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この世界のいくつもの片隅で、淘汰されつづけるということ

「この世界の片隅に」という映画があります。映画自体ももちろん好きなのだけど、僕はその"題名"がいつまで経っても心に刺さって忘れられない。

社会学者の岸政彦は小学校に入る前、道ばたに落ちている小石を拾い上げては、じっと眺め、観察する癖があったといいます。それを述懐して、彼はこう述べています。

「手のひらに乗せて顔を近づけ、ぐっと意識を集中して見つめていると、しだいにそのとりたてて特徴のない小石の形、色、つや、表面の模様や傷がくっきりと浮かび上がってきて、他のどの小石とも違った、世界にたったひとつの『この小石』になる瞬間が訪れる。」
「私を惹きつけたのは、無数にある小石のひとつでしかないものが、『この小石』になる不思議な瞬間である。(中略)そしてその世界にひとつしかないものが、世界中の路上に無数に転がっているのである。」(岸政彦「断片的なものの社会学」)

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最近、生き方を問い直すことに飽きてきました。

それに気づいたとき、自分でも少し驚きました。ずっと、誰もが生き方を問い直し、自分らしい選択をしていける社会を追ってきたのではなかったか。

でも生き方というものはきっと、手を付けられない、立ちすくむような膨大さを持っていて。一方で路傍の石のような、本当になんてことのないもの。その両者がぎりぎりのところで両立してしまうものなのだろうと思うのです。実は「問い直そう」と口に出すこともはばかられるような、緊張感のあるものなのだろうと思うのです。

表現者・永原真夏がインタビューの中で、こんな表現を使ったことがあります。

「常に淘汰されたいと思っている」

僕自身もきっと、生き方を問い直すよりずっとずっと以前の段階で、「常に淘汰され」るような毎日を送っているように思います。そしてその淘汰され続けるということこそが、もしかしたら僕にとって「生きる」ということなのかもしれないと感じています。

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行き交う人が経てきた、僕の全く知らない人生のことを考える。

それは、誰しもが探せばドラマチックなエピソードがあるだとか、誰もがかけがえのないひとりの人間なのだとか、そんなことを言いたいのでは決してなくて。ただそこに蓄積された膨大な時間と、見てきた世界、うかがい知ることすらできない抱いてきた感情のことに、そしてそれが無数に存在するという事実に、ただ呆然と圧倒される瞬間があるのです。

11/30(土)、石川県加賀市で「生き方見本市HOKURIKU」を開催します。

生き方見本市は、そういう膨大な細部を…それも、僕には全く想像し得なかった細部を無数に積み重ねた先にある、誰かの「生きる」という行為に触れる場所。そして、そんな誰かの「生きる」にそっと淘汰されてみる場だと思うのです。

そうして立ちすくむような「生きる」に触れるとき。自分自身も「世界のいくつもの片隅」のひとつでしかないと気づくとき。逆説的に私は、単なる路傍の石である私のことを、ふと愛せるのかもしれないと思うのです。


【生き方見本市HOKURIKU 開催概要】
イベント詳細はfacebookページ又はpeatixをご覧ください。
https://www.facebook.com/events/2458830391109967/
https://ikikata-hokuriku2nd.peatix.com

■ 日時 2019年11月30日(土)10:30~19:00(開場 10:00〜)
※ 直前は混み合う可能性がありますので、余裕を持ってお越しください。
※ 開催時間内の入退場は自由です。途中参加も歓迎です。

■ 場所 恩栄寺(〒922-0124 石川県加賀市 山中温泉湯の出町タ−12)
https://goo.gl/maps/TgYzznFqxogFQ5AS8
※ JR加賀温泉駅より車で20分/近隣の無料・有料駐車場をご利用ください

■ 参加費  一般:3,000円/早割:2,000円(30名限定)
      山中温泉在住の方:無料/高校生以下 無料
      障害のある方:手帳提示で1,000円割引(同伴者無料)中入退場自由。
※ 途中入退場自由。
※ Peatix、もしくはメールでの事前申込みが必要です。

■ お申し込み
下記のウェブサイトかお問い合わせ先よりお申し込みください。
※ 参加費は当日会場内の受付にて現金にてお支払いください。
https://ikikata-hokuriku2nd.peatix.com

■ お問い合わせ ikikata.hokuriku@gmail.com(担当:河野)
■ 主催 生き方見本市HOKURIKU 実行委員会
  協力 会場:浄土真宗本願寺派 白鳳凰山 恩栄寺(http://onneiji.net/)

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