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【ドゥイブス・サーチ代表 高原医師インタビュー後編】すべては、乳がんで亡くなる人を減らすため想いに賛同してくれる仲間と受診者数30万人をめざしたい

当社の代表を務める放射線科医の高原太郎先生が考案したドゥイブス法(DWIBS法)。それを活用した、無痛MRI乳がん検診(愛称:ドゥイブス・サーチ)は、「痛くない・見られない・被ばくゼロ」の新しい乳がん検診として注目を浴び、5年あまりで受診者数は2万5千人に達しています。

臨床医の経験と、画像診断法を研究する科学者としての知見を活かし、「患者さんに届く医療」を目指す高原先生へのインタビュー企画、前編ではドゥイブス法の開発、普及させる上での苦労についてお伺いしましたが、後半では読影医に求めるスキルや今後の展望について伺いました。

前編はこちら


株式会社ドゥイブス・サーチ代表医師:
高原 太郎

1961年東京都生まれ。秋田大学医学部卒業。聖マリアンナ医科大学放射線科勤務、東海大学医学部基盤診療学系画像診断学講師、オランダ・ユトレヒト大学病院放射線科客員准教授などを経て、2010年から東海大学工学部医用生体工学科教授


目次
1. 乳がん発見率1000人中20人という成績が示す「社会的な意義」
2. 志の高い仲間と一緒に、受診者数30万人をめざしたい
3. すべては、乳がんで亡くなる人を減らすために


乳がん発見率1000人中20人という成績が示す「社会的な意義」


──2023年8月現在、無痛MRI乳がん検診を受診できる病院は全国58施設となり、5年あまりで総受診者数は2万5千人に達しました。この度、提携する大きな病院から驚くべき成績の評価が届いたそうですね!

高原:そうなんです。乳がん検診における発見率は、平均的なマンモで1000人中3人、マンモとエコーの併用で1000人中5人というのが常識の世界で、無痛MRI乳がん検診では、1000人中20人という結果が出たんです!※しかしこれは、同じ患者さんで比べたデータではないので、性能として3対20、5対20と示しているわけではありません。
ところが、社会的な実力としては3対20、5対20と言えるんです。なぜなら、「マンモは嫌だから受けない」という人がいるからです。国の対策型検診として、40歳以上の女性には2年に1回乳がん検診を無料で受けることができますが、マンモ検診の受診率は47%と、半数も受診していません。たとえしこりを感じても、「痛いから、怖いから、恥ずかしいから、忙しいから」いう理由で、どうしてもマンモ検診を受けたくない人がたくさんいるんです。

そんな受診のハードルを、無痛MRI乳がん検診では「痛くない、被ばくがない、服を脱がなくていい、15分で調べられる」という強みでクリアし、今まで受診しなかった人の受け皿になれるとことが最大のメリットなんです。

今回明らかになった結果や論文を発表することで信頼を得れば、自治体や企業から補助が出るようになるでしょう。今は2万円前後かかる検査費用が、補助で安くなれば、もっと受ける人は増えるはずです。お金のハードルを低くする取り組みにも尽力していきたいですね。

(※正確には受診者1000人中、24.8人。最近、4病院の乳腺外科医や放射線科医によりまとめられた 1247人での成績。詳しくは講演動画をご覧ください)

志の高い仲間と一緒に、受診者数30万人をめざしたい

──無痛MRI乳がん検診の急速な普及に伴い、今回技師や読影医を募集するとのことですが、どんな方に来ていただきたいですか?

高原:エビデンス(科学的根拠)はとても重要なのですが、これは「過去」を基にできるものです。死亡率が低下することが一番のエビデンスとされていますが、これを基にするとしたら、今生きて、今乳がんになる方は救えません。ですから厚生労働省は「プロセス指標」という、クリアすべき現在の性能基準を示しています。

最近の結果では、このプロセス指標を遥かに上回っています。少しではなくて、遥かに。また画像を見れば、違いは一目瞭然なぐらい違います。医療関係者でなくてもはっきりと感じるぐらい違います。

こういった新しい技術に対して「いいものはいい」と認められる視点、もっと言えば、目の前にあるドゥイブス法の画像を見て、「これは診断度が高い」と直感的に理解できる技師や医師に来ていただきたいですね。

また、画像を見て迅速に所見が検出できるセンスはとても大切ですが、同時に重視しているのは、丁寧に仕事ができることです。当社は、「受診者がもらって嬉しいレポートを届けること」を大事にしているので、「受診者さんに安心を届けよう、受診者さんが抱えている不安に答えよう」という気持ちでレポート作成に向き合ってくれる人に来ていただけたらありがたいです。

──ドゥイブス・サーチに入るとどんなスキルが身につき、どんな経験が積めると思われますか?

高原:当社では、zoomで読影カンファレンスを実施しています。この5年間でどんどん読影の精度が向上していますが、カンファレンスで「こういう所見、画像のサインは、こう診断した方が正しい」と確認する機会になっているからでしょうね。検診は「似たような画像ばかりで退屈そう」というイメージがあるかもしれませんが、カンファレンスに積極的に参加してもらえれば新しい学びやスキルの向上につながるし、退屈どころか、毎日仕事をしていて楽しいと感じると思います。

世界でも今後、造影MRIから非造影MRIへ変わっていくトレンドは間違いありません。ただ、造影剤を使わない画像診断はこれまでなかったので、なぜ読影できるのか、なかなか分からないと思うんです。造影していない画像の微妙な信号の違いを組み合わせを読む「コントラスト診断学」というものがあるんですが、これは将来どんな画像診断にも役に立つものなので、それを一緒に学べることも大きいと思いますね。

──今後、ドゥイブス・サーチとして目指すビジョン、チャレンジしていきたいことを教えてください。

高原:無痛MRI乳がん検診の受診者数は、現在年間1万人ですが、5年後に30万人が受診できるようにしたいと思っています。そこまでくれば乳がん検診受診率が少し上がると考えているからです。今の30倍を目指すとなると、人力だけでは限界があるので、AI診断支援も導入したいと考えています。速度が上がれば、多くの人を診断できるようになります。「画像診断が抜群だ」というだけじゃダメで、ある程度の全体処理能力も大切だということですそのためにも、志の高い読影医に来ていただき、当社の力になっていだきたいですね。

また、本拠地にMRIを導入して、技師と医師が撮像と診断の両方を勉強できるような環境を整えようと計画しています。今の現場は、医師は診断ばかり、技師は撮像ばかりやっていて、お互いの意思疎通がほぼないのが現状です。技師が診断も、医師が撮像もできるようになると、わかりみが深くなるんですよ。

──診断と撮影の両方ができる医師は、今、日本で高原先生だけなんじゃないでしょうか?

高原:いや、日本で数人くらいはいるんじゃないでしょうか(笑)。でも、その人たちが死んだら技術は継承されないでしょう?ドゥイブス法を開発して終わりじゃなく、教育していく体制が必要なんです。だから、技術を一緒に学べる場、お互いに能力を獲得をする場を提供していくことが今後の目標です。

すべては、乳がんで亡くなる人を減らすために

──話は変わりますが、高原先生はこの会社でお給料をもらってないって本当ですか!?

高原:実はそうなんです。ドゥイブス法を検診として活用することに慎重だった理由のひとつに「お金儲けと思われたくない」というのがあったのですが・・・この会社で僕がお給料をもらわなければ、「お金儲けではない」と信用が増すんです(笑)。でも、やはり一番の目的は、無痛MRI乳がん検診の普及させるためです。

例えば、去年初めて学会でランチョンセミナーをやったことで、14の病院から申し込みが来て、「こういうことをやれば病院が申し込んでくれるんだ!」と大きな発見になったんですが、これをやるにも参加者のお弁当代や会場費に、結構なお金がかかります。でも僕が給料もらってない分、その費用がまかなえる。こういうところで役に立てるのが嬉しいんですよね。

病院に対し導入費用を安く設定しているのもそうです。病院からすると、導入しても赤字の事業だったら困るので、利益が出せるという説得力も必要です。「私が給料をもらってない分、導入費を安くしてます。導入費も安いから利益が出ます!」と言えるわけです。

──全ては、多くの人にドゥイブス法を届けるため、乳がんで亡くなる人を減らすために。なかなかできることではないと思います。

高原:今は大学の教授としての収入があるし、過剰にお金があっても使い切らないうちに死んじゃうだけでしょう。僕が死んで、ドゥイブス法も伝わらなかったら、その方が心残りですから。まあ、大学教授をやめたら生活ができなくなりますから、そのときはちゃんとお給料はもらおうと思ってますけどね(笑)。

僕がそういう考え方なので、一緒に働く仲間として「お金が第一」という方は欲しませんが、医師・技師へのフィーは、他の遠隔画像診断会社よりも手厚くしているつもりです。それはレポートに心を込めていただくことへのお礼でもあります。

それに、当社は年間成長率200%という成長段階にあります。初期メンバーとして一緒に頑張っていただける方には、会社の成長に応じ、報酬という形でしっかり還元するつもりですので、そこは期待していただけると思いますよ。

「痛みのない検査で乳がんで亡くなる人を減らしたい」「被ばくのない全身スクリーニング検査で、安心を届けたい」。そんな想いに賛同してくれる仲間と一緒に、これからもっと成長していきたいですね。

最終的には、早期診断→光免疫療法で治療、というスキームを確立したいと願っています。

tarorin.com/08_mri_medicine/dwibs/2018/03/pit_dr_histaka_kobayashi/



<インタビュー・記事=藤島知子>