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「週刊カニエ・ウェスト」Vol.3

『カニエ・ウェスト論 《マイ・ビューティフル・ダーク・ツイステッド・ファンタジー》から読み解く奇才の肖像』(カーク・ウォーカー・グレイヴス著、池城美菜子訳・解説)の発売を記念した隔週連載「週刊カニエ・ウェスト」の第3号を更新しました。本書とあわせてお楽しみください(前号はこちら)。


・《Jesus Is King》の発売が無期延期に

 9月27日と告知されていたカニエの新作アルバム《Jesus Is King》の発売が無期延期となった。
 この週末のカニエの動きと、アルバムに関して現時点(10/4)で判明していること、および噂されていることを以下にまとめた。

新トラックリスト

 キム・カーダシアンが新たなトラックリストと思しきメモを公開。

リスニングパーティ

 アルバムの発売にさきがけ、お披露目リスニングパーティがデトロイト(27日)、シカゴ(28日)、ニューヨーク(29日)で開かれた。カニエの公式通販サイト(shop.kanyewest.com)では各リスニングパーティの開催を記念し、Tシャツやスウェットシャツなどのアパレル商品も販売された(現在は販売終了)。

 リスニングパーティに参加したニューヨーク・タイムズ紙の記者、ジョー・コスカレリはレポート記事のなかで、本作ではカニエも客演参加アーティストもカースワード(下品な言葉)をいっさい使っていないと記している。ちなみに、カニエは16年作《The Life of Pablo》のことを「カースワードに満ちたゴスペルアルバム」と表現していた
 またジャーナリストのキアナ・フィッツはヴァイブ誌に寄稿したレポート記事を「生涯をイエスにささげ、彼をたたえることにキャリアを費やしたラッパーは、故ブッシュウィック・ビルやDMX、および上述のノー・マリスにかぎらない。しかし、カニエのようにプラットフォームや、強大な影響力をもっている者はだれひとりとしていない」と総括している。

客演アーティスト
 同じくリスニングパーティ参加者の証言によると、収録予定曲〈Use This Gospel〉には、ドラッグを題材にした“コーク・ラップ”で人気を誇った兄弟デュオ、クリプスのプッシャ・Tとノー・マリス、およびサックス奏者のケニー・Gが参加しているとのことだ。

 ノー・マリス(No Malice)はキャリア半ばでキリスト教徒となり、2012年に活動名義をクリプス時代のマリス(悪意)から変更している。
 ケニー・Gは今年のバレンタインデーにカニエ宅に呼ばれ、妻のキム・カーダシアンのために演奏したことでも話題を呼んだ。

 そのほかにも、ヤング・サグが“悪魔”についてのヴァースを録音したらしいが、アルバム収録の有無は本人もわかっていないという事態になっている。

アートワーク

 リスニングパーティでは、会場のスクリーンにアルバムのアートワークと思われる作品が映し出された。作者はテッサ・マティアなる人物だといわれている。

同名映画

 アルバムと同名のドキュメンタリー映画が全世界のIMAXシアターで上映されることも発表された。
 映画は、現代美術家のジェームズ・タレルがアリゾナ州北部の砂漠にある死火山を題材に手がける大規模プロジェクト「ローデン・クレーター」でおこなわれた、カニエ主催のコンサート「サンデー・サービス」を撮影したもの。公開日は10月25日を予定。なお、カニエは同プロジェクトを支援するため、今年の1月に1,000万ドルを寄付している

・幻のアルバム《Yandhi》が着メロで配信

 昨年より制作中と報じられながらも先日リークされ、事実上のお蔵入りとなったカニエのアルバム《Yandhi》。その一部楽曲が、着メロとしてiTunesストアで不正にリリースされた。音源のアップロード主とされる「ENZO Label」の正体は不明。

・最頻出単語は"God"——カニエ作品のリリックを統計調査してみた

 ウェブメディアのdeadsetが、カニエの9枚のスタジオアルバム(キッド・カディとのコラボ作《Kids See Ghosts》を含む)で使われた宗教関連の単語数を調査した。

 調査結果によると、カニエがこれまでにもっとも多く使った宗教関連の単語は"God"。2番目に多いのが"Jesus"、次いで"Devil"が3番目に続く。
 作品別にみると、これらの単語が最頻出するアルバムは、聖人の名をタイトルに冠した《The Life of Pablo》。その次に多いのが、〈Jesus Walks〉を収録した《The College Dropout》という結果になっている。
 ちなみに『カニエ・ウェスト論』の題材となった《My Beautiful Dark Twisted Fantasy》では、"Devil"と"Satan"がもっとも多く使われている。
 そのほかくわしい分析や各種グラフは、deadsetで読むことができる。

・“カニエには裏表がある”——テイラー・スウィフトがローリング・ストーン誌の表紙に登場

 テイラー・スウィフトが5年ぶりにローリング・ストーン誌の表紙を飾った。
『カニエ・ウェスト論』でも触れられているように、《My Beautiful Dark Twisted Fantasy》制作のきっかけになった、2009年のMTVヴィデオ・ミュージック・アワードにおける受賞スピーチ乱入事件以降、カニエとテイラーのあいだには確執が続いている。
 同誌に今回掲載されたインタビューでは、テイラーがこれまでの経緯をくわしく語っている。

 テイラーによれば、スピーチの妨害に遭ってからの彼女は、カニエから尊敬を勝ち得ようと躍起になっていたという。「わたしのことを軽蔑する人間から、公然とその場にふさわしくないと言われてしまい、とにかく彼[カニエ]に尊敬されたい一心だった。われながらそんな自分が嫌になるけど、あのときは『この人はわたしを敵視している、彼に認められたい』という感じだったの」

 その後ふたりは会食するなど、関係改善が進む。「彼にわたしの音楽をほめられて、すごくうれしかった。子ども時代の仲間はずれのような、19歳のときに負った痛手が癒えていくのを感じた」

 しかし、2015年のMTVヴィデオ・ミュージック・アワードにてふたたび事件が起こる。
 テイラーによると、カニエから事前に連絡があり、彼が受賞することになっていたヴァンガード・アワードのプレゼンターを努めてほしいと依頼されたという。1時間以上におよんだ通話のなかでカニエは、それが彼にとってどれだけの意味をもっているかを説明したとテイラーは話している。
 カニエからの申し入れにテイラーは喜び、スピーチを用意して授賞式当日に臨んだ。ところが、彼女に呼び込まれステージに上がったカニエは、「MTVは視聴率を上げるために、テイラーが俺に賞を渡すことを何度も告知した!」と発言し、またしても彼女に気まずい思いをさせたのだった。そのときのことをテイラーは次のようにふり返っている。「わたしは客席にいて、彼の妻に腕を回していたのだけど、背筋が凍った。彼には裏表があると気づいた。舞台裏ではわたしに優しいのに、人前に出ると格好つけて悪態をつくの」

 両者の関係はこのあとも、テイラーに対する女性蔑視的な歌詞が問題視されたカニエの〈Famous〉をめぐって悪化する。ちなみに、テイラーは今年8月に発売された最新アルバム《Lover》の1曲目を〈I Forgot That You Existed〉(あなたが存在したことすら忘れた)と題している。

(「週刊カニエ・ウェスト」Vol.3 2019年10月4日発行 文:編集部)

・お知らせ

『カニエ・ウェスト論』の書評がMikikiに掲載されました。評者は天野龍太郎さんです。ぜひご一読ください。

カニエ・ウェスト論(帯あり軽)

《書誌情報》
『カニエ・ウェスト論 《マイ・ビューティフル・ダーク・ツイステッド・ファンタジー》から読み解く奇才の肖像』
カーク・ウォーカー・グレイヴス 著 池城美菜子 訳・解説
四六・並製・256頁
ISBN: 9784866470900
本体1,800円+税
https://diskunion.net/dubooks/ct/detail/1007889220

〈内容紹介〉
天才芸術家にして、当代一の憎まれ屋——その素顔とは?
21世紀屈指の名盤《My Beautiful Dark Twisted Fantasy》を大分析。
現代ポピュラーカルチャー界に君臨する神(イーザス)の実像に迫るファン待望の決定版!

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目次
第1部 ポップ界のキリスト イーザス7つの美徳
第2部 早熟の巨匠あるいはモンスターの肖像
第3部 現代一のナルシシスト
第4部 不穏な5枚の絵
第5部 贖罪のアート
第6部 大学(ユニバーシティ)という宇宙(ユニバース)――《The College Dropout》
第7部《808s & Heartbreak》についての短い考察

My Beautiful Dark Twisted Fantasy
Dark Fantasy——高みを目指す男の暗いファンタジー
Gorgeous——自信こそセクシーの源
POWER——デジタル時代のオジマンディアス
All of the Lights——前科者もマイケルも光からは逃げられない
Monster——4つ首のラップ・モンスター
So Appalled——トップ40ヒップホップを揶揄したポッセカット
Devil in a New Dress——マジックアワーに包まれた、悪魔との戯れ
Runaway——許しを請う音のバレエ
Hell of a Life——AV女優と結婚してみたら
Blame Game——分裂していく罵り合いゲーム
Lost in the World——作品全体のDNAを内包する祈り
The Yeezus Singularity——「ただ愛されたい」カニエ・ウェスト教のマニフェスト

解説——カニエ・ウォッチャーが見た奇才の素顔
付録——カニエ・ウェスト年表(こちらで一部抜粋をためし読み公開中)


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週刊カニエ・ウェスト

『カニエ・ウェスト論 《マイ・ビューティフル・ダーク・ツイステッド・ファンタジー》から読み解く奇才の肖像』(カーク・ウォーカー・グレイヴス著、池城美菜子訳・解説)の発売を記念して、カニエ・ウェストの最新情報をお届けする隔週連載をはじめました。ぜひ本書と一緒にお楽しみください。
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コメント1件

カニエ・ウェストは新木場に見に行きました!
ちょうどカレッジ・ドロップ・アウトのころですねー
もちろん今でも好きです。
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