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鍼灸を生業とする術#13 患者様に助けられる、という事


こんどう治療室です。

治療家だから、いつも患者様に治療を施して「助ける」側。ってばかりじゃない。
私はしょっちゅう「助けられている」今日はそんな話を。

治療の枠に限りがあるので、基本昼食の時間をとっていない。患者様が入れ替わるタイミングだったりお着替えされてる時だったり、バナナ1本とか、クッキー1枚とか、うまくいくと卵かけご飯をかきこんだりできる。
治療が押したり、もう一押し症状取りたかったり、急な連絡に対応しなくちゃならなくなったり。何かと食べるタイミングがなくなる日も多い。

「嗚呼〜 さすがにお腹が、ぐ〜っ!て。低血糖かな目が回ってきたわ。」なんて感じ始めてると、
「ほら、これ〜。」とかめちゃくちゃはしょった一言でお菜パンやらお惣菜やらおせいべいやらを差し入れていただくことが多い。
正確には、「燈子先生〜 きっと食べる時間とか無視して、私は仕事出来てれば満腹っすー!とか言ってるのとちがう? 本当はお腹ペコペコなんでしょ? ダイエットになるから?やめなさいよねー、身体が資本なんだから。ちゃんと食べて、ちゃんと治療してくれないと困るのよー。」だと思っています。

「あれ?私テレパシー送ってました?」

ふた口、み口食べるだけで体がぽかぽかして力が湧く!湧く! エナジー!!

患者様じゃなくて、神か? 神だったのか?
え?治療費もらっていいのか?
もう、これは うちで沢山じゃがいも採れたからーってもって来てくれた人には、今朝うちの鶏さんたちが沢山卵うんでくれたからー!って物々交換するレベルのありがたさなんじゃないか。

ひもじい時に食べるパンやオニギリや焼き菓子や果物のあの、糖質が身体中を駆け巡る感動は、、、なんと例えたらよいやら。

「感謝」そう!感謝感激雨霰。
美味しくて、耳下腺、顎下腺、舌下腺の全てがギュー!って痛いほど唾液を出しまくるのだ!
そして、うんまい!と涙が出る。
冗談じゃないの。本当。


          ☆☆☆


そして、昨日最後の治療枠の患者様からいただいたのは ハッカ飴。

私、何かテレパシー送ってました?

ご高齢の患者様が誤嚥性肺炎で急な入院をされ、
今年に入って大分回復されてリハビリの為に転院できていたのだけれど。急逝されたとのことを2週間前に娘さんから聞く。
入院のほんの数日前に出張治療に行き、
「お腹にも鍼打つの〜?嫌だわぁ!痛いもの!」
いやいやそんなに痛くはないし、痛いと感じるのなら生きてる証拠ですよね!
なんて冗談言ったらケタケタ笑っていた彼女が。

ご高齢だったし、特別苦しいような持病もなかったし、肺炎と思われる症状もなかった。
「私は残されるのなんか絶対嫌だからお父さんより先に逝く!って決めているのよ。」
その言葉通りに、旦那様より先に静かに逝ってしまった。
本当に羨ましい死に様。不謹慎かもしれないが、死に様は生き様だと思っている。
彼女らしい。羨ましいくらいだ。
心の表面では納得して受け入れようとしているのだけれど。 寂しい気持ちが先にたって、彼女の声が脳裏に思い浮かぶ度に胸が痛くておかしいくらいポロポロ涙が出る。

私はそんなに冷静沈着な性格じゃない。自覚がある。

まだまだ胸の痛みに耐えながら、兎に角手を動かせ!身体を動かせ!と自分の尻をたたいてきた。
動いているうちはとても頭の中は冷静でいられるから。

そんなこの2週間余りの間に、とるに足らないような小さな事件も沢山あり、取返しが付かないような家族の問題が発覚して家族会議になったりで気持ちがグラグラしながら始まった昨日。

決定打は、昨日最後枠の患者様の治療をさせていただく間に起きた。

兄嫁からのLINE。
「手があいたら 電話ください。お父さん元気ないらしいの。」
昨年3月に骨盤骨折から、検査したら誤嚥性肺炎も発覚し、医療下でないと面倒みられないくらいになっていた。
一度転院、その後は病院の経営する老人施設に入れて手厚い介護を受けていた。

預けて居られれば安心。ということにはならないですよね。そりゃそうだ。

元気ないって。。。どのくらい?

今夜直ぐ施設に向かうか?
明日でも間に合うのか?心中落ち着かなかった。
もはや危篤か?くらい思ってしまっていた私。
でも、手を動かせ!私。落ち着け!私。

嗚呼、明日の朝のヨガクラスをおやすみの連絡して。治療が入っている方々の最近の調子はどうだったかな。おやすみさせていただいても大丈夫かな。

そんな事考えながらも、治療に集中せな!と自らを鼓舞し続けた。

治療が終わった時に患者様がハッカ油を一袋くださった。

          ☆☆☆


その患者様は、このひと月の間に少ししんどい、でも人助けになるならと。イレギュラーなお仕事を地方で泊まりがけでされて来たとのこと。

お話伺うと、なるほど。 人の生き様、死に様に向かい会うお仕事。
それを日に何人分?目にしてしんどい。

しんどい、同じ仕事に向かう人たちに「ハッカ飴」を配ったのだそう。

「気持ちが楽になったー!って皆んなが言ってたんだよ。これが一番いいよ。ね。どうぞ。」

私、もしかしたらしんどい顔していたのかもしれない。 お恥ずかしい。プロなら そんな顔しちゃならないんじゃないか?
でもね、嘘つけないのかもしれない。


          ☆☆☆


治療終えた後、直ぐに兄嫁に電話。

父は少しずつ体力を失いつつあるらしい。
急にどうこう、数値が危ないとかではない。
ただ、ご飯食べてくれなくなってるから孫(娘たち)も一緒に面会してあげてくれないか?と言う話だった。

このオミクロン蔓延の時期、もちろん対面での面会は叶わない。オンラインだと実感が得られないし、大した刺激にもならないかもしれない。
それでも、リアルタイムで繋がったらちょっとでもお父さん元気出るんじゃないかな。
ね、お願いね。
 
もちろん!直ぐに。

現地に走る必要なかった事に少しだけホッとはしたのだけれど。心臓はただならぬ鼓動を示していた。

ドキドキ、、、
ドキドキ、、、
ドキドキ、、、

深呼吸を繰り返しても、治らない。

ハッカ飴! そうだ! ハッカ飴たべてみよ。
舐めてみよ。

救われました。

呼吸は少しずつ緩やかに。心拍数、動悸からの激しさから解放された。

ハッカは元々好きだけれど。
そうかぁ。こんな風になれるから好きだったんだー!

患者様の多くは人生の先輩方。
経験値が違うんです。 治療は施せるかもしれないけれど、人生経験の数。 違う。

助ける、より 助けられている今日この頃なのである。

感謝です。

本当にありがとうございます。
今日も無事お仕事させていただけました。

治療家だ。って言っても無理な顔とか無理なんだな。きっと伝わってる。

昔々、三波春夫さんが「お客さまは神様です!」っておっしゃってましたが本当ですね。

で、ハッカ飴はなかなか効きます。


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