見出し画像

アメリカでの就活について

こんにちは。またまた久しぶりの更新になってしまいました。

前回の投稿(私の履歴書⑤)にて、アメリカでの職探しに関する体験談を書きました。最終的に内定を得ることはできたものの、「ああ、これを知ってたらもっといい就活ができたのになあ」と思うことがありました。
簡単に結論を言うと、アメリカ企業の人事部の多くは(日本の大企業も程度の差こそあれ同様のはず)採用活動にソフトウェアを利用しており、このソフトウェアの特性を理解して応募書類を提出しないとなかなか書類選考は通りませんよ、ということです。

「それ常識だよ」ということかもしれませんが、私は無知によりかなり厳しい戦いを強いられることとなり、時間も労力も無駄にしました。
この記事の目次をご覧になって「ああそんなこと?もちろん知ってます、対策済みです」と思った方はそっとページを閉じてこの記事は見なかったことにして下さい。暇でしょうがないということであれば最後までお読みいただき、私の認識に間違いがあればコメントで指摘いただいたりなんかすると大変嬉しいです。

なおこの記事の内容を書くにあたって以下のサイトを参考にしました。私は人事や就活のアドバイザーとかプロというわけではないので、これらの記事を読んだ上で「次の転職の時にはこういう点に注意しなきゃいけないんだな」と思ったことをまとめた記事、とお考えいただければと思います。
また以下のサイト以外にもネット上にはいろいろな意見や情報がありますので、How to optimize resume などで検索してみるといいかと思います。

Applicant Tracking System (ATS)

企業活動を支えるためのソフトウェアには様々な種類があります。
例えば文書を作成したりデータを入力・分析したりメールを送ったりといった一連の事務作業をするためのオフィススイートリモート会議システム経費精算システムなどです。
その中に人事管理システムと呼ばれるジャンルがあります。ひとことに人事管理と言ってもその中には勤怠管理や人事評価などいろいろな機能があり、Applicant Tracking System (ATS) もそのうちのひとつです。
ATSは直訳すると「応募者追跡システム」で、求人に応募してきた候補者を管理するために使われます。
小さな会社であれば人事採用担当の人が手作業で候補者を管理することができるかもしれませんが、ある程度の規模になると同時に数十件、数百件の採用募集がかかっており、何千人もの候補者がいる場合こともあります。こうなるとエクセルでちまちま手作業で管理なんていうのは到底無理で、なんらかの自動化が必要になってきます。ソフトウェアを使うと、各求人ごとの応募者を一覧にしたり、応募者ごとの進捗を確認するといった作業がしやすくなります。
有名企業や人気職種だと、ひとつの求人枠に対して数千人の応募がくることだってあります。そのすべてに人事担当者が目を通すなんて大変すぎます。というか、かかる手間と時間を考えると非現実的です。そこでまたまたATSの出番です。ATSには、応募者の履歴書と募集要項を照らし合わせ、理想的な候補者とそうでない候補者をより分ける機能があります。大量の応募者全員の書類を人事部の人が読んで選定しているわけではなく、まずは機械による足切りが行われているのです。
もちろん中には「うちはすべての応募書類を人間が確認しています」という方針の会社もあるでしょうが、規模が大きい世間に名の知れた会社の大多数はATSによる機械的足切りをしていると思っておいたほうがよさそうです。

ATSによる足切りのしくみ

それではATSは具体的にどのような基準で応募者をふるいにかけているのでしょうか。
これも会社やソフトウェアによって多少の違いはありますが、主に募集要項と履歴書のキーワードのマッチ度、必要としているスキルや経験年数を見られているようです。
例えば、製薬企業の営業のポジションがあり、募集要項には以下のようなことが書かれているとします:

主にがん領域の製品を担当いただきます。
担当地域:神奈川県
求める経験・スキル:
・製薬業界での営業、アカウント管理
・Microsoft Office 中級(Word, Excel, PowerPoint)
・Salesforce(案件情報入力、レポート作成)
・売り上げ管理
・代理店との協業、管理
・業務での英語使用経験(本社と英語でのやりとりが発生します)

このような募集要項に対して、こんな職務経歴書の人が応募してきたらどうなるでしょうか。

・職歴:IT企業3社、うち1社は治験業務用ソフトウェアベンダー
・経験職種:開発、テストエンジニア、ソリューションアーキテクト
・スキル:Python, Ruby, C+, GitHub

結果は火を見るより明らかですが、もちろんミスマッチで書類選考は通らないでしょう。
ただ、この人材には一見すると営業や顧客対応の経験がなさそうに見えますが、実はエンジニアとして社内のみで就業していたのは最初の2社、合計3年だけで、3社目の会社ではソリューションアーキテクトとして7年間、顧客にさまざまな提案活動を行っていました。しかもがん領域を主力とするプロジェクトにメインで関わっていたのです。対応する相手は主に医師や治験業務に携わる製薬企業側の臨床開発担当者で、業界の知識は豊富ですし製薬・医療業界の内情にも精通しています。薬剤営業に従事した経験はなくても、十分にポテンシャルがある候補者なのです。
ところが職務経歴書には「営業」や「Microsoft Office」の文字がないために、求める経験やスキルとのマッチ度が低い候補者としてATSに「足切り」されてしまいます。
勘のいい人事担当ならこの職務経歴書を見て「これは面接する価値あるかもしれないな」と気づくかもしれませんが、少なくとも現時点でATSにそこまで気を利かせる能力が備わっているとは思えません。ATSがきちんと拾ってくれるように、応募する案件に応じて職務経歴書をカスタマイズする必要があるのです。

履歴書を書く上で注意するべき点

数多くの応募を扱う企業にとってはATSによるフィルタリングがほぼ常識になっているであろうこと、応募する側もそれを意識しなければならないことは何となくお分かりいただけたかと思います。では履歴書を書く上で具体的にどんなことに気をつければいいのでしょうか。私は人事の担当者などの
「内側の人」ではありませんのであくまでも素人ですが、ネットでリサーチしたことをもとに自分なりの見解をまとめてみたいと思います。

ファイル形式、体裁

え、そこ?と思った方もいらっしゃると思います。私もそうでした。
ATSはキーワードマッチや自動で経歴を抜粋したりするソフトウェアですので、書かれている文字情報を正確に読み取らせることが重要です。
通常オンライン応募で履歴書を提出する際、PDF形式で出されることが多いと思いますが、実はWord (.docx) のほうがATSには適しているようです。もちろんPDFでも可と書かれているケースもあると思いますのでその場合はおそらく問題ないのでしょうが、懸念を取り払うにはWordフォーマットの方が安心なようです。
これ以外にもATSが苦手とする、避けるべき要素がいくつかありますので以下に挙げておきます。極力シンプル、一般的なフォーマットにしておくのが無難と思われます。

  • 写真などの画像、表、グラフ等の文字以外の情報

  • 凝ったデザイン、変わった/珍しいフォントを避ける。一部を強調したい時は太字や下線を使う。

  • ヘッダー、フッターの使用(ここに書かれている情報はATSに無視される可能性あり)

  • テキストボックス

  • 一般的でない見出し(例えば「Education」 と書かずに「History of my Academic Knowledge Cultivation」など回りくどい書き方をすると、ATSには何のことだか分からず情報を読み取れなくなる可能性があります)

  • 逆時系列(直近の職歴から逆の時系列で職歴を書く)以外の形式、例えばスキルの種類や職種別に経歴をまとめたようなものはATSが混乱する可能性があるので、シンプルに逆時系列がおすすめです。

キーワード

求人内容に合わせて、それっぽいキーワードをたくさん散りばめればいいんでしょ、と思われるかもしれませんが、そう簡単な話ではありません。
当たり前ですが、ATSのふるいをくぐり抜けた後には人事担当者や採用担当者、つまり人間の目が待っています。いくらマッチ度の高いキーワードをばら撒いたからといって、それが説得力のある経歴になっていなければそれ以上の進展を期待するのは難しいでしょうし、ATSのマッチを通すために不自然な文脈でキーワードを並べたところで意図を見透かされ心象を悪くするだけです。そもそも就活というのは自分の能力や経験、熱意などを雇用主側に正しく理解してもらい、先方と当方の利害が一致するかどうかを見極める、または落とし所を見つける過程であるはずです。自分が持たない能力や経験を無理やりにでっちあげて仮に内定が決まったとしても、仕事が始まってから双方つらい思いをするでしょう。
ここでいうキーワードのマッチ度というのは、自分の能力・経験をATSが正しく評価してくれるようにする、という趣旨です。言葉遣いやちょっとした不注意で履歴書の内容が正しく読み取られずにマッチ度が不当に低くなってしまうことを避けるようにする必要があります。
まず上記の製薬企業営業ポジションの例で言うと、履歴書の中には「製薬企業」「がん領域」「治験」といった、業界経験を示唆する単語を含めておく必要があるでしょう。それに加え、ソリューションアーキテクトといった分かりづらい役職名だけでなく「ソリューション営業」「提案」といった職種のマッチングを改善する単語も必要と思われます。
またセールスフォースの使用経験がある場合、例えば「SFDC」と履歴書中に書く場合はできるだけ「SFDC (Salesforce.com)」と正式名称も併記するようにします。略語だけだとATSが正しく理解できないケースがあるかもしれないからです。

履歴書の採点

なんとなく注意点は分かったけど、実際に自分の履歴書がどの程度よく書けているのか?というのは自分では分からないものです。そこで客観的な視点で履歴書を採点してくれるサービスをご紹介しておきたいと思います。

TopResume

このサイトは無料で履歴書批評を行ってくれます。自分の履歴書をアップロードすると、だいたい1日後くらいに内容の評価が送られてきます。これはある程度テンプレ化されたものだとは思うのですが、内容自体は実際の人間が見て批評をしてくれているようで、自分の履歴書の具体的な項目についての細かな指摘なんかもあったりします。
私の履歴書があまりにもひどかったせいもあるでしょうが、批評はかなり辛辣でグサリときます。お返事を見るときは精神的な準備があると安心でしょう。
で、いろいろ指摘事項が続いた後に「ではどうすればいい履歴書が書けるでしょうか?我が社の有料サービスでよりよい履歴書作成を!」と続くわけです。私はこの履歴書批評を試した時点で実は既に内定が決まっていたため有料サービスは買わなかったのですが、これから履歴書を作って本格的に就活を始められる方は検討してもいいかもしれません。

Jobscan

前出のTopResumeと違うところは、履歴書の内容そのものを批評するというより、自分が応募しようとしている求人とのマッチ度を調べてくれるサービスです。まず自分の履歴書の内容をテキストで貼り付け、次に求人の内容をこれもテキストで貼り付けます。その2つの内容をもとに、自分の履歴書が求人に対してどの程度マッチしているかを解析してくれる、というものです。
無料メンバーだと月に2回までは無料のスキャンが可能で、有料サービスだと回数無制限でスキャンができるようになります。またスキャン結果も無料サービスだと一部モザイクがかかっており重要な情報が隠されていますが、有料サービスを買うことで結果をすべて閲覧できるようになります。

終わりに

いかがだったでしょうか。日本での就活と大差ないなと思われる方もいるかもしれませんが、多くの人にとっては新しい土地、実績や人脈も限られる中での仕事探しとなると日本で経験したのとはまた違う苦労があるものです。
門を叩き続ければ必ずどこかで開けてくる道があると思いますので、最初の数回がだめでもどうか諦めずに挑戦を続けて下さい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?