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新創刊「週刊カニエ・ウェスト」Vol.1

『カニエ・ウェスト論 《マイ・ビューティフル・ダーク・ツイステッド・ファンタジー》から読み解く奇才の肖像』(カーク・ウォーカー・グレイヴス著、池城美菜子訳・解説)の発売を記念して、カニエ・ウェストの最新情報をお届けする隔週連載「週刊カニエ・ウェスト」をはじめました。
 今年のコーチェラでも披露され話題となった、聖歌隊とバンドによる演奏会「サンデー・サービス(日曜礼拝)」を毎週開催するかたわら、新作『Jesus Is King』を準備中のカニエとその仲間たちの話題を取り上げていきます。好評発売中の『カニエ・ウェスト論』とあわせて、お楽しみください。

・マイケル・ジョーダンを本当に飛び越えた!?——経済紙フォーブスの表紙を飾る

 カニエ・ウェストが経済誌フォーブスの表紙に登場。特集記事では、カニエのスニーカー・ビジネスに焦点が当てられている。

 以前カニエは〈Facts (Charlie Heat Version)〉という曲で、「イージー(※カニエが手がけるアディダスのスニーカーブランド)はジャンプマン(※マイケル・ジョーダンとナイキのコラボスニーカー「エアジョーダン」の俗称)を飛び越えた」と豪語していたが、今回の特集記事を読むと、この大胆なリリックがラップにありがちな大言壮語ではないことがわかる。
 カニエとアディダスの契約内容にくわしい事情通いわく、ジョーダンがナイキから受け取っているロイヤリティがおよそ5%といわれているのに対し、カニエはそれを大きく上回る売上総額の15%という破格の高額ロイヤリティを得ているという。

『カニエ・ウェスト論』では、あるインタビューでカニエが自身をスティーブ・ジョブスと比べていることに触れられているが(P.62)、フォーブスの記事内でも、同誌の表紙に載るような著名人を引き合いに出して次のように語っている。
「近いうちに“クレイジー”という言葉は安易に使われなくなると思う。あれは人間の状態の一種であって、俺たちはそういうふうに生まれついているし、その時々でなったりならなかったりするんだ。それに、この雑誌の表紙を飾った人にも、“Cワード”で呼ばれた人たちが大勢いるだろ」

・剣、ワインボトル、クマ——ジョージ・コンドが《My Beautiful Dark Twisted Fantasy》アートワークのアウトテイクを公開

《My Beautiful Dark Twisted Fantasy》のアートワークを手がけたアーティストのジョージ・コンドが、同作用に描いたが使用されなかったアウトテイク作品をインスタグラムにて公開した。

 なお、《My Beautiful~》の5枚のアートワーク、および今回発表されたアウトテイクにも描かれている「クマ」については、『カニエ・ウェスト論』収録の「不穏な5枚の絵」の章でくわしく論じられている(P.45)。

・特大サイズの《Yeezus》ジャケも——ヴァージル・アブローの個展が開催中

 カニエの盟友であり、昨年にルイ・ヴィトンのメンズアーティスティックディレクターに就任したことでも注目を集めるヴァージル・アブローによる初の美術館個展「Figures of Speech」展が、今月29日までシカゴ現代美術館にて開催中。
 会場には、ヴァージルがジャケットデザインを手がけたカニエの6thアルバム《Yeezus》も特大サイズで展示されている。

 ニューヨーク・タイムズ紙に本展のレビューを寄稿したライターのジョン・カラマニカは、《Yeezus》リリース時にカニエにインタビューをおこなった人物でもあり、『カニエ・ウェスト論』にも登場する(P.61)。
 カラマニカは「ヴァージル・アブローは美術館に収まるのか?」と題したレビューで本展を「美術館は完成された作品が展示される場所であるという考えは、もはや時代遅れ」と評している。

・“カニエはわたしたちにとって、とても大きな意味をもっているの”——ラナ・デル・レイが新作でカニエに言及

 シンガーソングライターのラナ・デル・レイが新作《Norman Fucking Rockwel》収録の1曲〈The Greatest〉で、「カニエ・ウェストは金髪になって、どこかへ行ってしまった」と歌い、話題を呼んでいる。
 18年にも、トランプ大統領を支持するカニエを非難していたラナ・デル・レイ。
 ニューヨーク・タイムズ紙のインタビューで今回話題になった歌詞について訊かれた彼女は、「あのような歌詞を書くのは、決して気分のいいことじゃない。でもカニエはわたしたちにとって、とても大きな意味をもっているの」と複雑な心境を明かしてる。

・G.O.O.D. Musicの新曲がぞくぞくリリース

 カニエが主催するレーベル「G.O.O.D. Music」所属のプッシャ・Tとビッグ・ショーンが、それぞれ新曲をリリースした。カニエはプッシャ・T「Sociopath」のプロデュースを手がけている。

・地元で開催——サンデー・サービス in シカゴ

 毎週日曜日におこなわれている聖歌隊とバンドによる演奏会「サンデー・サービス(日曜礼拝)」の最新回が、カニエの地元シカゴで開催された。
 今年の1月に始まって以来、カニエの持ち歌をはじめとしたさまざまなアーティストの楽曲や聖歌が披露されてきた同イベント。今回は同郷のチャンス・ザ・ラッパーがゲスト出演し、〈Ultralight Beam〉を披露した。

 ちなみに前回はロサンゼルスのワッツ地区で開かれ、2パックの〈California Love〉などが歌われた。この日の参加者のなかには、俳優ブラッド・ピットの姿もみられた。

・新作のタイトルは《Jesus Is King》

 カニエの次作のタイトル、トラックリスト、発売日と思しきメモの書かれたノートを妻のキム・カーダシアンが公開した。このノートによれば、新作のタイトルは《Jesus Is King》、発売日は9月27日となるようだ。また、予告されながらも発売が延期になっていた待機作《Yandhi》は、ネット上にリークされてしまっている。

(「週刊カニエ・ウェスト」Vol.1 2019年9月12日発行 文:編集部)

Vol.2はこちら

・お知らせ

 渡辺志保さんがナビゲーターを務めるラジオ番組「MUSIC GARAGE:ROOM 101」の9/13(金)放送回に、『カニエ・ウェスト論』訳者・池城美菜子さんがゲスト出演されます。トークテーマはもちろんカニエ・ウェストです。ぜひお聴きください。

放送局:bayfm(インターネットラジオ「radiko」でも同時配信)
放送日時:9/13(金)27時~
http://bayfm78.net/201904NEW/101.htm

追記:放送後1週間限定でタイムフリー聴取できます。下記リンク先よりぜひお聴きください。
http://radiko.jp/#!/ts/BAYFM78/20190914035504

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《書誌情報》
『カニエ・ウェスト論 《マイ・ビューティフル・ダーク・ツイステッド・ファンタジー》から読み解く奇才の肖像』
カーク・ウォーカー・グレイヴス 著 池城美菜子 訳・解説
四六・並製・256頁
ISBN: 9784866470900
本体1,800円+税
https://diskunion.net/dubooks/ct/detail/1007889220

〈内容紹介〉
天才芸術家にして、当代一の憎まれ屋——その素顔とは?
21世紀屈指の名盤《My Beautiful Dark Twisted Fantasy》を大分析。
現代ポピュラーカルチャー界に君臨する神(イーザス)の実像に迫るファン待望の決定版!

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目次
第1部 ポップ界のキリスト イーザス7つの美徳
第2部 早熟の巨匠あるいはモンスターの肖像
第3部 現代一のナルシシスト
第4部 不穏な5枚の絵
第5部 贖罪のアート
第6部 大学(ユニバーシティ)という宇宙(ユニバース)——《The College Dropout》
第7部《808s & Heartbreak》についての短い考察

My Beautiful Dark Twisted Fantasy
Dark Fantasy——高みを目指す男の暗いファンタジー
Gorgeous——自信こそセクシーの源
POWER——デジタル時代のオジマンディアス
All of the Lights——前科者もマイケルも光からは逃げられない
Monster——4つ首のラップ・モンスター
So Appalled——トップ40ヒップホップを揶揄したポッセカット
Devil in a New Dress——マジックアワーに包まれた、悪魔との戯れ
Runaway——許しを請う音のバレエ
Hell of a Life——AV女優と結婚してみたら
Blame Game——分裂していく罵り合いゲーム
Lost in the World——作品全体のDNAを内包する祈り
The Yeezus Singularity——「ただ愛されたい」カニエ・ウェスト教のマニフェスト

解説——カニエ・ウォッチャーが見た奇才の素顔
付録——カニエ・ウェスト年表(こちらで一部抜粋をためし読み公開中)



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