです。DMD(違いを生み出す違い)の重要な「最後の数%」が埋まりにくくなります。

言い換えるなら、余裕ある状態だからこそ、次に挙げるような最後の数%を“追い込む”ことができるのです。

  • 「この理解(やり方)でよい」という答え合わせができる

  • 「ちょっとした(操作の)差異」などに気付くことができる

特にセミナーでは、ほかの人の操作を見ることができるので「え!ちょっと、今の何!?」といった思いがけない発見もあります。そんな気づきに「お宝」のヒントが潜んでいます。

ほんの数秒の積み重ねが、1日、1週間、1案件で見ると大きな差につながります。さらに、作業時間だけでなく、目や指、腰など、カラダへの負担にも直結(ガタが来てはじめて直面する「健康問題」)。

そして、最近、話題になったコレ(=「斜に構える/構えない」)。
「そんなの、知ってた」って姿勢で参加するのって、人生の時間のムダでしかでしかない。

やっぱりアウトプットに尽きる

2005年に「DTP Transit」というブログをはじめて17年を超えました。30記事くらい書いたらネタが尽きると思いきや、書き始めると、どんどん出てくるようになり、自分で驚きました。

言語化したり、表や図解にすることで、自分自身の理解が深まります。
わかっているつもりでも、いざ、ことばにしてみると「わからないところが見えて」きます。

試したり調べたりしたらアウトプットしましょう。よく言われることですが、アウトプットした人が一番トクをするようにできています。

今ならnote。
noteやブログが“しんどい/面倒い”場合にはTwitterでもよいでしょう。自分だけのメモでもOKですが、できれば、他人の目に見えるカタチに可視化するのがオススメ。

「そんなこと、みんな知っている」「おそらく既出」などは、ガン無視しましょう。完璧であると確信していても実は間違っていたり、ベターな切り口があったり、“もまれて”はじめて完成に近づきます。

「こういう方法もあるよ」や「じゃ、これは?」など、SNSで気軽にコメントをいただける時代です。人格否定ととらえずに「スルー力(りょく)」を持ちつつ、ツッコミ歓迎の姿勢もまた大切です。

さらにいえば「こんなことで困っている」と、課題そのものをアウトプットしてしまうのアリ。世の中は手を貸したい人であふれています。

まとめ

今日から「課題のネタ帳」を作りましょう。
不思議なことに、書き留めるだけで自然に解決方法が目に飛び込んできます。

  • これ、どんな意味?(用語とか設定値とか)

  • 想定通りにうまく動かない(注意点やコツは?)

  • どこで使うんだろう?(使いどころは?)

  • こんな機能があったらいいのに… このUI、こうだったらいいのに…

  • 何度もやる作業、毎日繰り返す作業、もっとラクできないかな…

ハヤサはチカラ。

「あれ、どうやるんだっけ?」と調べているうちにインスピレーションが逃げないように、そして、手数を少なくするほどにオペミスも減ります。

いかにマウスクリックの数を少なくできるか、キータッチを減らせるかという「エレガントな仕事スタイル」の確立に夢中になっています。

これを書いた人:鷹野 雅弘

株式会社スイッチ
DTPやウェブサイト制作など、25年以上、第一線で手を動かし続け、「制作 → 執筆 → 講演」のサイクルを回す日々。
2015年から大阪芸術大学 客員教授。2017年からAdobe Community Evangelist
ウェブ制作者向けのセミナーイベント「CSS Nite」や、DTP制作者向けの情報サイトDTP Transitを、それぞれ2005年から継続している。
テクニカルライターとして30冊以上の著書を持ち、総販売数は18万部を超える。主な著書に『10倍ラクするIllustrator仕事術(増強改訂版)』(共著、技術評論社)など。Adobe MAX US 2018に出演。


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