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「週刊カニエ・ウェスト」Vol.4

『カニエ・ウェスト論 《マイ・ビューティフル・ダーク・ツイステッド・ファンタジー》から読み解く奇才の肖像』(カーク・ウォーカー・グレイヴス著、池城美菜子訳・解説)の発売を記念した隔週連載「週刊カニエ・ウェスト」の第4号を更新しました。本書とあわせてお楽しみください(前号はこちら)。

・《Jesus Is King》が今週25日にリリース

 カニエ・ウェストの発売無期延期となっていた9枚目のスタジオアルバム《Jesus Is King》が今週25日にリリースされる。21日、カニエは青いレコード盤の写真とともに発売日をツイッターに投稿した

・“時は満ち、神の国は近づいた”——映画『Jesus Is king』のトレイラー公開

《Jesus Is King》の発売日同日に全世界のIMAXシアターで封切りされる同名映画の予告動画が公開された。あわせてメイキング動画も公開されている(映画については前号を参照)。日本での公開は現時点(10/22)で未定。

 ちなみに、予告動画およびメイキング動画で引用されている聖書の一節は次のとおり。

「時は満ち、神の国は近づいた。悔い改めて福音を信じなさいと言われた」
マルコによる福音書 1:15(新共同訳)
「わたしたちは皆、この方の満ちあふれる豊かさの中から、恵みの上に、さらに恵みを受けた」
ヨハネによる福音書 17:16(新共同訳)

・サンデー・サービス in ジャマイカ

 カニエ主催のコンサート・シリーズ「サンデー・サービス」が、18日にジャマイカのキングストンで開かれた。
 開催を記念して発売されたマーチャンダイズにジャマイカの国章や国鳥のハチドリが使用されていたことに対して、同地の評論家などからは非難の声が上がっている。

 またカニエは「Sunday Service」の商標登録を出願していたが、すでに登録済みだったために却下されてしまった

・カニエ、クリスチャンとして生まれ変わる

 牧師のアダム・タイソンがウェブメディア「Pure Flix」のポッドキャストにゲスト出演し、親交を深めているカニエとの交流について語った
 タイソンによると、彼は毎週火曜日の夜にカニエ宅を訪れ、カニエに聖書の教えを説き、質問に答えているという。タイソンはカニエが次のように打ち明けたと話している。「俺には自分の犯した罪が重くのしかかっていた。神に背く罪人だったんだ。それで襟を正さなきゃって思った。だからイエスのもとにやってきた。俺は闇から抜け出て、光をみつけたんだ」

 またタイソンは、カニエが汚い言葉を使う者をたしなめるようになったとも話している。「おい、俺の前で下品な言葉遣いはよしてくれよな。俺はクリスチャンに生まれ変わったんだ」

 さらに別のインタビューでタイソンが語ったところによれば、信仰に目覚めたカニエはラップを“悪魔の音楽”と呼び、やめることを考えているとも話したという。

・読者投票では堂々の二冠達成――《My Beautiful Dark Twisted Fantasy》がピッチフォークの選ぶテン年代ベストアルバムにランクイン

 音楽メディアのピッチフォークが発表した「2010年代のベストアルバム200」にて、『カニエ・ウェスト論』の題材である《My Beautiful Dark Twisted Fantasy》が第2位にランクインした。上位10作品は以下のとおり。

1. Frank Ocean - Blonde (2016)
2. Kanye West - My Beautiful Dark Twisted Fantasy (2010)
3. Beyoncé - Beyoncé (2013)
4. Kendrick Lamar - To Pimp a Butterfly (2015)
5. Fiona Apple - The Idler Wheel Is Wiser Than the Driver of the Screw and Whipping Cords Will Serve You More Than Ropes Will Ever Do (2012)
6. Solange - A Seat at the Table (2016)
7. Vampire Weekend - Modern Vampires of the City (2013)
8. Robyn - Body Talk (2010)
9. D’Angelo & the Vanguard - Black Messiah (2014)
10. Frank Ocean - Channel Orange (2012)

 同時に「ピッチフォーク読者の選ぶ2010年代のベストアルバム/ベストソング」も発表された。のべ1万をこえる投票の結果、アルバム部門では《My Beautiful Dark Twisted Fantasy》が第1位、また楽曲部門では同作収録の〈Runaway〉が第1位を獲得している。それぞれ上位10作品は以下のとおり。

Album
1. Kanye West - My Beautiful Dark Twisted Fantasy (2010)
2. Kendrick Lamar - To Pimp a Butterfly (2015)
3. Frank Ocean - Blonde (2016)
4. Kendrick Lamar - good kid, m.A.A.d city (2012)
5. Frank Ocean - Channel Orange (2012)
6. Kanye West - Yeezus (2013)
7. Vampire Weekend - Modern Vampires of the City (2013)
8. Sufjan Stevens - Carrie & Lowell (2015)
9. Arcade Fire - The Suburbs (2010)
10. Lorde - Melodrama (2017)
Song
1. Kanye West - “Runaway (feat. Pusha-T)”
2. Frank Ocean - “Pyramids”
3. Kendrick Lamar - “Alright”
4. LCD Soundsystem - “Dance Yrself Clean”
5. Robyn - “Dancing on My Own”
6. Grimes - “Oblivion”
7. Tame Impala - “Let It Happen”
8. Kanye West - “Ultralight Beam (feat. Chance the Rapper, The-Dream, Kelly Price & Kirk Franklin"
9. Carly Rae Jepsen - “Run Away With Me”
10. Bon Iver - “Holocene”

(「週刊カニエ・ウェスト」Vol.4 2019年10月22日発行 文:編集部)

お知らせ

 雑誌「ミュージック・マガジン」11月号に『カニエ・ウェスト論』の書評が掲載されました。評者は大和田俊之さんです。誌面にてぜひご一読ください。
「『赦し』や『贖罪』などの信仰をテーマに『MBDTF』の楽曲だけでなくアートワークや映像作品(「ランナウェイ」)を総合的に分析する筆致を最後まで追うと、訳者が解説で述べるように、たしかに『写真の解像度』が上がり、アーティストの意図が『細部までくっきりと』伝わってくる」(書評より一部抜粋)

カニエ・ウェスト論(帯あり)

《書誌情報》
『カニエ・ウェスト論 《マイ・ビューティフル・ダーク・ツイステッド・ファンタジー》から読み解く奇才の肖像』
カーク・ウォーカー・グレイヴス 著 池城美菜子 訳・解説
四六・並製・256頁
ISBN: 9784866470900
本体1,800円+税
https://diskunion.net/dubooks/ct/detail/1007889220

〈内容紹介〉
天才芸術家にして、当代一の憎まれ屋——その素顔とは?
21世紀屈指の名盤《My Beautiful Dark Twisted Fantasy》を大分析。
現代ポピュラーカルチャー界に君臨する神(イーザス)の実像に迫るファン待望の決定版!

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目次
第1部 ポップ界のキリスト イーザス7つの美徳
第2部 早熟の巨匠あるいはモンスターの肖像
第3部 現代一のナルシシスト
第4部 不穏な5枚の絵
第5部 贖罪のアート
第6部 大学(ユニバーシティ)という宇宙(ユニバース)――《The College Dropout》
第7部《808s & Heartbreak》についての短い考察

My Beautiful Dark Twisted Fantasy
Dark Fantasy——高みを目指す男の暗いファンタジー
Gorgeous——自信こそセクシーの源
POWER——デジタル時代のオジマンディアス
All of the Lights——前科者もマイケルも光からは逃げられない
Monster——4つ首のラップ・モンスター
So Appalled——トップ40ヒップホップを揶揄したポッセカット
Devil in a New Dress——マジックアワーに包まれた、悪魔との戯れ
Runaway——許しを請う音のバレエ
Hell of a Life——AV女優と結婚してみたら
Blame Game——分裂していく罵り合いゲーム
Lost in the World——作品全体のDNAを内包する祈り
The Yeezus Singularity——「ただ愛されたい」カニエ・ウェスト教のマニフェスト

解説——カニエ・ウォッチャーが見た奇才の素顔
付録——カニエ・ウェスト年表(こちらで一部抜粋をためし読み公開中)


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