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『キミのうた』 リリースによせて

健太です。
6/5に『キミのうた』がリリースとなって、もう10日が経とうとしている。もうみんな手に入れてくれたかな。

ニコルズ流の6編のラブソング集。ラブソングと言うとなんとなく照れくさい気もするし、恋について語るのも変な汗かきそうだけれど、確かな事実として、恋ってのは人生を大きく左右するものだ。僕だってこの人生、恋による影響は計り知れないし、きっと誰もがそうとも言えるんじゃないだろうか。
だからこの『キミのうた』に収められている6曲は、恋のうたであると同時に人生賛歌でもあるのだ。

またこうして作品を作り、CDとしてリリースできたことを心から嬉しく思う。何枚CDをリリースしてきても、毎回嬉しい。
特にこの頃では、CDという媒体自体の売り上げ低迷についての云々は本当に他人事ではなくて、音楽作品の在り方、音楽そのものの在り方っていうものを考えざるを得ない日々なだけに、喜びもひとしおなのである。
そして本当に嬉しいのはその先だ。ファンのみんながCDを手にして喜んでくれていること。やっぱりこれに尽きる。本当に本当に嬉しい。
各CDショップの展開も。限られた店舗スペースの中でニコルズの新作のためにスペースを取って展開してくれていること。お店側としてもとても簡単なことではないはずだ。間違いなく売れる見込みのあるものしか取り扱えなくなっていっている中、本当にありがたく、嬉しく思う。CDショップに足を運ぶ人が減ってしまっているという悲しい現実があるけれど、こういう売り場の展開が誰かの目に止まり、曲を試聴して気に入って購入に至るという、昔からのセオリー通りの美しい流れに繋がることを願っている。
こういうこと、もちろん今までだって当たり前だなんて感じたことはないし、毎回毎回本当に至極ありがたく感じていたけれど、なんだか今回はまたその価値がさらにさらに高く感じられて泣けてくる。 

本当に、みんなみんな、ありがとう。
みんながいてくれて、僕らは僕らでいられます。

さて、この『キミのうた』という作品。
構想をスタートしたとき、色々な可能性(良いものも悪いものも)を含めて走り出した作品だったけれど、当初僕が思い描いていた中での最高よりも、ずっとずっと良いものができたと思う。とても身近で、とても深みがあって、とてもニコルズらしく、それでいてちゃんと今まで作ってきた道の先にある、ニコルズの最新作として全方位に胸を張れる作品に仕上げることができた。ガッツポーズだ。これでこそバンドは先へ進めるのだ。

でもそこに至るまでに、実は大きな苦悩があった。
作品について色々書きたいけれど、この作品の制作に至るまでのあれやこれやを、一度吐き出しておきたくて、書かせてもらう。

『HELLO YELLOW』の次の作品であるということは、高い高いハードルだった。そのリリース当時、ブログでも書いたりあちこちインタビューで答えたりもしたけれど『HELLO YELLOW』でニコルズの音楽は一つの完成形に到達した実感があったからだ。
じゃあここからどこへ行こうか。『HELLO YELLOW』が完成してしまってから(完成は実際は一昨年の暮れだった)ずっと、その先への道を探す日々だったなと思う。
それは実に苦しい日々でもあった。
それまでずっと猪突猛進的に続けてきた音楽の旅とはまた違う旅だった。
次の作品(つまりこの『キミのうた』)の制作に入るまでに何とか道を見出そうと、それまで以上に多角的に音楽に向き合い続けた。ヒントを求めて新しい音楽にも貪欲に触れたし、音楽に対する考え方も日々ぐるぐると変化していった。

結果、とても疲れてしまった。
求めていたヒントなんてどこにも転がっていなかった。心の琴線に触れる音楽に新しく出会うことはなかった。次から次へと聴いても聴いても心が震えない音楽ばかり。これは!と思うどころか、もう一度聴きたいと思える音楽にさえ出会えなかった。自分の感性は死んだのだろうか、自分はミュージシャンとして終わってしまったのだろうか、とさえ思った。

そして、疲れ果てて旅から帰ったわけだ。
収穫もなく。
でも収穫がなかったことが収穫だったのだと思う。
おかげで開き直ることができた。
新しいものに心動かされないなら、ずっと自分が愛し続けてきた、いつ聴いても自分にとって心に響く音楽を、とことん愛すればいい。もっともっと正々堂々とそこに立てばいい。というか、今はもうそれしかできないのだから。
確かに新しい音楽に出会うことも大事だ。だけど、きっと今はその時ではないのだ。その時には出会うべくして出会えるはずだ。ルミニアーズやマムフォードと出会った時のように。 アンテナさえ張っておけばいい。

改めて、自分の中に根づいているものを丁寧に色んな角度から見つめ直してみた。そこからまた作っていこうと決めた。
それはつまり自分の音楽性を自己肯定的に見つめ直すことであり、自分の感性、積み重ねて築き上げてきた自分の音楽性を信じることだった。
ありがたいことに、悩んでいる僕の背中を押してくれる声もあって、大きな勇気をもらった。そして、ある種の開き直りをすることができたのだ。その開き直りは、今までにない力強い前向きな力を生んだ。
まだまだ自分は出し切っていないはずだと思った。行き詰まるなんて百年早い。お前、まだそこまで達してないよ、と。できることはまだまだあるじゃないか、と。やっとそう思えた。
それにこんな悩みなんてミュージシャンたるもの誰もが持ってるものだよな、と。

そんな時期を経て制作したのが『キミのうた』だ。
でも勘違いしないで欲しいのは、この作品、苦しみながら作ったわけではないということ。確かに苦しんだけれど(笑)、苦しみ抜いた後に制作した作品なのである。
結果として無事に(!?)、『HELLO YELLOW』の先に進むことができたと思う。
この『キミのうた』という、D.W.ニコルズの新しい音楽は、今まで築いてきたものの上に積み上げたのではない。一旦壊して、新たに積み直して、出来上がったものなのだ。だから『HELLO YELLOW』のように均整のとれた作品ではないけれど、それがまた別のベクトルで面白く、愛おしいところでもある。
そしてつまり、これは一歩踏み出した作品ということでもある。勇気を持って踏み出した一歩。その一歩にはとても意味があって、それによって扉は開かれたと思う。開いてしまった扉は閉まらない。開けてしまったからには、先へ進むしかないのだ。

多分、多くの人が『キミのうた』を聴いて、ああいつものニコルズだな、と思うだろう。でも実はそんな大きな変化が潜んでいるのだ。
だからと言って、聴く人にそれを感じて欲しいなんて思ってはいない。
ただ、数人の関係者から、その変化について言及した感想をもらったので、もしかしたらファンのみんなの中にも感じた人がいるかもしれないなと思い、あれやこれやと書いてみたわけだ。
僕自身、『キミのうた』が完成してスッキリしたというのもあったから、吐き出したかったってのもあるの思う。

長々と読んでくれてありがとう。

いよいよツアーが始まる。
4本しかないツアー。
最高のツアーになると思う。
みんなに会えるのを楽しみにしています。

#dw25 #dw25_kenta



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